Japanese News: あの「軽石」は今どこに？沖縄の海は？海底火山の噴火から1年

去年きょねん、沖縄おきなわなどの沿岸えんがんに大量たいりょうに漂着ひょうちゃくした「軽石かるいし」は今いまどうなったのでしょうか。その原因げんいんとなった小笠原おがさわら諸島しょとうの海底かいてい火山かざんの噴火ふんかの発生はっせいから1年ねん。

取材しゅざいを進すすめると、軽石かるいしは以前いぜんはなかったような場所ばしょにも広ひろがっていると見みられることがわかりました。

さらに沖縄おきなわでは、軽石かるいしをめぐる新あらたな課題かだいも。詳くわしくお伝おつたえします。

（社会しゃかい部ぶ・宮原みやはら豪つよし一いち記者きしゃ沖縄おきなわ局きょく・宮原みやはら啓あきら輔記者きしゃ）

軽石かるいしを噴出ふんしゅつした海底かいてい火山かざんの大だい規模きぼ噴火ふんか

噴火ふんかが発生はっせいしたのは去年きょねんの8月つき13日にちから15日にち、今いまからちょうど1年ねん前まえのお盆おぼんの時期じきでした。

小笠原おがさわら諸島しょとうにある海底かいてい火山かざん「福徳ふくとく岡ノおかの場じょう」で、11年ねんぶりに大だい規模きぼな噴火ふんかが発生はっせいし、噴煙ふんえんの高たかさは最大さいだいで海面かいめんから1万まん6000メートルに達たっしました。

この噴火ふんかで大量たいりょうに噴出ふんしゅつされたのが「軽石かるいし」です。

噴火ふんかから2か月かげつ後ごには、沖縄おきなわ県けんや鹿児島かごしま県けんの奄美あまみ地方ちほうに相次あいついで漂着ひょうちゃく。

その後そのご、関東かんとうや伊豆いず諸島しょとうの沿岸えんがんなどに次々つぎつぎと漂着ひょうちゃくしました。

沖縄おきなわの軽石かるいし回収かいしゅう進すすむも「処分しょぶん」が課題かだい

噴火ふんかから1年ねんたち、軽石かるいしはどうなったのか、沖縄おきなわ県けんを取材しゅざいしました。

当時とうじ、県内けんないの87の漁港ぎょこうのうち、ほぼすべてで軽石かるいしの漂着ひょうちゃくが確認かくにんされた沖縄おきなわ県けん。

33の漁港ぎょこうで漁りょうを自粛じしゅくするなどの影響えいきょうが出でたほか、各地かくちのビーチにも漂着ひょうちゃくし、観光かんこうにも大おおきな影響えいきょうが出でました。

今回こんかい、今帰仁なきじん村むらのビーチを訪おとずれてみると、去年きょねんは大量たいりょうの軽石かるいしで覆おおい尽つくされていましたが、軽石かるいしが見みられるのは一部いちぶに。

ふだんどおりマリンレジャーを楽たのしむ人ひとの姿すがたも見みられました。

県けんによりますと、漁港ぎょこうやビーチでは軽石かるいしの回収かいしゅうが進すすみ、以前いぜんの状態じょうたいに戻もどりつつあるということです。

一方いっぽう、課題かだいとなっているのが、回収かいしゅうしたあとの「処分しょぶん」だといいます。

恩納おんな村むらの仮かり置き場おきばにはこれまでに村むら内ないのビーチや漁港ぎょこうで回収かいしゅうした軽石かるいしを入いれた黒くろい袋ふくろが積み上つみあげられていました。

ことし6月つきの時点じてんで、県内けんない各地かくちでおよそ9万まん7000立方メートルりっぽうめ-とるが回収かいしゅうされ、少すくなくとも19市町村しちょうそんの仮かり置き場おきばで一時いちじ的てきに保管ほかんされています。

