忘年ぼうねん会かいは業務ぎょうむですか？残業ざんぎょう代だい、出でますか？ 調しらべてみると…

「残業ざんぎょう代だい、出でるんですか？」

昨今さっこん、若手わかて社員しゃいんからの問といかけに困惑こんわくする上司じょうしたちがいるようだ。忘年ぼうねん会かいはベテラン管理かんり職しょくには大切たいせつな“飲のみニケーション”の場ばかもしれない。しかし部下ぶかからすれば“出でたくもない忘年ぼうねん会かいに出ださせられた”としたら、それは「業務ぎょうむ」になるんだろうか… 本当ほんとうのところを探さぐってみた。

（ネットワーク報道ほうどう部ぶ 記者きしゃ 杉本すぎもと宙ちゅう矢や）

※この記事きじの内容ないようは12月つき2日にちのニュース7で放送ほうそう予定よていです。

意味いみ深ふかなメール

都内とないに住すむ40代だい会社かいしゃ員いんの元もとに、先月せんげつ下旬げじゅん、意味いみ深ふかなタイトルのメールが届とどいた。

「【業務ぎょうむ外がい】忘年ぼうねん会かいのお知おしらせ」

発信はっしん元もとは会社かいしゃの若手わかて社員しゃいんで、部署ぶしょ内ないへの一斉いっせい送信そうしんメールだった。

受け取うけとった男性だんせいは「業務ぎょうむ外がい」という表記ひょうきに違和感いわかんを覚おぼえたという。

（都内とないの40代だいの男性だんせい）

「おそらく上司じょうしや先輩せんぱいの指示しじではないかと思おもうのですが、なぜ『業務ぎょうむ外がい』と打ち出うちだしてまで、会社かいしゃとしての忘年ぼうねん会かいにこだわるのか不思議ふしぎです。私わたし自身じしん、今いまはお酒さけを飲のむのをやめているので、行いきたい人ひとだけで個々ここに声こえがけするのではだめなのでしょうか」

キーワードは「残業ざんぎょう代だい」？

きたる忘年ぼうねん会かいシーズン。

今年ことしは、新型しんがたコロナウイルスが季節きせつ性せいインフルエンザなどと同おなじ「5類るい」に位置いちづけられてから初はじめて迎むかえることになる。

コロナ禍かで飲のみ会かいが自粛じしゅくされてきて、若手わかて社員しゃいんの中なかには、初はじめて参加さんかする忘年ぼうねん会かいに期待きたいする一方いっぽうで、戸惑とまどう声こえも少すくなくない。

SNS上じょうでは、忘年ぼうねん会かいにまつわる悲喜ひきこもごもの意見いけんがあふれる中なか、特とくに目めを引ひいたのは「残業ざんぎょう代だい」というキーワードだ。

「何なんで強制きょうせい参加さんかで上司じょうしの機嫌きげんとらないといけないの？令りょう和わの時代じだいに上うえが昭和しょうわだと…」

「このご時世ごじせいに泊とまりでの忘年ぼうねん会かい。残業ざんぎょう代だいつけてほしい」

「忘年ぼうねん会かい、なぜ残業ざんぎょう代だいが出でないんだろう…」

専門せんもん家かを訪たずねると…

どうやら、やるせない思おもいで忘年ぼうねん会かいに参加さんかしている人ひとが少すくなからずいるようだ。

ここで疑問ぎもんが浮うかぶ。

“本当ほんとうに忘年ぼうねん会かいに残業ざんぎょう代だいは出でないのか？”

真偽しんぎを確たしかめるべく、労働ろうどうの専門せんもん家かを訪たずねた。

話はなしをしてくれたのは、社会しゃかい保険ほけん労務ろうむ士しの久保田くぼた慎まこと平たいらさん。

普段ふだんは中小ちゅうしょう企業きぎょうの経営けいえい者しゃからの相談そうだんを受うけているそうだが、特とくに近年きんねん「忘年ぼうねん会かいに残業ざんぎょう代だいは出でますか？」と部下ぶかから言いわれて、困惑こんわくした経営けいえい者しゃや上司じょうしからの相談そうだんが相次あいついでいるという。

素朴そぼくな質問しつもんをぶつけてみた。

Q.忘年ぼうねん会かいは業務ぎょうむになる？

A.会社かいしゃとして“強制きょうせい参加さんか”させたり、“参加さんかしないことで不利益ふりえきがある”ようなことを言いってしまうと、それは労働ろうどう時間じかんと考かんがえられ、給料きゅうりょうや残業ざんぎょう代だいが発生はっせいすると考かんがえられます。

Q.会社かいしゃとしての“強制きょうせい”とは？

A.上じょうの立場たちばの人ひとが「参加さんかしなさいよ」と言いうと、会社かいしゃの指示しじと捉とらえられかねません。

中小ちゅうしょう企業きぎょうであれば社長しゃちょうからとか、経営けいえいの幹部かんぶや上司じょうし、先輩せんぱいなどですね。

また、誘さそう際さいに「みんな参加さんかしているんだから」といった言動げんどうがあると、強制きょうせい参加さんかの印象いんしょうが強つよまります。

ダイレクトな“強制きょうせい”とまで見みえなくとも、業務ぎょうむと捉とらえられる可能かのう性せいがあります。

Q.“不利益ふりえき”があるとは？

A.不利益ふりえきというのは、参加さんかしないことにペナルティがあるということですね。

出でないことによって給料きゅうりょうがカットされるといったものから、例たとえば「参加さんかしたほうが評価ひょうかが上あがるよ」というように、参加さんかの有無うむが評価ひょうかにつながっている、もしくはつながる可能かのう性せいがあると匂におわせる場合ばあいもそうですね。

