キトラ古墳こふん壁画へきが 赤あかい顔料がんりょうの成分せいぶん検出けんしゅつ 十二支じゅうにしの“ヘビ”の可能かのう性せい

これまでの調査ちょうさでは、石室いしむろの南みなみ壁かべからは赤あかい朱雀すざくや十二支じゅうにしの「午うま」が、東ひがし壁かべからは青あおい色いろの「青龍せいりゅう」のほか、「寅とら」の衣ころもが青あおく塗ぬられていた反応はんのうも見みつかり、壁かべごとに色いろが使い分つかいわけられていた可能かのう性せいも指摘してきされています。

文化庁ぶんかちょうの検討けんとう会かいの座長ざちょうで、兵庫ひょうご県立けんりつ考古こうこ博物館はくぶつかんの和田わだ晴はる吾われ館長かんちょうは「何なにも分わかっていなかった『巳み』について、描えがかれた位置いちや赤あかい衣ころもを着きていた可能かのう性せいの高たかいことなどが明あきらかになり、理解りかいが一いち歩ほ進すすんだ。ほかの研究けんきゅう成果せいかとの比較ひかくなどにも取り組とりくみたい」と話はなしていました。

1983年ねんから行おこなわれた調査ちょうさで石室いしむろの内部ないぶに極彩色ごくさいしょくの壁画へきがが描えがかれていたことが分わかり、1キロ余あまり離はなれた場所ばしょにある高松たかまつ塚つか古墳こふんに続つづく全国ぜんこくでも2例れい目めの発見はっけんとして大おおきな注目ちゅうもくを集あつめました。

天井てんじょうには東アジアひがしあじあで最古さいことされる天文てんもん図ずが描えがかれていました。

東西とうざい南北なんぼくの壁かべには、それぞれの方角ほうがくの守り神まもりがみで「四よん神かみ（しじん）」と呼よばれる「青龍せいりゅう」「白虎びゃっこ」「朱雀すじゃく」「玄武げんぶ」が描えがかれていました。

ここに今回こんかい、新あらたに浮上ふじょうしたのが、石室いしむろの南南東なんなんとうに当あたる部分ぶぶんに「巳み」の像ぞうが描えがかれていた可能かのう性せいで、文化庁ぶんかちょうによりますと、科学かがく的てきな分析ぶんせきの結果けっか、水銀すいぎんを含ふくむ赤あかい顔料がんりょうで衣ころもなどが表現ひょうげんされているとみられています。

このため壁画へきがは漆喰しっくいと共とともにすべてをはぎ取はぎとって保存ほぞんすることが決きまり、前例ぜんれいのないこの作業さぎょうは2010年ねんに終了しゅうりょうしました。

キトラ古墳こふん自体じたいは、2000年ねんに特別とくべつ史跡しせきになり、はぎ取はぎとられた壁画へきがは2019年ねんにすべて国宝こくほうに指定していされました。

壁画へきがは現在げんざい、明日香あすか村むらにある専用せんようの施設しせつで保管ほかんされ、定期ていき的てきな公開こうかいも行おこなわれています。

これらはいずれも古代こだい中国ちゅうごくの思想しそうを背景はいけいにしていると考かんがえられます。

東ひがしの壁かべには「青龍せいりゅう」、西にしには「白虎びゃっこ」、南みなみには「朱雀すじゃく」、北きたには「玄武げんぶ」が描えがかれていました。

それぞれにシンボルとなる「色いろ」があり、青龍せいりゅうは「青あお」、白虎びゃっこは「白しろ」、朱雀すじゃくは「赤あか」、玄武げんぶは「黒くろ」だとされています。

ヘビに当にあたる「巳み」は、時刻じこくで言いえば午前ごぜん10時じ前後ぜんご。

方角ほうがくでは南南東なんなんとうを示しめします。

青あおい龍りゅう＝青龍せいりゅうが描えがかれ、同おなじ壁かべにある十二支じゅうにしの「寅とら」の衣ころもも銅どうを含ふくむ青あお緑色りょくしょくの顔料がんりょうで塗ぬられていた可能かのう性せいの高たかいことが分わかっています。

南みなみ壁かべです。

赤あかい朱雀すざくが描えがかれ、同おなじ壁かべにある「午うま」の衣ころもも赤あかく塗ぬられていました。

文化庁ぶんかちょうは、キトラ古墳こふんの石室いしむろの四方しほうの壁かべに描えがかれた四よん神かみや十二支じゅうにしについて、東ひがしは青あお、西にしは白しろ、南みなみは赤あか、北きたは黒くろをイメージし、古代こだい中国ちゅうごくの思想しそうを意識いしきした色いろの塗ぬり分わけが行おこなわれていた可能かのう性せいが高たかいとしています。

そのうえで「キトラ古墳こふんの石室いしむろに描えがかれたような十二支じゅうにしは中国ちゅうごく・唐とうの例たとえば長安ながやすや洛陽らくようなど、当時とうじの中心ちゅうしん部ぶの古墳こふん壁画へきがには出でてこない。今後こんご、考かんがえるべきことも課題かだいとして見みえてきた」としています。