イスラエル「超ちょう正統せいとう派は」の徴兵ちょうへい問題もんだい 首相しゅしょうは難むずかしい判断はんだん迫せまられる

これまで事実じじつ上じょう、兵役へいえきが免除めんじょされてきた、ユダヤ教徒きょうとのなかでもユダヤ教きょうの教おしえを厳格げんかくに守まもる「超ちょう正統せいとう派は」と呼よばれる人ひとたちに、イスラエルの最高さいこう裁判所さいばんしょは先月せんげつ、政府せいふに徴兵ちょうへいを命めいじる判決はんけつを言い渡いいわたしました。

判決はんけつを受うけてエルサレムでは先月せんげつ30日にち、超ちょう正統せいとう派はの人ひとたち数すう千せん人にんが大だい規模きぼな抗議こうぎ集会しゅうかいを開ひらいて抗議こうぎの意志いしを改あらためて示しめしました。

ネタニヤフ首相しゅしょうとしては、大だい多数たすうの国民こくみんからの要望ようぼうに応おうじて徴兵ちょうへいを進すすめれば、超ちょう正統せいとう派はからの強つよい反発はんぱつを招まねくことが予想よそうされ、難むずかしい判断はんだんを迫せまられています。

最高裁さいこうさいは政府せいふに徴兵ちょうへいを命めいじる判決はんけつ

イスラエルの最高さいこう裁判所さいばんしょは先月せんげつ25日にち、これまで事実じじつ上じょう、兵役へいえきが免除めんじょされてきた超ちょう正統せいとう派はについて、政府せいふに徴兵ちょうへいを命めいじる判決はんけつを言い渡いいわたしました。

イスラエルメディアによりますと、最高さいこう裁判所さいばんしょは判決はんけつのなかで「厳きびしい戦争せんそうの中なかにあるいま、不ふ平等びょうどうによる負担ふたんはこれまで以上いじょうに喫緊きっきんの課題かだいであり、持続じぞく可能かのうな解決かいけつ策さくを進すすめなければいけない」と指摘してきしたということです。

判決はんけつを受うけてエルサレムでは先月せんげつ30日にち、超ちょう正統せいとう派はの人ひとたち数すう千せん人にんが大だい規模きぼな抗議こうぎ集会しゅうかいを開ひらき、道路どうろを埋うめ尽つくして「徴兵ちょうへいされるならば、死しを選えらぶ」などと声こえをあげて抗議こうぎの意志いしを改あらためて示しめしました。

参加さんか者しゃからは「われわれはユダヤ教きょうの教おしえを学まなぶことでイスラエルを守まもっている。兵士へいしよりもユダヤ人じんを守まもっている」とか、「私わたしたちは多おおくの子こどもを持もつことで、国くにを守まもっている」といった主張しゅちょうも聞きかれました。

こうした事態じたいにネタニヤフ首相しゅしょうも難むずかしい判断はんだんを迫せまられています。

ネタニヤフ首相しゅしょうの連立れんりつ政権せいけんに加くわわる2つの超ちょう正統せいとう派はの政党せいとうは、今回こんかいの判決はんけつに反発はんぱつし、超ちょう正統せいとう派はの徴兵ちょうへいを開始かいししないよう訴うったえています。

一方いっぽうで、軍ぐんを管轄かんかつするガラント国防こくぼう相しょうは今月こんげつ10日にち、議会ぎかいでの答弁とうべんで「ことしの夏なつからの1年間ねんかんで3000人にんの超ちょう正統せいとう派はの徴兵ちょうへいを行おこなう」との方針ほうしんを示しめし、軍ぐんも21日にちから超ちょう正統せいとう派はの徴兵ちょうへいに向むけた招集しょうしゅう令状れいじょうの発行はっこうの手続てつづきを始はじめると発表はっぴょうしています。

