こうした中、週末には台風19号が接近するおそれがあり、住民からは被害の拡大を懸念する声があがっています。先月9日の未明、千葉県市原市では、台風15号による強風の影響でゴルフ練習場の金属製のポールが倒れ、20代の女性がけがをしたほか、住宅22棟で屋根が壊れるなどの被害が出ました。
9日で倒壊から1か月がたちましたが、いまだに撤去作業は始まっていません。撤去を巡っては先月下旬、ゴルフ練習場側から依頼を受けた解体業者が、住民向けの説明会を開きましたが、撤去作業を進めるうえでの条件などに納得していない住民もいて、作業を始める上で必要なすべての住民の同意が得られていません。
また、ゴルフ練習場側は住民に対して「倒壊は災害によるもので法的な補償はしない」という趣旨の説明をしていて、住民がゴルフ練習場側からの補償を受けられるか不透明な状況が続いています。
撤去作業が進まないなかで今週末には台風19号が接近するおそれがあり、住民からはさらなる被害の拡大を懸念する声があがっています。
「台風19号で被害広がるかも…」住民たちの今
ポールの撤去が一向に進まない中、被害を受けた住民は1か月がたった今も不自由な生活を強いられています。
このうち坂本高志さん(53)の住宅にはポールが直撃し、当時、2階にいた20歳の次女がけがをしました。大きな被害を受けた自宅には住み続けることができず、現在は、家族4人で市原市から提供された住宅に避難しています。坂本さんによりますと、時間がたつにつれて住宅の壁がたわむなどポールの重みによるとみられる被害が拡大しているということです。
坂本さんは「次女のけがは完治しておらず、二度とポールを見たくないと話しています。私は家の被害の状況を確認したり、自分でできる応急処置をしたりするために連日、自宅に戻っていますが、被害が拡大していると感じています。補償の問題は避けられないと思うが、被災者の心のケアもしっかりやってほしい」と話していました。
また、松山高宏さん(55)の住宅では倒壊したポールで屋根の一部が壊れる被害が出ました。この影響で雨漏りが起きていて、屋根裏にたらいを置くなどして対応しています。松山さんの家族は市が用意した住宅に避難していますが、自身は雨漏りの対応や空き巣の被害を防ぐために自宅にとどまっています。しかし、台風19号の接近でさらにポールが倒れてくる不安もあることから、松山さんも避難を検討しているということです。
松山さんは「補償の話がまとまらないと撤去に必要な住民の同意も得られないと思う。ゴルフ練習場側には住民が納得できるような対応をしてもらいたい。台風19号による雨風で被害が広がるのが心配です」と話していました。
また、湯浅健吾さんの自宅ではポールが直撃して2階部分が激しく壊れました。ポールは住宅にのしかかったままで時間の経過とともに住宅の被害は1階部分にまで広がっているといいます。現在、湯浅さんは市内の住宅で妻と生後4か月の息子と避難生活を送っていて、元の生活に戻れる見通しは立たない状態です。
自宅の片付けに来た健吾さんの父親の湯浅泰一さん(65)は「1か月たって、家の中では鼻にツンとくるようなカビの臭いがしました。1階の天井板が下に落ちて、カビで真っ黒になっていました。今度の台風で風が強いと、家の壁が落ちて、車に当たるかもしれないので、台風が来る前に車を移動しようと思っています」と話していました。