Q.そもそも労働ろうどう時間じかんとは？

A.裁判さいばんの判例はんれいでは、使用しよう者しゃ・事業じぎょう者しゃの「指揮しき命令めいれい下かにある時間じかん」と考かんがえられています。

自社じしゃだけでなく、取引とりひき先さきとの忘年ぼうねん会かいでも「出でなさい」と上司じょうしから言いわれれば、労働ろうどう時間じかんと考かんがえるのが妥当だとうでしょう。

断ことわる自由じゆうがあれば別べつですが、きれいに分わけられない場合ばあいもあると思おもいますので、会社かいしゃ側がわとしては誘さそい方かたも含ふくめて、慎重しんちょうな判断はんだんが必要ひつようでしょう。

Q.誘さそわれて困こまったら？

A.「それは業務ぎょうむですか？残業ざんぎょう代だい、出でるんですか？」という返事へんじにはトゲがあるので、悪気わるぎがなくても、その後そのごの職場しょくばの人間にんげん関係かんけいがやりにくくなってしまう可能かのう性せいもあります。

その職場しょくばで働はたらき続つづけるならば「用事ようじがあります」などと言いって濁にごすほうが無難ぶなんでしょう。

Q.背景はいけいにどんな変化へんかが？

A.40～60代だいぐらいの世代せだいでは、とにかく飲のみに行いく「飲のみニケーション」、飲のみ会かいのほかにコミュニケーションの取とり方かたがわからない人ひともいると思おもいますが、今いまの若わかい世代せだいでは「プライベートを大切たいせつにしたい」とか「飲のみに行いくのが苦手にがて」という人ひとが増ふえています。

ワークライフバランスの重視じゅうしだったり、コロナ禍かで歓送かんそう迎むかえ会かいもなくなったりして、必かならずしも飲のみ会かいをやるのが普通ふつうではなくなってきています。

ですから、強制きょうせい参加さんかにならないように、出でたい人ひとに出でてもらう誘さそい方かたが重要じゅうようですし、普段ふだんから出でたいと思おもわせるような雰囲気ふんいき作づくりも大事だいじだと思おもいます。

久保田くぼたさんの話はなしをまとめるとこうなる。

業務ぎょうむ時間じかん内ないではダメ？

いっそ、忘年ぼうねん会かいを業務ぎょうむにしてはどうなのか？

そんなことを考かんがえながら取材しゅざいを続つづけていると、SNSで、ある経営けいえい者しゃの投稿とうこうを見みつけた。

「忘年ぼうねん会かいは日にち中ちゅう開催かいさいで給料きゅうりょうも払はらいます」

業務ぎょうむ時間じかん内ないに忘年ぼうねん会かいを行おこない、その分ぶんの給料きゅうりょうも支払しはらっているという企業きぎょうだ。

取材しゅざいで向むかった先さきは、広島ひろしま県けん福山ふくやま市しにある従業じゅうぎょう員いん11人にんの不動産ふどうさん会社かいしゃ。

うち女性じょせい従業じゅうぎょう員いんが7人にんで、5人にんは子育こそだてや介護かいごのため働はたらく時間じかんに制約せいやくがあるという。

迎むかえてくれた副ふく社長しゃちょうはこう話はなす。

「従業じゅうぎょう員いんの生活せいかつ実態じったいに合あわせて、より快適かいてきに過すごしてもらうことを考かんがえていたら、自然しぜんと日にち中ちゅうの開催かいさいになりました」

実際じっさいに5年ねん前まえに開催かいさいした忘年ぼうねん会かいの写真しゃしんを見みせてもらうと、たしかに窓まどの外そとが明あかるい。

テーブルにはビールも並ならぶ。

副ふく社長しゃちょうによると、勤務きんむ時間じかん内ないの忘年ぼうねん会かいは、多おおくの従業じゅうぎょう員いんが参加さんかしやすくなり、社内しゃないの一体いったい感かんが高たかまるため、経営けいえい者しゃの立場たちばからしても生産せいさん性せいのアップが期待きたいできるメリットがあるという。

山陽さんよう不動産ふどうさん 角田つのだ千鶴ちづる副ふく社長しゃちょう

「勤務きんむ時間じかん外がいの夜よるにやると、残業ざんぎょう代だいが出でるのか不安ふあんもあるし、いつ終おわるかという不安ふあんもあると思おもいます。私わたしも子育こそだてをしていますし、勤務きんむ時間じかん内ないに給料きゅうりょうを払はらって開催かいさいするのがみんなが参加さんかしやすいと考かんがえました。若わかい人ひとが楽たのしくないということは、その上司じょうしや開催かいさいする人ひとが楽たのしもうとしている会かいになってしまっているのかもしれません」

今月こんげつ下旬げじゅんには、コロナ禍かを経へて4年ねんぶりに、再ふたたび昼間ひるまの飲食いんしょく店てんで忘年ぼうねん会かいを行おこなうという。

専門せんもん学校がっこうを卒業そつぎょうし、今年ことし就職しゅうしょくしたばかりの20歳さいの従業じゅうぎょう員いんは、初はじめての忘年ぼうねん会かいを前まえに、こう語かたってくれた。

新卒しんそつ20歳さいの従業じゅうぎょう員いん

「勤務きんむ時間じかん内ないということで参加さんかしやすいです。私わたし自身じしん、忘年ぼうねん会かいに参加さんかしたことがないので、未知みちの世界せかいでもあるんですけど、楽たのしみにしています」

誰だれもが気兼きがねなく参加さんかできる忘年ぼうねん会かいであってほしい。

そう感かんじる取材しゅざいでした。