ネタニヤフ首相しゅしょうとしては、大だい多数たすうの国民こくみんからの要望ようぼうに応おうじて徴兵ちょうへいを進すすめれば、超ちょう正統せいとう派はからの強つよい反発はんぱつを招まねくことが予想よそうされます。

仮かりに超ちょう正統せいとう派はの政党せいとうが連立れんりつ政権せいけんから離脱りだつすることになれば、ネタニヤフ首相しゅしょうは政権せいけんを維持いじすることができず、今後こんご、この問題もんだいをめぐって窮地きゅうちにたたされる可能かのう性せいもあります。

超ちょう正統せいとう派はの徴兵ちょうへい問題もんだいで社会しゃかいに亀裂きれつ

超ちょう正統せいとう派はの人ひとたちをめぐり特とくに問題もんだい視しされてきたのが、徴兵ちょうへいについての問題もんだいです。

イスラエルでは原則げんそくとして18歳さい以上いじょうのすべての国民こくみんに兵役へいえきの義務ぎむが課かされていて、男性だんせいは32か月かげつ、女性じょせいは24か月かげつにわたって兵役へいえきに就つきます。

ただ、建国けんこく以来いらい、超ちょう正統せいとう派はに対にたいしては宗教しゅうきょう的てきな配慮はいりょなどから、事実じじつ上じょう、兵役へいえきが免除めんじょされてきました。

超ちょう正統せいとう派はの人ひとたちは、ユダヤ教きょうの教おしえを学まなぶ上うえで兵役へいえきが妨さまたげとなり、世俗せぞく主義しゅぎに染そまるとの懸念けねんもあって、兵役へいえきに就つくことに強つよく反対はんたいしています。

ただ、ガザ地区ちくでの軍事ぐんじ作戦さくせんが長期ちょうき化かし、イスラエルの兵士へいし300人にん以上いじょうが死亡しぼう、4000人にん以上いじょうが負傷ふしょうする中なかで、超ちょう正統せいとう派はの人ひとたちが兵役へいえきに就つかないことに国内こくないで不満ふまんが高たかまっています。

こうした状況じょうきょうを受うけて、イスラエルの議会ぎかいでも徴兵ちょうへいの議論ぎろんが徐々じょじょに進すすんでいて、それに反発はんぱつする超ちょう正統せいとう派はの人ひとたちは毎月まいつきのようにエルサレム市内しないで座り込すわりこみによる抗議こうぎデモを繰り返くりかえし、交通こうつう機関きかんをまひさせて、兵役へいえきへの反対はんたいを表明ひょうめいしてきました。

エルサレムで超ちょう正統せいとう派はではない市民しみんに話はなしを聞きくと、徴兵ちょうへいを求もとめる声こえが圧倒的あっとうてきに多おおく、みずからも予備よび役やくだという男性だんせいは「ユダヤ教きょうの教おしえを学まなぶことで国くにを助たすけているというのは言い訳いいわけで、受け入うけいれられません」と話はなしていました。

また、女性じょせいの1人にんは「このような戦時せんじだからこそ、すべての人ひとが軍隊ぐんたいに加くわわるべきだと思おもいます」と話はなしていました。

ユダヤ教きょうの「超ちょう正統せいとう派は」とは

ユダヤ教徒きょうとのなかでもユダヤ教きょうの教おしえを厳格げんかくに守まもる「超ちょう正統せいとう派は」と呼よばれる人ひとたちは人口じんこうおよそ1000万まんのうち13％ほどを占しめ、世俗せぞく的てきな社会しゃかいから距離きょりを置おいて生活せいかつを送おくっています。

男性だんせいは10代だいのころから「イェシバ」と呼よばれる宗教しゅうきょう学校がっこうに通かよい、生涯しょうがいをかけてユダヤ教きょうの教おしえを学まなぶことを重視じゅうししているため、仕事しごとに就つかない人ひとも多おおくいます。

