おおむね10年程度の期間を念頭に、外交・防衛に加え、経済安全保障、サイバーなどの政策に戦略的指針を与える文書となります。
防衛の目標と手段を示す「国家防衛戦略」は、防衛力整備の指針「防衛計画の大綱」に代わる文書です。
武力行使が起きた際に同盟国アメリカなどの支援を受けつつ、日本が責任を持って対処することなど、日本が目指すべき3つの「防衛目標」を設定し、その達成に向けた方法と手段を示すものと位置づけています。
「防衛力整備計画」は、防衛費総額や装備品の整備規模を定めた「中期防衛力整備計画」に代わる文書で、計画の期間をこれまでの「5年」から「10年」に延長しています。
自衛隊の体制については、おおむね10年後の体制を念頭におく一方、防衛力整備の水準や主要な装備品の整備規模は前半の5年間を対象に明記しています。
9年前に策定したこれまでの戦略では、北朝鮮、中国の順に記述していましたが、覇権主義的な動きを強める中国への警戒感がより反映された形となっています。 また新たに、ウクライナへの侵攻を続けるロシアが盛り込まれました。
また、台湾への武力行使の可能性を否定せず、台湾周辺で軍事活動を活発化させており、国際社会全体で急速に懸念が高まっているとしています。 その上で、「わが国と国際社会の深刻な懸念事項であり、これまでにない最大の戦略的な挑戦」と記述しています。 これはアメリカの「国家安全保障戦略」の中で、中国の動きをアメリカ軍の抑止力の維持・強化にとって「対応を絶えず迫ってくる挑戦」と表現していることと足並みをそろえた形です。
また、日本を含むインド太平洋地域における軍事動向について、中国との戦略的な連携強化とあいまって「安全保障上の強い懸念だ」と指摘しています。
そして北朝鮮への対応などを念頭に安全保障面を含めて、日韓、日米韓3か国の戦略的な連携を強化するとしています。 一方、日本固有の領土である島根県の竹島の領有権問題は日本の一貫した立場に基づいて毅然と対応し、平和的に解決するため、粘り強く外交努力を行う方針を示しています。
そして、台湾海峡の平和と安定は国際社会の安全と繁栄に不可欠で、台湾問題の平和的解決を期待するとの立場でさまざまな取り組みを継続していくとしています。
その上で、ミサイル防衛を強化して、飛来するミサイルを防ぎつつ、相手からのさらなる攻撃を防ぐため「反撃能力」が必要だとしています。
行使のタイミングは、武力行使の3要件に合致した場合で、武力攻撃の手段として弾道ミサイルなどによる攻撃が行われた場合としています。 一方、反撃能力は憲法や国際法の範囲内で行使され、先制攻撃は許されないとして、専守防衛の考え方に変わりがないことを強調した上で、日米が協力して対処するとしています。 反撃の対象は具体的に明示されていませんが、文書に関して続けられてきた自民・公明両党の実務者協議では、政府側は、国際人道法を踏まえて反撃の対象は「軍事目標」に限られ、相手の攻撃を防ぐのにやむをえない必要最小限度の措置とすると説明しています。
また、アメリカの巡航ミサイル「トマホーク」をはじめとする外国製のミサイルの着実な導入も進めます。 「トマホーク」の配備は2026年度からを予定し、艦艇への配備を検討しているということです。 このほか、潜水艦に搭載可能な垂直型のミサイル発射システムを開発するほか、「スタンド・オフ・ミサイル」を保管するための火薬庫を増設するとしています。
協議の過程で自民党は「現在の装備では国民の安心を確保できず、反撃能力は必要だ」と主張したのに対し、公明党は「戦後、長い間、政策判断として保有してこなかったものを変更するものになる」として丁寧な議論を求めました。 また、公明党は「反撃能力の行使は自衛権行使の一環であることをしっかり強調してほしい」として、敵から攻撃を受けた際などに作る「対処基本方針」の中で、事態認定の経緯や前提となった事実を明確に盛り込むよう求めました。 両党の協議では、日本が直接攻撃されていない、同盟国アメリカなどへの武力攻撃にも、集団的自衛権の行使として反撃能力を発動することも排除しないことを確認しました。
決定にあたっては岸田総理大臣みずからが主導し、相次いで3回にわたって閣僚や自民党に指示を出す形で進められました。 来年度から5年間の防衛費をめぐり、当初は防衛省が48兆円程度が必要だとする一方、財務省は30兆円台半ばに抑えたいとして双方の隔たりは10兆円を超えていました。 1回目の総理指示は先月28日。 岸田総理大臣は浜田防衛大臣と鈴木財務大臣を官邸に呼び、5年後の2027年度に防衛費と関連する経費もあわせてGDPの2%に達する予算措置を講じるよう指示しました。 5年後に到達すべき水準を明確に示すことで、両省の歩み寄りを促した形で、幅は40兆円から43兆円程度まで縮まります。 2回目は今月5日。 岸田総理大臣は再び両閣僚を官邸に呼び、来年度から5年間の防衛費について総額およそ43兆円を確保するよう指示し、防衛費の大枠が決着します。 3回目は今月8日。 岸田総理大臣は防衛費増額で不足する1兆円を超える財源として与党に対し、年末までに税目や施行時期を含めて増税を検討するよう指示しました。 税制改正大綱の決定を翌週に控えた中で、直前に与党にとりまとめを迫った形です。 わずか10日程度のうちに3回にわたって総理指示を出すことで、防衛費増額に向けた道筋がつけられました。
1つは「国家安全保障戦略」に明記されている、2027年度に防衛費と関連する経費をあわせて達成する予算措置の「GDPの2%」。 もう1つが「防衛力整備計画」に明記されている、来年度から5年間の防衛力整備の水準「43兆円程度」です。 いずれも岸田総理大臣が指示した数字です。
政府は、このうち防衛費で9兆円程度関連する経費で2兆円程度を見込んでいます。 防衛費9兆円の内訳は ▽今の防衛費の水準の5兆2000億円に加え ▽歳出改革で1兆円余り ▽年度内に使われなかった「決算剰余金」の活用で7000億円程度 ▽国有資産の売却などで得られる税外収入などをためておき防衛力整備にあてる「防衛力強化貸金」で9000億円程度で、 それでも不足する1兆円余りを増税で賄う方針です。 また関連する経費2兆円の内訳は、海上保安庁の予算などNATO=北大西洋条約機構の基準を参考にした他省庁の予算に加え、新たに研究開発、公共インフラ、国際的協力、サイバー安全保障の4つの分野をあてることにしています。 これらをあわせてGDPの2%にあたる11兆円を達成することにしています。
建設国債はこれまで防衛費にあてることは認められておらず、国債発行のあり方を転換することになります。
政府は歳出改革の具体的内容を現時点では明らかにしておらず、思うように財源が捻出できるのか、不透明な状況です。
安全保障上の課題は?
中国
北朝鮮
ロシア
周辺の国や地域との関係は?
韓国
台湾
反撃能力
保有の理由
反撃能力の定義
反撃能力の装備
与党協議は
防衛費増額 岸田首相が主導
「GDPの2%」「43兆円程度」
GDP2%の内訳は
43兆円の内訳は
財源確保の課題