「袴田事件」検察が特別抗告を断念再審開始へ - Easy News

57年ねん前まえ、静岡しずおか県けんで一家いっか4人にんが殺害さつがいされたいわゆる「袴田はかまだ事件じけん」で、死刑しけいが確定かくていした袴田はかまだ巌いわおさんの再審さいしん＝裁判さいばんのやり直やりなおしを認みとめた東京とうきょう高等こうとう裁判所さいばんしょの決定けっていについて、検察けんさつは最高さいこう裁判所さいばんしょに特別とくべつ抗告こうこくしないことを決きめました。

これにより死刑しけい判決はんけつの確定かくていから40年ねん余あまりを経へて、やり直やりなおしの裁判さいばんが開ひらかれることになりました。

死刑しけいが確定かくていした事件じけんで再審さいしんが行おこなわれるのは5件けん目めで、過去かこ4件けんはいずれも無罪むざいが言い渡いいわたされています。

⇒【詳報しょうほう】再審さいしん開始かいしへ関係かんけい者しゃの反応はんのうなど

57年ねん前まえの1966年ねんに今いまの静岡しずおか市し清水しみず区くで一家いっか4人にんが殺害さつがいされた事件じけんで死刑しけいが確定かくていした袴田はかまだ巌いわおさん（87）について、東京とうきょう高等こうとう裁判所さいばんしょは今月こんげつ13日にちに「有罪ゆうざいの根拠こんきょとされた証拠しょうこに合理ごうり的てきな疑うたがいが生しょうじた」として再審さいしんを認みとめる決定けっていをしました。

決定けっていは、逮捕たいほから1年ねん以上いじょうあとに現場げんば近ちかくの“みそタンク”から見みつかった衣類いるいについて、弁護べんご側がわの新あらたな実験じっけん結果けっかなどをもとに、「袴田はかまださんが犯行はんこう時じに着きていたという確定かくてい判決はんけつの認定にんていには合理ごうり的てきな疑うたがいが生しょうじる」と指摘してきした上うえで、捜査そうさ機関きかんによるねつ造ねつぞうの疑うたがいにも言及げんきゅうし、厳きびしく批判ひはんしました。

弁護べんご団だんによりますと、この決定けっていについて検察けんさつは、最高さいこう裁判所さいばんしょに特別とくべつ抗告こうこくしないことを決きめました。

特別とくべつ抗告こうこくの理由りゆうは憲法けんぽう違反いはんや判例はんれい違反いはんがある場合ばあいに限かぎられ、検察けんさつ当局とうきょくは、こうした理由りゆうを見みいだすのは難むずかしいと判断はんだんしたものとみられます。

これにより、死刑しけい判決はんけつの確定かくていから40年ねん余あまりを経へて、静岡しずおか地方ちほう裁判所さいばんしょでやり直やりなおしの裁判さいばんが開ひらかれることになります。

この事件じけんでは静岡しずおか地方ちほう裁判所さいばんしょが9年ねん前まえ、再審さいしんを認みとめる決定けっていを出だし、袴田はかまださんは死刑しけい囚しゅうとして初はじめて釈放しゃくほうされましたが、東京とうきょう高裁こうさいは一転いってんして再審さいしんを認みとめず、その後そのご、最高裁さいこうさいが再ふたたび東京とうきょう高裁こうさいでの審理しんりを命めいじる異例いれいの展開てんかいをたどっていました。

死刑しけいが確定かくていした事件じけんで再審さいしんが開ひらかれるのは5件けん目めで、過去かこ4件けんはいずれも無罪むざいが言い渡いいわたされています。

弁護べんご団だんの中なかには涙なみだを浮うかべている人ひとも

袴田はかまださんの弁護べんご団だんは、午後ごご4時半じはんから東京とうきょう霞が関かすみがせきで記者きしゃ会見かいけんを予定よていしていて、会見かいけん場じょうに入はいるとすぐに「検察けんさつから『特別とくべつ抗告こうこくを断念だんねんする』と連絡れんらくがあった」と声こえをあげて、報道陣ほうどうじんや集あつまった支援しえん者しゃに伝つたえました。弁護べんご団だんの中なかには喜よろこびのあまり目めに涙なみだを浮うかべている人ひともいました。

今後こんご有罪ゆうざい判決はんけつを最初さいしょに言い渡いいわたした静岡しずおか地裁ちさいで再審さいしんへ

検察けんさつが期限きげんまでに特別とくべつ抗告こうこくしなかったことで、袴田はかまだ巌いわおさんの再審さいしん＝裁判さいばんのやり直やりなおしが確定かくていし、今後こんご、静岡しずおか地方ちほう裁判所さいばんしょでやり直やりなおしの裁判さいばんが開ひらかれることになります。

