さらに、別の議員からは「TikTokはポケットの中のスパイだ。残念ながら、アメリカが求めているプライバシーの保護に対する保証は得られていない」という厳しい意見も出るなど、公聴会は、およそ5時間半にわたって開催されましたが、双方の主張の隔たりは埋まりませんでした。
このうち議員の1人は利用者のコメントの数などに合わせて関心のある動画を提示するTikTokのアルゴリズムについて「自傷行為や自殺などを子どもたちに推奨している」などと述べ、実際に投稿されたとされる過激な表現を含む動画を紹介しました。 チュウCEOはこの議員から「アルゴリズムに対する全責任はあなたにありますか」と繰り返し聞かれましたが、「こうした問題をとても深刻に受け止めている。とても悲しいことだ」と答えるにとどまりました。 また、別の議員はアルゴリズムが若者の長時間の利用につながっているとしたうえで「中毒性を和らげるための対策をとるとこの場で約束できますか」などと質問しました。 これに対し、チュウCEOは「特に10代の若者が安全にアプリを使えるようにしたい」と述べ18歳未満を対象に一日あたりの利用時間を60分に制限できる機能を導入したと説明しました。 しかし議員は、制限時間を超えても延長してアプリを利用し続けられる点を指摘し、チュウCEOは「懸念は理解している。我々の目的は10代の若者と親との間でSNSを利用する適切な時間について話し合いを持ってもらうことだ」などと応じました。
このうちアメリカでは、政府が連邦政府の職員に対して業務で使う端末でのTikTokの使用を禁止したほか、サウスダコタ州やユタ州など全米の半数以上の州政府で州から支給された端末でのアプリの使用を禁止しています。 中国政府に利用者の個人情報が流出しているのではないかという懸念がその理由です。 禁止の動きは教育現場にも広がり、テキサス大学オースティン校やアイダホ州立大学など少なくとも10以上の大学で大学のWi-Fiにつないだ状態でのアプリの使用の禁止に踏み切りました。 さらに、今月1日には、アメリカ議会下院の外交委員会がTikTokの国内での利用を禁止する法案を可決したうえ、15日にはアメリカ政府の外国投資委員会が親会社のバイトダンスに対しTikTokを運営する傘下企業の株式を中国以外の企業などに売却するよう要求。 会社が売却に応じなければ1億5000万人を超えるアメリカの利用者に影響が出る可能性もあります。 こうした動きは、欧米各国でも相次いでいて、EU=ヨーロッパ連合の執行機関、ヨーロッパ委員会や、カナダ政府、それにイギリス政府でも業務に使う端末でのTikTokの使用が禁止されました。
イギリスでは先週、政府がセキュリティー上の懸念を理由に職員が業務用端末でTikTokを使うことを禁止すると発表しています。 議会は今回の措置について、政府の決定を受けたものだとし「サイバーセキュリティーは最優先だ」とコメントしています。 また現地メディアは、議会内のネットワークに接続した場合、私用端末でもTikTokが使えなくなると伝えています。 TikTokはNHKの取材に「事実に基づいて判断され、他社と平等に扱われるよう求めたにもかかわらず、対応する機会が与えられなかったことに失望している」とコメントしています。
Z世代と呼ばれる若者の利用者が全体のおよそ3分の2を占めています。 TIkTokはなぜ若者に受け入れられているのか、主に3つの理由があるといわれています。 ▽1つ目は動画が短いこと。 最大で10分の長さの動画を作成することが可能ですが、その多くは10秒から1分程度の短いものばかりです。 短い動画を好む若い世代に広く受け入れられたとされています。 TikTokは、踊ったり、歌ったりといった動画が多いイメージがありますが最近では宇宙やエネルギー、AI=人工知能といった一見すると難しいテーマを、30秒から1分ほどの短い動画でわかりやすく説明する人も登場しています。 ▽2つ目は、複雑で高度なプログラムの計算方法、いわゆるアルゴリズムにあります。 ユーザーが動画を見てコメントを投稿したり、いいねボタンを押したりすると、AIが趣味やブランドの好みを把握し、1人1人の個性にあわせた動画を提示するようになります。 ▽3つ目は、新たな検索ツールとしての使い勝手の良さ。 動画で検索すると例えば地元でしか知られていないレストランなど画一的ではない、オリジナルな情報を見つけ出しやすいといわれており、若い世代に人気の理由となっています。
