バケツで核かく燃料ねんりょうの原料げんりょうを混ぜ合まぜあわせるなどの違法いほうな作業さぎょうが行おこなわれ、核かく分裂ぶんれつが連続れんぞくして起おきる「臨界りんかい」が発生はっせい、男性だんせい作業さぎょう員いん３さん人にんが大量たいりょうに放射線ほうしゃせんを浴あびて２に人にんが亡なくなりました。

会社かいしゃは核かく燃料ねんりょう加工かこうの事業じぎょう許可きょかを取り消とりけされ、安全あんぜん管理かんりを問とわれた当時とうじの会社かいしゃ幹部かんぶと社員しゃいん合あわせて６ろく人にんに、執行しっこう猶予ゆうよのついた有罪ゆうざい判決はんけつが言い渡いいわたされました。

事故じこは原子力げんしりょく防災ぼうさい体制たいせいの不備ふびも明あきらかにしました。

国くにと自治体じちたい、事業じぎょう者しゃの連携れんけいがうまくいかず、臨界りんかいの収束しゅうそくに１いち日にちかかったほか、避難ひなんの判断はんだんや指示しじを誰だれが行おこなうかなどでも混乱こんらんがありました。

国くには事故じこ後ご特別とくべつ措置そち法ほうを作つくって国くにが主導しゅどうして対応たいおうをとることを定さだめたほか、全国ぜんこくに「オフサイトセンター」と呼よばれる防災ぼうさい拠点きょてんを作つくるなど原子力げんしりょく防災ぼうさい体制たいせいを見直みなおしました。

一方いっぽう、20年ねんの間まに東海とうかい村むら役場やくばでは、事故じこを経験けいけんした職員しょくいんが３さん割わり以下いかになったほか、当時とうじを知しる住民じゅうみんも減へっています。

東海とうかい村むらの山田やまだ修おさむ村長そんちょうは「トラブルや事故じこは今いまもあり、語り継かたりつぐことが村むらの使命しめいだ」と話はなすなど、臨界りんかい事故じこの経験けいけんと教訓きょうくんをどう伝つたえていくか課題かだいとなっています。

有罪ゆうざい判決はんけつ受うけた男性だんせい「業界ぎょうかい全体ぜんたいの意識いしき 上うえから下したまで薄うすい」

臨界りんかい事故じこについて、会社かいしゃ幹部かんぶや社員しゃいんの責任せきにんを問とう裁判さいばんで有罪ゆうざい判決はんけつを受うけた６ろく人にんのうちの１いち人にんが、20年ねんになるのを受うけてＮＨＫえぬえいちけいの取材しゅざいに応おうじ、原子力げんしりょく業界ぎょうかいの安全あんぜん意識いしきについて「上うえから下したまで意識いしきが薄うすい。個人こじんの意識いしきが高たかくならないといけない」と危機きき感かんを示しめしました。

「ジェー・シー・オー」の臨界りんかい事故じこをめぐっては、当時とうじの会社かいしゃ幹部かんぶと社員しゃいん合あわせて６ろく人にんが業務ぎょうむ上じょう過失かしつ致死ちしなどの罪つみに問とわれ、執行しっこう猶予ゆうよ付つきの有罪ゆうざい判決はんけつを受うけました。

事故じこから20年ねんになるのを受うけて、このうちの１いち人にんの男性だんせいがＮＨＫえぬえいちけいの取材しゅざいに応おうじました。

20年ねんという月日つきひについて尋たずねると、男性だんせいは「20年ねんになったからといって、自分じぶんの中なかで大おおきな変化へんかはなく、遺族いぞくのことがずっと頭あたまから離はなれなかった。子こどももいたし、いつも残念ざんねんに思おもっている」と、死亡しぼうした２に人にんの作業さぎょう員いんへの思おもいを話はなしました。

また、事故じこに至いたる経緯けいいについて「ウランや原発げんぱつの構造こうぞうなどについて広ひろく教育きょういくはしていた」とした一方いっぽうで、「上うえからの教育きょういくが現場げんばに届とどいていなかった。事故じこがあってようやく、足たりていなかったことに気付きづいた」と、教育きょういくが不十分ふじゅうぶんだった反省はんせいを口くちにしました。

