羽生 演技構成点でトップ 連覇につなげる
羽生選手は去年11月に右足首を痛め今回が復帰戦で、ショートプログラムでは自身が持つ世界最高得点に迫る111.68をマークしてトップに立っていて、17日は最終グループの4番目、全体の22番目に滑りました。
羽生選手は冒頭の4回転サルコー、次の4回転トーループと2つの4回転ジャンプでスピードに乗った助走から流れるような着氷を見せ、出来栄えではいずれも満点を得て点数を伸ばしました。
またジャンプの基礎点が1.1倍になる演技後半には、3連続ジャンプを予定していた4回転トーループで着氷が乱れて大きく減点され、最後に跳んだ3回転ルッツも着氷が乱れましたが、4回転サルコーと3回転トーループの連続ジャンプをはじめ、成功させたジャンプはいずれも高い出来栄えでした。
一方、表現の面では、2シーズン前にも取り入れた平安時代の陰陽師、安倍晴明を描いた映画の曲に合わせ、曲のリズムを刻むようなステップや体をめいっぱいに使う緩急のある振り付けを見せ、表現力などを評価する演技構成点では、全体のトップの点数でした。
この結果、世界最高得点である自己ベストには17点余り及ばなかったものの、フリーで2位となる206.17をマークして、合計で317.85となり、2大会連続となる金メダルを獲得しました。
この種目でオリンピック2連覇を果たしたのは、アメリカのディック・バトン氏が1948年のサンモリッツ大会と1952年のオスロ大会で2連覇を果たして以来、66年ぶりとなります。
宇野 高い技術点で3位から銀メダル獲得
またショートプログラム3位につけた宇野選手は、後半のフリーに、おととし世界で初めて成功させた4回転フリップをはじめ、3種類の4回転ジャンプを合わせて4本跳ぶ構成で臨みました。
冒頭の4回転ループは転倒して大きく減点されましたが、続く4回転フリップを成功させました。
そしてジャンプの基礎点が1.1倍になる演技後半では、4回転トーループと2回転トーループの連続ジャンプの2回転トーループの着氷でバランスを崩したものの持ちこたえ、直後の4回転トーループを成功させました。このほかのジャンプをミスなく決めた宇野選手は、技術点では羽生結弦選手を上回り、全体の3位となる111.01をマークしました。
また表現力などを評価する演技構成点でも5つの項目ですべて9点台と高い評価を受け、フリーで3位となる202.73をマークし、合計で306.90となって銀メダルを獲得しました。
オリンピックのフィギュアスケートで日本勢が2人で表彰台に上がるのは初めてです。
フェルナンデスは技術点を伸ばせず
前半のショートプログラムで2位のスペインのハビエル・フェルナンデス選手は、後半のフリーで3つの4回転ジャンプを予定していました。
演技の冒頭は4回転トーループに成功し出来栄えも高く評価されました。
このあと4回転サルコーから2回転トーループの連続ジャンプ、さらには3回転半のトリプルアクセルから3回転トーループの連続ジャンプを決め前半は大きなミスがありませんでした。
しかし演技後半は、予定していた4回転サルコーが2回転となって得点を伸ばすことができませんでした。4回転ジャンプの数が2つにとどまり、技術点は101.52で羽生結弦選手などにはおよびませんでした。
それでも表現豊かな演技は高く評価され演技構成点は、羽生選手に次ぐ全体の2位の96.14でした。
フリーの得点は197.66で4位にとどまりましたが、合計305.24で3回目のオリンピックで初めてのメダル獲得となりました。
フリーでトップはチェン
金メダル争いの一角を担うと見られていたアメリカの17歳、ネイサン・チェン選手は、前半のショートプログラムで17位と大きく出遅れましたが、後半のフリーでは得意とする4回転ジャンプを4種類、合計6回入れるという攻めの演技構成で臨みました。
チェン選手は、冒頭の難度の高い4回転ルッツ、続く4回転フリップと2回転トーループの連続ジャンプを成功させたあと、単独で跳んだ4回転フリップで着氷が乱れましたが、演技後半の3回の4回転ジャンプをすべて成功させました。
またステップと3つのスピンはいずれも最高難度のレベルフォーの評価を受け、技術点で127.64と、ほかの選手たちに15点以上の差をつける高得点をあげました。
この結果、チェン選手のフリーは自己ベストを10点以上更新する215.08をマークして全体のトップとなり、ショートプログラムとの合計で297.35と、前半から順位を12個上げて5位に入り、大きく盛り返しました。
初出場 田中は18位
