このなかで岩根社長は会長や社長などの経営幹部や社員、合わせて20人が、去年までの7年間にわたって3億2000万円相当にのぼる金品を受け取っていたことを明らかにしました。
金品を渡していたのは関西電力の原子力発電所がある福井県高浜町の森山栄治元助役でした。岩根社長は森山元助役について、「地元の有力者で、さまざまにお世話になっている。金品の返還を申し出たが、厳しい態度で拒まれた。関係悪化をおそれ、返せなかった」と述べるとともにこれらの金品は一時的に受け取ったものだったと釈明しました。
こうした金品の受領は金沢国税局の税務調査で指摘され、すでに一部もしくは全部を返還し所得税の修正申告をしたということです。
岩根社長は「関係者や社会の皆様に多大な心配をおかけし、深くおわび申し上げます」と陳謝しました。
森山元助役はすでに亡くなっていますが、関係者によりますと原発関連の工事を請け負う地元の建設会社から受注に絡む手数料を受け取り、この一部を関電の経営幹部に渡していたことが税務調査で判明したということです。
岩根社長は今回の問題を受けて「私も含め、報酬の返上を行った」と述べすでに社内処分を行ったとしましたが、処分内容の詳細については「差し控える」として説明しませんでした。
地元自治体の元助役から不透明な金品が原発を運転する電力会社の経営幹部にわたっていたことには批判の声があがりそうです。
森山元助役 退職後も地元行政と関わり続ける
高浜町によりますと、森山栄治元助役は京都府の綾部市役所を退職後、昭和44年12月に高浜町役場に入庁しました。その後、当時の総括課長や収入役などを歴任し、昭和52年4月から退職する昭和62年5月までの10年間、助役を務めました。
退職後も町の都市計画審議会で委員を務めるなど、地元の行政と関わり続け、ことし3月、90歳で亡くなりました。葬儀には役場のOBなど、多くの地元の人たちが参列したということです。
助役だったころの森山氏を知る、高浜町の岡本恭典副町長によりますと、森山氏は周囲からの信頼が厚く、当時の町の幹部から、仕事を任せられていたということです。収入役を務めた経験から、原発関連の財政にも詳しく、当時は役場の若手職員に対し、「原発の財源は有限なので、住民の要望に何でも応じるのではなく、できないこととできることをはっきりと住民に示さなければならない」と話していたということです。
高浜副町長「森山元助役は信頼厚く 地域振興に熱心」
森山元助役が昭和62年まで勤務していた、福井県高浜町の岡本恭典副町長は「退職されてからのことで、報道を知って、ただただ驚いた、としか言いようがない。元助役は周りからの信頼が厚く、地域振興に熱心な人で、事業をやり遂げることが住民のためになるのだ、という行政マンとしての心得を、一から教えてもらった」と話しています。
また、「当時は原発を誘致して、財政が豊かになってきた頃だったが、元助役からは、財源は有限なので住民の要望に何でも応じてしまうと住民が行政頼みになってしまう。できることとできないことははっきりと住民に示さなければいけないと言われた」と話していました。
地元県議「原発誘致のころからいろいろな関わりあった」
福井県高浜町がある大飯郡を選挙区とする、福井県議会の田中宏典議員は森山栄治元助役について「原発を誘致するころから、いろいろな関わりがあった人だ」と述べました。
田中議員は高浜町の元職員で、森山元助役と同じ時期に町役場で仕事をしていたということです。田中議員は「報道を見て驚いている。事実関係は分からないが、真面目で厳しい人だったのでもし事実であればとても遺憾だ」と話しました。
森山元助役については「原発を誘致するころから、いろいろな関わりがあった人で、行政職員として、原子力政策に貢献してきた。今ほど原発に対する風当たりが厳しい時代ではなかったが、立地をめぐって住民からの要望も多く苦労したと思う。真面目な人という印象で、今回、報道されているような話は聞いたことがなく、引退後も影響力があったという話についても分からない」と述べました。
さらに「原発は必要だと考えているが、こうしたお金の問題に終始してしまうのは大変残念で、原子力政策を再点検して、これからも対応していきたい」と話していました。
共産 町議「昔から原発にまつわる疑惑あった」
元助役を知る高浜町議会の日本共産党の渡邊孝町議は「森山元助役の周りでは昔から原発にまつわる疑惑があったが、そうした黒い部分の一端が初めて明らかになった。本人が亡くなったのでどこまで追及できるかわからないが、できるだけの真実を今、明らかにしてほしい」と話しました。
また「行政と電力事業者がなれ合っていては原発の安全は保たれないので、しっかりと距離を置いた好ましい緊張関係を絶えず保つ必要がある」と話していました。
高浜原発 テロ対策の工事中
関西電力の高浜原子力発電所は、福井県内で最も西に位置する高浜町にあり、内浦半島の付け根に1号機から4号機までの4基が設置されています。
敷地面積はおよそ233万平方メートルと関西電力の原発の中では最も広く、営業運転の開始は最も古い1号機で昭和49年11月、最も新しい4号機で昭和60年6月です。
8年前に起きた東京電力福島第一原発の事故のあと、4基とも長期間、運転を停止しましたが、このうち3号機が平成28年1月に4号機が翌月2月に再稼働しています。
また1号機と2号機は運転開始から40年を超える稼働に向けて、現在安全対策工事が行われていて、工事の完了後に地元の同意が得られれば、再稼働する計画です。
現在、高浜原発ではテロによる航空機の衝突などを想定して、予備の制御室や電源などを備えた「特定重大事故等対処施設」の建設工事が進められています。
この施設は再稼働に必要な原発本体の工事計画の認可から5年以内に設置することが義務づけられていて、期限までに設置できないと原発が運転できなくなります。
関西電力によりますと、高浜原発では3号機と4号機が来年8月と10月の期限からそれぞれおよそ1年、1・2号機が再来年6月の期限からおよそ2年半、施設の完成が遅れる見通しだということです。
経団連会長「詳細わからず コメントしようがない」
関西電力の会長や社長など合わせて20人が関西電力の原子力発電所がある福井県高浜町の元助役から多額の金品を受け取っていたことについて、経団連の中西会長は、27日の記者会見で「詳細が全然わからないので、コメントしようがない」と述べました。
そのうえで「私はメーカー出身なので、自治体の首長の方とよく話をするが、その際には、ウエットな関係は何もない。電力会社は地域に根を張るので、自治体と一体で、いろいろなことをしなければならないんだろうなと想像できるが、今回に関して、どういう背景があったのか、全く情報を持っていない」と述べました。