そして、その後そのごも福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつ事故じこや、事業じぎょう所しょでのトラブルなどが相次あいついでいることについて「原子力げんしりょく業界ぎょうかい全体ぜんたいの意識いしきが上うえから下したまで薄うすい。個人こじん個人こじんの意識いしきが高たかくならないといけない」と原子力げんしりょくに携たずさわる関係かんけい者しゃの安全あんぜん意識いしきについて危機きき感かんを示しめしました。

臨界りんかい事故じことは

臨界りんかい事故じこは、茨城いばらき県けん東海とうかい村むらにある核かく燃料ねんりょう加工かこう会社かいしゃ「ジェー・シー・オー」の東海とうかい事業じぎょう所しょで平成へいせい11年ねん９月くがつ30日にちの午前ごぜん10時じ35分ふんごろ起おきました。

「臨界りんかい」とは核かく分裂ぶんれつ反応はんのうが連続れんぞくして起おき、大量たいりょうの放射線ほうしゃせんが放出ほうしゅつされる現象げんしょうです。

沈殿ちんでん槽そうと呼よばれるタンクの中なかで大量たいりょうの核かく分裂ぶんれつ反応はんのうが起おき、臨界りんかいは約やく20時間じかん続つづきました。

この時とき、作業さぎょうをしていた３さん人にんの男性だんせい作業さぎょう員いんが大量たいりょうの放射線ほうしゃせんを浴あび、このうち、最大さいだい20シーベルトの被ひばくをした作業さぎょう員いんは12月つきに亡なくなり、最大さいだい10シーベルトの被ひばくをしたもう１いち人にんの作業さぎょう員いんは翌年よくねんの４月しがつに亡なくなりました。

事故じこの影響えいきょうは住民じゅうみんにも及および、国内こくないでは初はじめて原子力げんしりょく事故じこに伴ともなった避難ひなんと屋内おくない退避たいひが行おこなわれました。

事故じこ発生はっせいから４よん時間じかん半はん後ご、臨界りんかいの収束しゅうそくが見みえない中なか、東海とうかい村むらは加工かこう会社かいしゃから350メートル圏内けんないの住民じゅうみんに避難ひなんを要請ようせいしました。

さらに半日はんにち後ごには、今度こんどは茨城いばらき県けんが10キロ圏内けんないの住民じゅうみんに屋内おくない退避たいひを勧告かんこくし、影響えいきょうは広範囲こうはんいに及およびました。

臨界りんかいが続つづく中なか、被ひばくした人ひとが多数たすう出でました。

臨界りんかいを収束しゅうそくさせるためタンクに接近せっきんした専門せんもん家かなどによるチームのメンバーや加工かこう会社かいしゃの社員しゃいん、そして周辺しゅうへんに住すむ住民じゅうみんです。

その人数にんずうは科学かがく技術ぎじゅつ庁ちょうが１いち年ねん後ごにまとめた調査ちょうさで660人にん余あまりと推定すいていされています。

この中なかには一般いっぱん人じんが一いち年間ねんかんに浴あびても差し支さしつかえないとされている被ひばく量りょう１いちミリシーベルトを超こえていた人ひとも複数ふくすういましたが、亡なくなった作業さぎょう員いんが、タンクのそばで浴あびたような急性きゅうせい障害しょうがいが出でる量りょうに比くらべると大おおきく下回したまわり、科学かがく技術ぎじゅつ庁ちょう（当時とうじ）は、健康けんこうに影響えいきょうを及およぼす可能かのう性せいは極きわめて低ひくいと結論けつろんづけています。

当時とうじ、国内こくない最悪さいあくと言いわれた臨界りんかい事故じこは原子力げんしりょく事故じこの深刻しんこくさを表あらわす国際こくさい的てきな評価ひょうか基準きじゅんで、８はち段階だんかいのうち上うえから４よん番目ばんめの「レベル４よん」とされました。

事故じこを起おこした核かく燃料ねんりょう加工かこう会社かいしゃは当時とうじ、国際こくさい競争きょうそうの激化げきかで業績ぎょうせきが伸び悩のびなやんでいたと言いわれています。

こうした中なか、作業さぎょうを効率こうりつ化かしようとバケツで核かく燃料ねんりょうの原料げんりょうのウランと硝酸しょうさんを混ぜ合まぜあわせるなどの違法いほうな作業さぎょうを恒常こうじょう的てきに行いっていたのです。

当時とうじの国くにの原子力げんしりょく安全あんぜん委員いいん会かいは、報告ほうこく書しょの中なかで、危機きき意識いしきの欠如けつじょ・風化ふうかがあったとしています。

