相手のブシャール選手は、ここまで圧倒的な強さで決勝まで勝ち上がってきました。
試合は序盤から互いに積極的に技を仕掛ける展開となりましたが、4分間で勝負は決まらず、延長戦に入りました。
延長戦でも阿部選手は攻撃の手をゆるめず、延長4分半ごろに抑え込みで一本勝ちし、金メダルを獲得しました。
阿部選手はオリンピック初出場で金メダルを獲得しました。
この階級での日本選手の金メダル獲得は初めてです。
この後に兄の一二三選手が決勝を控えていることに触れ「兄の試合が今からのなので気は抜けませんがしっかり応援したいです」とエールを送っていました。
阿部詩選手の柔道人生は、兄、阿部一二三選手の背中を追いかけるようにして5歳から始まりました。 「兄とは逆で、初めての試合でもメダルをもらったり、男の子に勝ったりした。でも優勝はなくて自分では悩んだ」と振り返っています。 周囲が小学生のころから一目置くセンスと、兄に追いつき、追い越せという負けず嫌いな性格で実力を伸ばしていった詩選手。 東京オリンピックの招致が決まった2013年、当時、まだ中学1年生だった詩選手は「2020年は20歳。東京オリンピックに出て優勝したい」と、すでに明確な目標になっていたと言います。 2017年、一二三選手が20歳で世界選手権を制すと、2018年には詩選手が18歳で初優勝。 2連覇を果たした一二三選手と共に世界選手権で初めて”きょうだい”同時に優勝を成し遂げました。 おととしの世界選手権では、リオデジャネイロオリンピック金メダリスト、コソボのマリンダ・ケルメンディ選手など組み手が力強い選手への対策を徹底し、準決勝でそのケルメンディ選手を破って大会連覇を果たしました。 兄と同じく両袖を持って相手を豪華に投げる袖釣り込み腰や内股などの投げ技に加えて寝技も継続的に強化。さらにオリンピックが延期となったこの1年は、足技で崩すパターンも強化してきました。 根底にあるのは「怪物になりたい」という目標です。 「絶対的な強さを手に入れることがそう呼ばれる第一歩」と話し、世界チャンピオンになってからも常に究極の強さを追い求めてきました。 迎えた初めての大舞台では、相手から徹底して研究される中でも「自分の柔道を100%出し切りたい」ということばどおりに、海外のライバルを次々と退けました。 女子がオリンピックの正式種目となってから52キロ級では、日本選手として初めての金メダルを獲得。この先も日本の女子を引っ張る「怪物」として、確かな一歩を踏み出しました。
阿部詩「努力が報われた」
金メダルは目標の「怪物」への第一歩