超ちょう正統せいとう派はの人ひとたちは、慎つつしみ深ふかさを表あらわすとされる黒くろいスーツや帽子ぼうしを着用ちゃくようして、もみあげを長ながく伸のばすなどの慣習かんしゅうでも知しられています。

また、ユダヤ教きょうの戒律かいりつやさまざまな規定きていに従にしたがって日々ひびの生活せいかつを送おくり世俗せぞく社会しゃかいから距離きょりを置おいています。

インターネットの使用しようも制限せいげんされているとされ、多おおくの人ひとがスマートフォンではなく、通話つうわのみの機能きのうを備そなえた携帯けいたい電話でんわを利用りようしています。

このため、超ちょう正統せいとう派はの人ひとたちが多おおく暮くらす地域ちいきでは、集会しゅうかいやイベントの情報じょうほうを知しらせる紙かみが建物たてものの壁かべに貼はられている光景こうけいもよく見みられます。

そして安息あんそく日びである金曜日きんようびから土曜どよう日びにかけては、労働ろうどうにあたるとして電気でんきや火ひを使つかった作業さぎょうも原則げんそく、行おこないません。

家庭かていでは子こどもを多おおく持もつことが奨励しょうれいされているため、平均へいきんの出生しゅっしょう率りつは6.5と高たかく、2050年ねんにはイスラエルの人口じんこうの4人にんに1人にんを超ちょう正統せいとう派はが占しめるという予測よそくも出でています。

一方いっぽうで、宗教しゅうきょう学校がっこうへの補助ほじょ金きんや、超ちょう正統せいとう派はの家庭かていへの生活せいかつ保護ほごといった政府せいふによる経済けいざい的てきな支援しえんが長年ながねん続つづいていて、超ちょう正統せいとう派はの人口じんこうの増加ぞうかに伴ともない国内こくないからは批判ひはんの声こえもあがっています。

イスラエル政治せいじの専門せんもん家か「首相しゅしょうの頭痛ずつうの種たねは増ふえた」

超ちょう正統せいとう派はの人ひとたちの徴兵ちょうへいをめぐる問題もんだいについて、イスラエルの政治せいじに詳くわしい防衛ぼうえい大だい学校がっこうの立山たてやま良司りょうじ名誉めいよ教授きょうじゅはみずからも汚職おしょく疑惑ぎわくでの裁判さいばんを抱かかえているネタニヤフ首相しゅしょうは、連立れんりつ政権せいけんの維持いじのために難むずかしいかじ取かじとりを迫せまられることになると指摘してきしています。

立山たてやま名誉めいよ教授きょうじゅは「何なんらかの答こたえを出ださないと超ちょう正統せいとう派はの学生がくせいに対にたいする徴兵ちょうへいが現実げんじつになってしまうため、ネタニヤフ首相しゅしょうの頭痛ずつうの種たねは増ふえたと言いえる」と話はなしています。

そのうえで「ネタニヤフ首相しゅしょうはあくまでも自身じしんの裁判さいばんを先さき延のばしにし、政権せいけんにしがみつくため、超ちょう正統せいとう派はが連立れんりつ政権せいけんに残のこるように、補助ほじょ金きんや手当てあての増額ぞうがくといった手段しゅだんを講こうじて、超ちょう正統せいとう派はの政党せいとうを連立れんりつ政権せいけんに引き止ひきとめるための工作こうさくをすると思おもう。世論せろん調査ちょうさでは、イスラエルのユダヤ人じんのおよそ70％が超ちょう正統せいとう派はにも徴兵ちょうへい義務ぎむを課かすべきだと主張しゅちょうしているため、徴兵ちょうへい義務ぎむを課かすことは時代じだいの流ながれだ。ネタニヤフ首相しゅしょうが何なんらかの形かたちで政権せいけんを維持いじするために超ちょう正統せいとう派はをいっそう優遇ゆうぐうすれば、ネタニヤフ首相しゅしょうに対にたいする批判ひはんがさらに高たかまることは十分じゅうぶんあるだろう」と指摘してきしました。