すでに、いっぱいになっている仮かり置き場おきばもあるということです。

沖縄おきなわ県けんは、回収かいしゅうした軽石かるいしの一部いちぶを石灰岩せっかいがんなどを採掘さいくつした現場げんばの埋うめ直なおしに使つかっているほか、赤土あかつちの海うみへの流出りゅうしゅつ防止ぼうしや、農地のうちの土壌どじょう改良かいりょうなどに活用かつようすることを検討けんとうしています。

「軽石かるいし」は今いまどこに？全国ぜんこくシミュレーション

沖縄おきなわでは影響えいきょうが限定げんてい的てきになっているという軽石かるいし。

日本にっぽんのどこにあるのでしょうか。

海洋かいよう研究けんきゅう開発かいはつ機構きこうの美山みやま透とおる主任しゅにん研究けんきゅう員いんは、海流かいりゅうや風かぜのデータをもとに分布ぶんぷ状況じょうきょうのシミュレーションを行おこないました。

その結果けっかを見みていきます。

具体ぐたい的てきには、引き続ひきつづき軽石かるいしが多おおく分布ぶんぷしているのは、沖縄おきなわ・奄美あまみの周辺しゅうへんです。

さらに推計すいけいでは、南西なんせい諸島しょとうから東北とうほく沖おきにかけての太平洋たいへいようを中心ちゅうしんに広ひろい範囲はんいに分布ぶんぷしていました。

日本にっぽんの南岸なんがんに沿そって東ひがしへ流ながれる「黒潮くろしお」の海流かいりゅうに乗のって広ひろがったと見みられています。

さらに、ことしに入はいってから軽石かるいしは「対馬つしま海流かいりゅう」に乗のって九州きゅうしゅうの西にしの海上かいじょうを北上ほくじょうし、4月つき以降いこうは日本海にほんかい側がわにも漂着ひょうちゃくしている可能かのう性せいがあるという結果けっかも出でました。

軽石かるいしが、各地かくちの水産すいさん業ぎょうに被害ひがいをもたらした去年きょねん秋あきごろには沖縄おきなわ・奄美あまみに加くわえ、伊豆いず諸島しょとうや関東かんとうなどへの漂着ひょうちゃくにとどまっていましたが、1年ねんがたって以前いぜんより分布ぶんぷが広ひろがっているとみられます。

美山みやま主任しゅにん研究けんきゅう員いんによりますと、今回こんかいのシミュレーションの結果けっかをSNSなどの目撃もくげき情報じょうほうと照合しょうごうするとおおむね整合せいごう性せいがとれているということです。

専門せんもん家か「まとまって漂着ひょうちゃくの可能かのう性せい低ひくいが油断ゆだんしないで」

去年きょねんより広ひろく分布ぶんぷしているとみられる軽石かるいしですが、美山みやま主任しゅにん研究けんきゅう員いんは冷静れいせいな対応たいおうを呼よびかけています。

時間じかんがたって軽石かるいしが広ひろく海上かいじょうに分散ぶんさんし、海うみに沈しずんでいくものもあるため、以前いぜんほどまとまって沿岸えんがんに漂着ひょうちゃくする可能かのう性せいは低ひくくなっているためだといいます。

一方いっぽうで、「今後こんごも少量しょうりょうの軽石かるいしの漂着ひょうちゃくが、各地かくちの沿岸えんがんで確認かくにんされても不思議ふしぎではない。心配しんぱいしすぎる必要ひつようはないが、軽石かるいしが漁船ぎょせんなどのエンジンの冷却れいきゃく装置そうちに入り込はいりこんでトラブルを起おこす可能かのう性せいも考かんがえられ、軽石かるいしの情報じょうほうがあった場合ばあいには油断ゆだんせずに注意ちゅういしてほしい」と話はなしています。

