オミクロン株によって、都市部だけでなく、これまでの感染の波では大きな拡大になっていなかった地域も含めて全国各地での急激な拡大となっています。
新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合は2022年1月13日、オミクロン株への置き換わりによって都市部だけでなく各地で「これまでに経験したことのない速さで新規感染者数が増加している」と指摘しました。
日本国内では、2021年11月28日に入国した人から検疫所で検出されたのが初めてのケースで、初めて市中感染が報告されたのは2021年12月22日でした。 検疫所での検出から1か月余り、市中感染の報告から半月ほどで、ほとんどを占めるに至っています。 イギリスやアメリカでは、年末・年始の段階で、初めての感染確認から1か月ほどでオミクロン株にほぼ置き換わったことが報告されていました。 いま、およそ半月遅れで日本で同じことが起きていると言えます。
国立感染症研究所の暫定報告によりますと、オミクロン株に感染し発症した113人について分析した結果、平均的な潜伏期間は3日余りでした。 ウイルスにさらされた翌日までに発症したのは9%弱、2日後までが30%余り、3日後までが53%余りと、半数が3日後までに発症していました。 そして、6日後までにはおよそ90%が発症し、9日後までだと98%を超える人が発症していました。 感染から発症までのスパンがこれまでの新型コロナウイルスよりも短いために、感染が速く広がりやすくなっているとみられています。
飛まつや「マイクロ飛まつ」と呼ばれる密閉された室内を漂う小さな飛まつが主で、ウイルスがついた手で鼻や口などを触ることによる接触感染もあります。 国立感染症研究所が1月13日に出したオミクロン株に感染したケースの疫学調査の結果では、オミクロン株でも飲食店での職場同僚との忘年会や自宅での親族との会食など飲食を通じた感染が見られていて、飛まつ感染が多くなっています。 職場での密な環境での作業を通じて感染するケースも報告されています。
マスクをとった会話や飲食の場面で感染するリスクが高く、厚生労働省の専門家会合は、ワクチン接種者も含めマスクの正しい着用、手指衛生、換気などの徹底を継続することが必要で「1つの密でもできるだけ避けたほうがよい」としています。
WHOは1月11日の週報で、オミクロン株による入院と重症化のリスクは「下がっていると見られる」とまとめました。 オミクロン株の症状について、鼻やのどといった上気道の炎症を引き起こしやすいものの、ほかの変異ウイルスと比べて肺まで達して重症化するリスクは低いという見解がWHOなどから示されています。 イギリスの保健当局によりますと、オミクロン株に感染して入院に至るリスクはデルタ株の場合に比べて3分の1になっているとしています。 ただ、イギリスでは3回目の追加接種を受けた人が2022年1月17日の時点で63.6%に上っていて、1月19日時点で1.3%にとどまっている日本とは状況が異なるため注意が必要です。 オミクロン株による重症化リスクについて、国内では沖縄県での初期段階のデータが示されています。 1月4日の時点で無症状や軽症は92.3%、肺炎がみられる中等症1が4.0%、酸素投与が必要な中等症2が3.7%、人工呼吸器が必要な重症は0%でした。 ただ専門家は、現時点で沖縄でのオミクロン株の感染者は若者が圧倒的に多く、今後高齢者にも感染が広がった場合、重症者数が増える可能性があるとしています。 沖縄県では60代以上の高齢者の割合が1月18日の時点でおよそ15%と、ここ数日で徐々に上昇してきています。 病床の使用率は日に日に上がってきていて、1月19日時点で沖縄県では60.5%、大阪府では31.3%、東京都では25.9%などとなっています。 WHOは入院に至るリスクが下がっているにもかかわらず感染者数が非常に多いことから、入院や重症化、死亡例は大きく増加していて、医療体制に大きな負荷がかかっているとしています。 国内では亡くなる人の数は少ない状態が続いていますが、日本より早くオミクロン株の感染が拡大した海外では死者数も増加しています。 イギリスでは1月18日までの1週間での新規感染者数はおよそ67万4000人と、前の1週間と比べておよそ40%減少しピークアウトしたようにも見えますが、同じ直近1週間の死者の数は1900人余りとおよそ15%増加し増加傾向が続いています。 日本でも感染が広がり続けると、重症患者や死者の数が増えるおそれがあります。
