黒田くろだ総裁そうさいは記者きしゃ会見かいけんで「市場しじょう機能きのうの改善かいぜんを図はかり、より円滑えんかつなイールドカーブ（利回りまわり曲線きょくせん）全体ぜんたいの形成けいせいを促うながしていくため」「金融きんゆう緩和かんわの効果こうかが企業きぎょう金融きんゆうにスムーズに及およぶようにするため」などと説明せつめいしましたがこれだけだとよくわかりませんよね。

日銀にちぎんはそれまで国債こくさいを大量たいりょうに買かうことによって長期ちょうき金利きんり（10年ねんものの国債こくさいの利回りまわり）を0.25％以下いかに抑え込おさえこんできました。

しかし欧米おうべいの相次あいつぐ利上りあげで、日本にっぽんでも長期ちょうき金利きんりに上昇じょうしょう圧力あつりょくが高たかまり、12月つき時点じてんのイールドカーブは下したの図ずのような形かたちをしていました。

イールドカーブ（利回りまわり曲線きょくせん）は、期間きかんが短みじかい国債こくさいの利回りまわりから期間きかんが長ながい国債こくさいにかけて利回りまわりが変かわっていく形かたちを描えがいた曲線きょくせんで、通常つうじょうは期間きかんが長ながくなるほど利回りまわりは高たかくなります。

今回こんかいの日銀にちぎんの政策せいさく修正しゅうせいについて、アナリストなど債券さいけん市場しじょうの関係かんけい者しゃ10人にんに取材しゅざいしたところ、全員ぜんいんが「マーケットから見みれば、変動へんどう幅はばの修正しゅうせいは事実じじつ上じょうの利上りあげにあたる」という認識にんしきを示しめしました。

このうちみずほ証券しょうけんの丹治たんじ倫敦ろんどんチーフ債券さいけんストラテジストは、「上限じょうげんが引き上ひきあげられたとしても、市場しじょうが次つぎの修正しゅうせいを催促さいそくして、イールドカーブのゆがみが修正しゅうせいされないということは、当然とうぜん、日銀にちぎんも想定そうていできていたはずだ」と指摘してきします。

財務省ざいむしょうが1月つき4日にちに発表はっぴょうした対外たいがい・対内たいない証券しょうけん投資とうしによると、海外かいがい勢ぜいは日銀にちぎんの政策せいさく修正しゅうせいをはさんだ12月つき18日にちから12月つき24日にちまでの1週間しゅうかんで、日本にっぽんの中なか長期ちょうき債さいを大おおきく売うり越こしています。

その金額きんがくは、4兆ちょう8000億おく円えん余あまりと、前まえの週しゅうの10倍ばい以上いじょうに拡大かくだいしています。

日銀にちぎんが政策せいさくを修正しゅうせいすると長期ちょうき金利きんりが上昇じょうしょうし、国債こくさい価格かかくは下落げらくするだろう。

それを見越みこして、日本にっぽん国債こくさいを売うっておく。

このように考かんがえる海外かいがいの投資とうし家かが増ふえていることが統計とうけいからもうかがえます。

市場しじょうが注目ちゅうもくしているのが「OIS」（オーバーナイト・インデックス・スワップ）のデータです。

OISというのは、固定こてい金利きんりと変動へんどう金利きんりを一定いってい期間きかん交換こうかんする「金利きんりスワップ」と呼よばれる取り引とりひきの1つです。

変動へんどう金利きんりについては「無む担保たんぽコール翌日よくじつ物ぶつ金利きんり」を参考さんこうにします。

「無む担保たんぽコール翌日よくじつ物ぶつ金利きんり」は、コール市場こ-るしじょうと呼よばれる多おおくの金融きんゆう機関きかんがお金おかねを貸し借かしかりする市場しじょうの代表だいひょう的てきな短期たんき金利きんりの指標しひょうで、日々ひび変動へんどうしています。

これと交換こうかんする固定こてい金利きんりはOISレートとも呼よばれ、金融きんゆう機関きかんどうしがお金おかねを貸し借かしかりする際さいに、その返済へんさい期間きかんごとにあらかじめ相対そうたいで決きめておく金利きんりです。

この金利きんりを決きめる際さいに、各かく金融きんゆう機関きかんがさまざまな分析ぶんせきに基もとづいて日銀にちぎんの政策せいさく金利きんりがどうなりそうか、いわば予測よそくすることで、金利きんりの水準すいじゅんをはじき出はじきだしていて、ここから市場しじょうが日銀にちぎんの金利きんりをどう見みているかを確認かくにんできます。

このデータをもとにつくられたグラフです。

10年ねんを超こえる国債こくさいの多おおくは、生命せいめい保険ほけん各社かくしゃが購入こうにゅうしています。

日本にっぽん生命せいめい、第一生命だいいちせいめい、明治めいじ安田やすだ生命せいめい、住友すみとも生命せいめいの生命せいめい保険ほけん大手おおて4社しゃの運用うんよう担当たんとう者しゃに聞きいたところ、いずれも小幅こはばではあるものの、金利きんり水準すいじゅんは今いまよりは上あがるという見方みかたを示しめしていました。

ある大手おおて生命せいめい保険ほけん会社かいしゃの担当たんとう者しゃは「日銀にちぎんのさらなる政策せいさく修正しゅうせいが見込みこまれるため、超ちょう長期ちょうきの金利きんりは上昇じょうしょう方向ほうこうに向むかうとみている。ただ、債券さいけん市場しじょうを長ながらく見みてきた我々われわれもこれまで国内こくないで金利きんりが上あがる局面きょくめんは経験けいけんしたことがない。30年ねん以上いじょう前まえの経営けいえい資料しりょうなどを倉庫そうこから引っ張ひっぱり出だしてきて、当時とうじの状況じょうきょうを勉強べんきょうしながら、今後こんごの運用うんよう方針ほうしんについて検討けんとうしているところだ」と話はなしていました。

実際じっさい、各社かくしゃでは外国がいこく債券さいけんから、国内こくない債券さいけんに運用うんよう資産しさんを切り替きりかえる動うごきも加速かそくしています。

ただ、日銀にちぎんは今回こんかいの修正しゅうせいはあくまで金融きんゆう緩和かんわの一環いっかんだという姿勢しせいを貫つらぬいています。

この結果けっか、日銀にちぎんの説明せつめいと、市場しじょうの“思惑おもわく”との間まには大おおきな乖離かいりが生うまれています。

1月つき17日にちと18日にちに金融きんゆう政策せいさく決定けってい会合かいごうを開ひらきますが、そこで市場しじょうとどう向き合むきあうのか。

次つぎの手てはあるのか。

どうする日銀にちぎん！

金利きんりの動向どうこうは住宅じゅうたくローンや企業きぎょうへの貸し出かしだしにも影響えいきょうを与あたえることになるので国債こくさいや金利きんりをめぐる日銀にちぎんと市場しじょうとの攻防こうぼうに引き続ひきつづき注目ちゅうもくです。