6年前の2018年5月、和歌山県田辺市の会社社長、野崎幸助さん(当時77)が自宅で急性覚醒剤中毒で死亡したことをめぐっては、元妻の須藤早貴被告(28)が何らかの方法で致死量の覚醒剤を摂取させて殺害したとして、殺人などの罪に問われています。
12日、和歌山地方裁判所で開かれた初公判で、元妻は、黒色のワンピース姿でマスクを着用して証言台の前に立ちました。
表情は傍聴席からうかがえませんでしたが、伏し目がちにしていました。
裁判長から起訴された内容について問われると、前を向いて「私は社長を殺していないし、覚醒剤を摂取させていません」と小さな声で述べて、無罪を主張しました。
検察は冒頭陳述で「被告は財産目当てで結婚し、事件の2か月前にインターネットで『完全犯罪』『薬物』と検索して、その翌月、密売サイトを通じて覚醒剤を注文した。野崎さんが覚醒剤を口から飲み込んだ可能性がある時間帯に、被告は自宅で二人きりになっていて、十分な犯行機会があった」と主張しました。
今後の裁判では、野崎さんの会社関係者など28人の証人尋問が行われる予定で、法廷で事件のいきさつがどこまで明らかになるかが焦点となります。
裁判までの経緯
野崎幸助さんは、出版した自伝で女性を次々と誘惑するスペインの伝説上の人物「ドン・フアン」にみずからを重ね合わせ、注目を集めました。
著書では、2017年の秋、羽田空港で転んだところを、当時21歳だった須藤被告に助けてもらったと紹介しています。野崎さんから結婚を申し込み、2018年2月に入籍したとつづっていました。
しかし、結婚から3か月後、野崎さんが自宅で死亡しているのが見つかります。死因は急性覚醒剤中毒で、警察は殺害された疑いがあるとみて捜査を始めました。
そして、3年後の2021年に被告が逮捕・起訴されました。
長期間に及んだ捜査では、野崎さんが覚醒剤を摂取したとみられる時間帯に被告だけが自宅にいたことや、スマートフォンの解析などで事件前に覚醒剤の密売人と接触していたとみられることなどが、わかったということです。
一方、被告は逮捕後の取り調べに容疑を否認し、その後も黙秘していたということです。
傍聴希望 倍率は約3.6倍
和歌山地方裁判所では午前9時20分から傍聴券の受け付けが行われ、傍聴を希望する人が長い列を作りました。
裁判所によりますと、47席の傍聴席に対して傍聴を希望した人は171人で、倍率はおよそ3.6倍だったということです。
大阪から訪れた50代の男性は「注目されている事件なので傍聴に来ました」と話していました。
和歌山市の70代の男性は「和歌山で起きた毒物カレー事件でも傍聴をしました。検察がどのように立証していくのかに関心があります」と話していました。