国内では、厚生労働省のウェブサイトによりますと、1月11日までの1週間での10歳未満の新規感染者数は2238人でした。 1月4日までの1週間では353人、2021年12月28日までの1週間では149人で、年明けに急増しています。 アメリカでも1月13日までの1週間で子どもの新規感染者数は98万1000人と、前の週の1.69倍となり過去最多となっています。 アメリカ小児科学会は、子どもが症状が重くなり入院に至る率は0.1から1.5%、死亡率は0から0.02%と報告しています。 また、特にワクチン接種の対象年齢に達していない4歳以下の子どもの入院率が上昇していて、CDC=疾病対策センターによりますと、この年代で1月1日までの入院率が人口10万当たり4.3人と、その前の週の2.6人から大きく増えています。 イギリスでも子どもの入院が増えています。 保健当局の資料によると2021年12月下旬には0歳から17歳までの入院患者数は40人程度でしたが、2週間後の1月上旬には3倍のおよそ120人にまで増加しました。
WHOの週報では家庭内での「2次感染率」はデルタ株の21%に対し、オミクロン株は31%だったとする2021年12月のデンマークでの分析結果を紹介しています。 アメリカのCDC=疾病対策センターは、オミクロン株の感染力は最大でデルタ株の3倍とするデータがあるとしています。
『ベータ株』→入院のリスク・入院時の死亡率高い可能性 『ガンマ株』→入院・重症化のリスク高い可能性 『デルタ株』→入院のリスク高い可能性 『オミクロン株』→入院・重症化リスク低い オミクロン株では入院に至るリスクや重症化リスクがデルタ株に比べて低いという報告が相次いでいます。 一方でイギリスの保健当局は、オミクロン株は重症化リスクが低いといっても感染拡大のスピードの速さや免疫から逃れる性質があるため、必ずしも医療機関への負荷が減ることを意味しないと強調しています。
『ベータ株』→ウイルスを抑える抗体の働きは減る、ウイルスを攻撃する細胞の働きは維持 『ガンマ株』→ウイルスを抑える抗体の働きはやや減る 『デルタ株』→ウイルスを抑える抗体の働きは減る 『オミクロン株』→再感染のリスク上がる WHOでは、ワクチンや過去の感染によって免疫を持つ人でも再感染しやすくなる変異があるとしています。 イギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドンは、オミクロン株の再感染のリスクはデルタ株に比べて5.41倍と高くなっているとする報告を出しています。
『ベータ株』→発症予防・重症化予防ともに変わらず 『ガンマ株』→感染予防・発症予防・重症化予防ともに変わらず 『デルタ株』→感染予防・発症予防・重症化予防ともに変わらず(感染予防・発症予防は下がるという報告も) 『オミクロン株』→発症予防効果低下・重症化予防効果はあるという報告も 3回目接種で発症予防効果・重症化予防効果も上がる報告も オミクロン株は2回のワクチン接種を完了した人でも感染するケースが報告されています。 発症予防効果は接種から時間を経るごとに下がるものの、重症化を予防する効果は一定程度保たれるというデータが出てきています。
イギリスの保健当局が示したデータでは、オミクロン株に対しては、ファイザーやモデルナのmRNAワクチンで2回の接種から2週間から4週間後には発症を防ぐ効果が65~70%でしたが、20週を超えると10%程度に下がっていました。 ファイザーのワクチンを2回接種した人が3回目にファイザーかモデルナの追加接種をすると、2週間から4週間後には発症を防ぐ効果は65%~75%に上がりました。 ただ、5週間から9週間後では55~70%に、10週を超えると40~50%に下がりました。
ファイザーやモデルナ、それにアストラゼネカのワクチンを接種した人で分析すると、入院に至るのを防ぐ効果は2回の接種後2週間から24週間では72%、25週を超えても52%、3回目の追加接種をしたあと2週以降だと88%となっていました。
厚生労働省はオミクロン株に感染した患者には、投与を推奨しないとしています。 一方で、ウイルスの増殖を防ぐ仕組みの飲み薬には影響が出ないのではないかと考えられています。
またWHOは、重症患者に使われる免疫の過剰反応を防ぐ薬やステロイド剤は引き続き効果が期待されるとしています。
「子どもでも、どの子が感染して重症化するか事前に特定はできず、ワクチンを接種して備えるのは大切なことだ。オミクロン株は上気道、鼻やのどで増えると言われていて、子どもはたんを出しにくかったり気道が小さかったりして、激しくせきこんだり呼吸困難になったりすることも考えられる。塾や学童保育、お稽古事など、不特定多数が密に集まる場面での感染事例は実際に起きている。感染して隔離されると子どもにとって大きな負担なので、接種のメリットはある」と話しています。
ただ、感染力が強いため、密にならないようにしてマスクを外すときにはより注意した方がよさそうです。 とくに飲食の場面の対策が重要です。 厚生労働省の専門家会合も、ワクチン接種の推進に加えて、特に会話時などでのマスクの着用、消毒や手洗い、換気や密を避けるといった基本的な対策を続けるよう呼びかけています。
潜伏期間短く感染広がるサイクルが短い
飲食などで感染
重症化リスク↓も 病床使用率↑に
子どもの感染拡大 各国で懸念
これまでの変異ウイルスとの比較
▼感染力
▼病原性
▼再感染のリスク
▼ワクチンの効果(ファイザー・モデルナのmRNAワクチン)
▼治療薬の効果
専門家は
対策は変わらない