またオリンピック初出場の田中刑事選手は合計244.83で18位でした。
羽生 日本の絶対的エース
羽生結弦選手は宮城県出身の23歳。日本の絶対的なエースです。
4歳からスケートを始めオリンピックの金メダリスト、ロシアのエフゲニー・プルシェンコ選手に憧れて力をつけ、シニアに参戦した2010年のNHK杯で自身初めての4回転ジャンプとなる「4回転トーループ」を成功させました。
2011年のシーズンには、グランプリシリーズロシア大会で初優勝してグランプリファイナルと世界選手権に初出場を果たし、このうち世界選手権では3位に入り、17歳で表彰台に上がりました。
その後、拠点をカナダに移し世界的に有名なブライアン・オーサーコーチの指導のもとで力をつけ2012年のシーズンには全日本選手権で初優勝しました。
2013年シーズンは、グランプリファイナルで初優勝、全日本選手権を2連覇して臨んだソチオリンピックでは、「トーループ」と「サルコー」の2種類の4回転ジャンプに挑み、日本の男子シングルで初めての金メダルを獲得しました。
世界のトップスケーターとしてその一挙手一投足に注目が集まるようになった羽生選手は、2015年のNHK杯でショートプログラム、フリーともに世界最高得点を更新し世界で初めて合計で300点超えを果たしました。
そして昨シーズンは、世界で初めて「4回転ループ」を成功させ、グランプリファイルで4連覇、世界選手権のフリーでは、3種類の4回転ジャンプを4本ともミスなく跳んで自身の世界最高得点を更新して優勝するなど、とどまることのない成長を見せてきました。
ピョンチャンオリンピックが開かれる今シーズンは、初戦のショートプログラムで2年ぶりに自身が持つ世界最高得点を更新し、グランプリシリーズのロシア大会では、自身4種類目の4回転ジャンプとなる「4回転ルッツ」を決めてさらに演技の幅を広げました。
しかし去年11月、NHK杯での練習中に右足首のじん帯を損傷しその後のすべての大会を欠場しました。
ピョンチャンオリンピックはおよそ4か月ぶりの実戦となりましたが、前半のショートプログラムで自身が持つ世界最高得点に迫る高得点をマークして復活を印象づけました。
羽生選手の高く、アーチを描くような美しいジャンプは、他の選手の追随を許さず音楽に合わせて体を動かす表現力も群を抜いています。
そうした羽生選手の演技は、多くの選手が目標としているだけでなく海外のメディアからも最大級の評価を受けています。
宇野 成長中の20歳
宇野昌磨選手は名古屋市出身の20歳です。
5歳の時、地元のスケートリンクで後に、バンクーバーオリンピックの女子シングルで銀メダルを獲得する浅田真央さんに声をかけられてスケートを始めました。
早くから4回転ジャンプに挑み、2015年の世界ジュニア選手権では「4回転トーループ」を決めて優勝するなど世界の舞台でも実力を発揮してきました。
次のシーズンから本格的にシニアに参戦し、グランプリシリーズの2つの大会で表彰台に上がって進出したグランプリファイナルのフリーでは、4回転ジャンプを2本プログラムに入れて3位に入りシニアでもトップレベルで戦えることを示しました。
このシーズンの最終戦では、世界で初めて難度の高い「4回転フリップ」に成功し、去年2月の四大陸選手権では「4回転ループ」も成功させています。さらに4月の世界選手権では、319.31の高得点をマークして2位になりその実力を確かなものにしていきました。
今シーズンの初戦では自身4種類目の4回転ジャンプとなる「4回転サルコー」を成功させるなど難しいジャンプに果敢に挑む姿勢を見せ、表現力などを評価する演技構成点も平均で9点台をマークするようになりました。
毎シーズン演技の幅を広げ、国際大会でも常に高いレベルの演技を維持してトップを走り続ける羽生結弦選手に迫り、世界でも頂点を狙える選手に成長しました。
冬の大会 個人種目連覇は初めて
日本の選手が冬のオリンピックの個人種目で2大会連続の金メダルを獲得したのは羽生結弦選手が初めてです。
日本は、冬のオリンピックで前回のソチ大会までに10個の金メダルを獲得しています。
これまでに個人種目で複数の金メダルを獲得した選手はおらず、今回、フィギュアスケート男子シングルで羽生選手が2大会連続の金メダルを獲得したことは史上初めての快挙となります。
一方、団体種目では、スキーノルディック複合の団体が1992年のアルベールビル大会と1994年のリレハンメル大会を連覇していていずれの大会にも出場した荻原健司さんと河野孝典さんが2大会連続の金メダルを獲得しています。