当初は好きな音楽に合わせて踊るダンス動画が中心でしたが、利用者が増えるにつれて英会話や料理のレシピなど動画のジャンルは広がってきました。 特に最近増えているのが、ビジネスの拡大に活用する企業です。 東京・新宿の飲食店では2022年春からこのアプリに店の従業員が出演する動画の投稿を始めました。 運営会社の社員が「居酒屋あるある」などのテーマで台本を作り、店の従業員が「新人店員」などの役柄を演じます。 店舗での撮影も営業時間の前に自分たちで行い、思わずくすっと笑ってしまう数十秒の動画を投稿しています。 動画に出演する20代のアルバイト店員は、「店に採用されて最初にした仕事がTikTokの撮影でした。最初は恥ずかしさもあったが動画を見て遠方から来店した客に声をかけられるとうれしい」と話していました。 この店では売り上げが2倍以上に伸びたほか、アルバイトの募集をかけたときには一度に500人が応募してきたということで、会社は効果を実感しています。 この店を運営するFTTの曽根浩伸代表は、「TikTokは立ち上げたばかりのアカウントが100万200万の再生数を獲得していたので可能性を感じた。グルメ媒体でなくSNSで飲食店を探す人が増えていることもあり、動画の投稿が来店につながっている」と話していました。
そのうえで、「TikTokは、アメリカのユーザーのデータをアメリカ企業であるオラクルのサーバーに移すなど安全対策を講じているものの、TikTokが中国企業の傘下から出ない限りアメリカの反対派が満足することはないだろう」と指摘しました。 一方、中国は、AI=人工知能などの技術を海外に移転させることを制限するルールを設けていて、ユーザーの動画の好みの分析などにAIを活用しているTikTokをアメリカ企業に売却することは困難だとみられています。 TikTokは、アメリカの法律を守りながら中国政府のルールにも従わなければならず、いわば板挟みの状態になっています。
そのうえでTikTokについては「中国政府が『国家情報法』に基づいて仮にデータの提供をTikTokに要請した場合、位置情報や電話番号が中国政府に提供される可能性がある」と述べました。 そして、「政府関係者などは情報が流出するリスクを考えて利用を避けるべきだ」と述べる一方、「個人的な情報を使って危害を加えることは考えにくく、一般の人がTikTokを使うことに大きな問題はない」と述べたうえで、日本としては強硬な姿勢を見せるアメリカの動きに追随するのでなく、個人のITリテラシーを高めて利用するかどうかを個人で判断できるようにするべきだという考えを示しました。
10代の若者への影響についても質問相次ぐ
世界で広がる禁止の包囲網
イギリス議会も業務用端末での利用禁止
TIkTok 若者に受け入れられる3つの理由
ビジネスの拡大に活用する企業も増加
米専門家「大統領選控える米政治家 中国への強硬姿勢示したい」
情報セキュリティ専門家「一般の人が使うこと大きな問題ない」
アメリカ議会下院の委員会は23日、公聴会を開き、TikTokのチュウCEOが利用者のデータの取り扱いなどについて初めて証言しました。
この中で、議員から「中国政府がすでにアメリカの利用者のデータにアクセスしているのにどのように安全性を確保するのか」などと問われたのに対し、チュウCEOはまず「中国政府がアメリカの利用者のデータにアクセスしたなどという証拠はない」と否定しました。
そのうえで「アメリカの利用者のデータは、アメリカ国内でアメリカの会社が管理することを約束する」として、対応策を強化すると強調しました。
一方、公聴会では、去年アメリカの経済誌フォーブスの記者などの位置情報をTikTokの親会社の社員が不正に入手しようとしていた問題にも触れられ、同じことがアメリカの一般の利用者に行われないという保証がどこにあるのかなどとチュウCEOが詰め寄られる場面もありました。
公聴会では、TikTokが10代の若者に与える影響についても質問が相次ぎました。
TikTokをめぐっては、欧米を中心に世界で禁止の包囲網が広がっています。
イギリス議会は23日、中国企業が運営する動画投稿アプリ、「TikTok」について、議会が管理している業務用端末での利用を禁止すると発表しました。
アメリカだけでこれまでに2億1000万回以上アプリがダウンロードされたといわれるTikTok。
TikTokが日本でサービスの提供を始めたのは2017年。
テクノロジー分野の国際的な規制に詳しい、ジョージタウン大学のアヌパム・チャンダー教授は、アメリカ政府がTikTokへの規制を強めていることについて、「アメリカは来年2024年に大統領選挙を控えているため、政治家たちの中には中国に対して強硬だという姿勢を示しておきたいという思惑がある」などと述べ、このタイミングでの規制強化には政治的な背景があるという見方を示しました。
情報セキュリティに詳しい神戸大学大学院の森井昌克教授は一般的に多くのSNSは位置情報から長期間の行動履歴をたどれば、自宅の住所や訪問先、よく会う人物などを特定される可能性があると指摘しました。
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