軽石かるいしは海うみの生き物いきものにも影響えいきょうか

さらに、大量たいりょうに漂着ひょうちゃくした軽石かるいしは海うみの生き物いきものにも影響えいきょうをもたらしていました。

その研究けんきゅう結果けっかを発表はっぴょうしたのは、海洋かいよう生物せいぶつ学がくが専門せんもんの北里きたざと大学だいがくの大野おおの良和よしかず特とく任にん助じょ教きょうらの研究けんきゅうグループです。

去年きょねん10月つきから12月つきにかけて沖縄おきなわ県けん北部ほくぶの国頭くにがみ村むらで大量たいりょうの軽石かるいしが沿岸えんがんに生息せいそくする自然しぜんの生き物いきものに影響えいきょうを与あたえていないか調査ちょうさを行おこないました。

その結果けっか、調査ちょうさで影響えいきょうが確認かくにんされたのがスナガニの一種いっしゅのシオマネキで、軽石かるいしに覆おおわれた干潟ひがたで一部いちぶが衰弱すいじゃくしていました。

シオマネキは干潟ひがたに巣す穴あなを掘ほって生息せいそくし、砂すなや泥どろの中なかの微び生物せいぶつを食たべていますが、巣す穴あなが軽石かるいしでふさがったため餌えさが不足ふそくしたとみられるということです。

大野おおのさんが撮影さつえいした映像えいぞうには、残のこった一部いちぶの巣す穴あなを巡めぐってシオマネキが争あらそう様子ようすがみられ、大おおきなシオマネキが自分じぶんより小ちいさなシオマネキを巣す穴あなから追い出おいだす様子ようすが記録きろくされていました。

このほか海中かいちゅうでは、沈しずんだ一部いちぶの軽石かるいしがサンゴの表面ひょうめんにぶつかっている様子ようすも確認かくにんされました。

軽石かるいしがサンゴに与あたえる影響えいきょうは詳くわしくわかっていないものの、小ちいさな損傷そんしょうが発生はっせいするとみられるということで、研究けんきゅうグループは引き続ひきつづき、影響えいきょうなどを調しらべることにしています。

大野おおの特とく任にん助じょ教きょうは、「短期たんき的てきではあるが、シオマネキの小ちいさい個体こたいなどに行動こうどうの変化へんかも見みられていたので、沿岸えんがん生物せいぶつに対にたいする軽石かるいしによる負まけの影響えいきょうがあったと考かんがえている。まだ、海中かいちゅうに漂ただよっている軽石かるいしや海底かいていに沈しずんだ軽石かるいしによる生物せいぶつへの影響えいきょうはわからないことが多おおいため、今後こんごも研究けんきゅうが必要ひつようだ」と話はなしていました。

福徳ふくとく岡ノおかの場じょうでは今いまも活発かっぱつな火山かざん活動かつどうが継続けいぞく

大量たいりょうの軽石かるいしを噴出ふんしゅつした「福徳ふくとく岡ノおかの場じょう」は、今いまどうなっているのか。

去年きょねん8月つき以降いこう、噴火ふんかは確認かくにんされず気象庁きしょうちょうは、当時とうじのような規模きぼの噴火ふんかが再ふたたび発生はっせいする可能かのう性せいは、当面とうめんは低ひくいと考かんがえられるとしています。

ただ、海上かいじょう保安庁ほあんちょうが実施じっしした最近さいきんの上空じょうくうからの調査ちょうさでは、火口かこうの真上まうえに薄うすい黄き緑色りょくしょくの変色へんしょく水すいの分布ぶんぷが確認かくにんされるなど、依然いぜんとして活発かっぱつな火山かざん活動かつどうが継続けいぞくしているということです。

気象庁きしょうちょうは、今後こんごも噴火ふんかの可能かのう性せいがあるとして周辺しゅうへん海域かいいきに噴火ふんか警報けいほうを出だして付近ふきんを通とおる船舶せんぱくなどに警戒けいかいを呼よびかけるとともに、引き続ひきつづき噴火ふんかによる軽石かるいしなどの浮遊ふゆう物ぶつにも注意ちゅういするよう呼よびかけています。