事故じこの４よん年ねん後ごには、水戸みと地方ちほう裁判所さいばんしょが、業務ぎょうむ上じょう過失かしつ致死ちしなどの罪つみに問とわれた当時とうじの会社かいしゃ幹部かんぶと社員しゃいん合あわせて６ろく人にんに執行しっこう猶予ゆうよの付ついた有罪ゆうざい判決はんけつを言い渡いいわたしています。

この時とき、水戸みと地裁ちさいの裁判さいばん長ちょうは「バケツでウラン溶液ようえきを扱あつかうなどの違法いほうな作業さぎょうが続つづけられ、臨界りんかい事故じこの危険きけん性せいを従業じゅうぎょう員いんに知しらせる教育きょういくもほとんど行おこなわれてこなかった。こうした長年ながねんにわたる会社かいしゃのずさんな安全あんぜん管理かんりが臨界りんかい事故じこを引き起ひきおこして住民じゅうみんに多おおくの被ひばく者しゃを出だし、原子力げんしりょくの安全あんぜん性せいに対にたいする国民こくみんの信頼しんらいを大おおきく損そこなった」と述のべました。

臨界りんかい事故じこから見みえた体制たいせいの不備ふび

一方いっぽう、事業じぎょう者しゃだけでなく、違法いほうな作業さぎょうを見抜みぬけなかった当時とうじの国くにと規制きせい当局とうきょくのチェックの在り方ありかたも問題もんだいとなりました。

国内こくないで初はじめて原子力げんしりょく事故じこによる死者ししゃを出だし、広域こういきな住民じゅうみんの避難ひなんや屋内おくない退避たいひも迫せまられた臨界りんかい事故じこは、原子力げんしりょく防災ぼうさいの体制たいせいの不備ふびも浮かび上うかびあがらせました。

加工かこう会社かいしゃと自治体じちたい、そして国くにの間まで情報じょうほうの共有きょうゆうがうまくいかず、臨界りんかいの収束しゅうそくに手間取てまどるなどしたほか、誰だれが住民じゅうみんの避難ひなんや退避たいひを判断はんだんし、どの範囲はんいで行おこなうか、ルールが明確めいかく化かされておらず、混乱こんらんを助長じょちょうしたことなどの不備ふびが指摘してきされました。

このため事故じこ後ご、原子力げんしりょく災害さいがい対策たいさく特別とくべつ措置そち法ほうが作つくられ、国くにが中心ちゅうしんになって対応たいおうに当あたることが定さだめられました。

また、放射線ほうしゃせんや放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつによる広範こうはんな影響えいきょうを想定そうていすることになり、原子力げんしりょく施設しせつから原則げんそく半径はんけい10キロ圏けんを防災ぼうさい対策たいさくを取とるエリアとしました。

さらに情報じょうほうの集約しゅうやくと関係かんけい機関きかんの連携れんけいを強化きょうかするため、全国ぜんこく各地かくちにオフサイトセンターと呼よばれる防災ぼうさい拠点きょてんを整備せいびしました。

そして、事故じこの２に年ねん後ごには、省庁しょうちょうの再編さいへんに伴ともない、新あらたに原子力げんしりょく安全あんぜん・保安ほあん院いんが設置せっちされたのです。

福島ふくしまで教訓きょうくん生いきず

このように臨界りんかい事故じこを教訓きょうくんに大幅おおはばに見直みなおされた日本にっぽんの原子力げんしりょく防災ぼうさいですが、８はち年ねん前まえに起おきた東京とうきょう電力でんりょく福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつの事故じこで実効じっこう性せいが問とわれることになりました。

オフサイトセンターは、建物たてものの防護ぼうご対策たいさくが不十分ふじゅうぶんで放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつが室内しつないに入り込はいりこみ、早々そうそうに利用りようが中止ちゅうしされるなどして、防災ぼうさい拠点きょてんとしての役割やくわりを果はたせませんでした。

さらに原発げんぱつの津波つなみ対策たいさくをはじめ、安全あんぜん規制きせいについて原子力げんしりょく安全あんぜん・保安ほあん院いんの不備ふびも指摘してきされ、新あたらしく原子力げんしりょく規制きせい委員いいん会かいが立ち上たちあがり、規制きせい基準きじゅんも作り替つくりかえられました。