再審さいしんの審理しんりは、確定かくていした有罪ゆうざい判決はんけつを最初さいしょに言い渡いいわたした裁判所さいばんしょで行おこなわれ、今回こんかいは裁判さいばん員いん制度せいどが始はじまる前まえの事件じけんのため裁判官さいばんかんだけで審理しんりにあたります。

検察けんさつが争あらそわなければ1回かいで審理しんりが終おわることもあり、無罪むざいが言い渡いいわたされ確定かくていしたら名誉めいよ回復かいふくのため官報かんぽうと新聞しんぶんに判決はんけつを掲載けいさいし、公おおやけに知しらせることになっています。

一方いっぽう、判決はんけつに不服ふふくがある場合ばあいは通常つうじょうの裁判さいばんと同様どうように控訴こうそや上告じょうこくをすることができます。

最高さいこう裁判所さいばんしょへの特別とくべつ抗告こうこく“断念だんねん”は過去かこに足利あしかが事件じけんなどでも

最高さいこう裁判所さいばんしょへの特別とくべつ抗告こうこくは、決定けっていに憲法けんぽう違反いはんや判例はんれい違反いはんがある場合ばあいに限かぎられていて、検察けんさつが再審さいしん開始かいし決定けっていに対にたいする特別とくべつ抗告こうこくを断念だんねんしたケースは過去かこにもあります。

1990年ねんに栃木とちぎ県けんで当時とうじ4歳さいの女の子おんなのこが殺害さつがいされたいわゆる「足利あしかが事件じけん」では、殺人さつじんなどの罪つみで無期むき懲役ちょうえきが確定かくていした菅家かんけ利和としかずさんが無実むじつを訴うったえて裁判さいばんのやり直やりなおしを求もとめ、2009年ねんに東京とうきょう高等こうとう裁判所さいばんしょが再審さいしんを認みとめる決定けっていをしました。

この事件じけんでは、DNAの再さい鑑定かんていの結果けっか、菅家かんけさんが犯人はんにんではない可能かのう性せいが高たかいという見解けんかいが示しめされ、再審さいしんを認みとめる決定けっていが出だされる前まえに、検察けんさつが刑けいの執行しっこうを停止ていしして菅家かんけさんを刑務所けいむしょから釈放しゃくほうする異例いれいの措置そちをとり、再審さいしん開始かいし決定けっていについても特別とくべつ抗告こうこくしませんでした。菅家かんけさんは、その後そのご再審さいしんで無罪むざい判決はんけつが言い渡いいわたされ、確定かくていしています。

また、1995年ねんに大阪おおさか東住吉ひがしすみよし区くの住宅じゅうたくで11歳さいの女の子おんなのこが死亡しぼうした火事かじでは、放火ほうかや殺人さつじんの罪つみで無期むき懲役ちょうえきが確定かくていした青木あおき惠子けいこさんたち2人にんが裁判さいばんのやり直やりなおしを求もとめ、2012年ねんに大阪おおさか地方ちほう裁判所さいばんしょが認みとめる決定けっていをしました。

検察けんさつは大阪おおさか高等こうとう裁判所さいばんしょに即時そくじ抗告こうこくしましたが、2015年ねんに退しりぞけられ、大阪おおさか高等こうとう検察庁けんさつちょうは「事実じじつ認定にんていには直ただちに承服しょうふくしがたい点てんがあるものの、憲法けんぽう違反いはんなどがあるとまでは言いえない」などとして特別とくべつ抗告こうこくを断念だんねんしました。

その後そのご開ひらかれたやり直やりなおしの裁判さいばんで、検察けんさつは有罪ゆうざいの主張しゅちょうや立証りっしょうをせず、無罪むざいが確定かくていしました。

死刑しけい確定かくていの事件じけんでの裁判さいばんやりなおしは過去かこ4件けんいずれも無罪むざいに

死刑しけいが確定かくていした事件じけんで初はじめて再審さいしんが認みとめられたのは1950年ねんに香川かがわ県けんで63歳さいの男性だんせいが殺害さつがいされ現金げんきんが奪うばわれた「財田川さいたがわ事件じけん」です。

その後そのごも、1948年ねんに熊本くまもと県けんで夫婦ふうふ2人にんが殺害さつがいされた「免田めんだ事件じけん」や1955年ねんに宮城みやぎ県けんで住宅じゅうたくが全焼ぜんしょうして一家いっか4人にんが遺体いたいで見みつかった「松山まつやま事件じけん」、1954年ねんに静岡しずおか県けんで当時とうじ6歳さいの女の子おんなのこが連れ去つれさられ殺害さつがいされた「島田しまだ事件じけん」で再審さいしんが開ひらかれ、これら4件けんの事件じけんは、裁判さいばんをやり直やりなおした結果けっか、いずれも無罪むざい判決はんけつが言い渡いいわたされました。