日本新聞: フランスで所蔵のバイユー・タペストリー、２年間非公開に

フランスで所蔵しょぞうのバイユー・タペストリー、２年間非公開ねんかんひこうかいに

Feb 26, 2025 07:02

Furigana

ピカソの「ゲルニカ」からゴヤの「戦争せんそうの惨禍さんか」まで、人類じんるいの争あらそいを描えがいた作品さくひんは数多かずおおい。しかしその中なかでも最もっとも古ふるく、最もっとも並外なみはずれた作品さくひんの一ひとつは、フランスにある１１世紀制作せいきせいさくの「バイユーのタペストリー」だ。

縦たて７０センチ、横よこ７０メートルの麻布まふの上うえには、１０６６年ねんに起おきたノルマン人じんによるイングランド征服せいふくの模様もようが描えがかれている。この戦たたかいは、外部がいぶの敵対勢力てきたいせいりょくがイングランドへの侵攻しんこうに成功せいこうした歴史上最後れきしじょうさいごの事例じれいだ。ノルマン人じんを率ひきいたノルマンディー公こうウィリアムは、ウィリアム征服王せいふくおうの名なでも知しられている。

この中世ちゅうせいの傑作けっさくを制作せいさくした人物じんぶつは、時代じだいの流ながれの中なかで忘わすれられてしまった。しかし制作せいさくを委託いたくしたのは、ウィリアムの異父兄弟いふきょうだいだったバイユー司教しきょうのオドと考かんがえられている。タペストリーはバイユーの新あらたな大聖堂だいせいどうの身廊しんろうを装飾そうしょくするためのものだった。この大聖堂だいせいどうは７７年ねんに聖別せいべつされた。
１９８３年以降ねんいこう、タペストリーは仏北西部ふつほくせいぶのバイユー博物館はくぶつかんの一部いちぶを構成こうせいする神学校しんがっこうに展示てんじされている。しかし、このプロパガンダ芸術げいじゅつの伝説的でんせつてきな事例じれいを一目見いちもくみたいという訪問者ほうもんしゃは、今年ことしの８月がつ３１日にち、現地時間げんちじかんの午後ごご７時じまでに鑑賞かんしょうを済すませる必要ひつようがある。博物館はくぶつかんが大規模改修だいきぼかいしゅうと保存ほぞんプロジェクトのため、２０２７年ねん１０月がつまで閉館へいかんする予定よていだからだ。

博物館はくぶつかんの再さいオープンの日程にっていは、ウィリアム征服王せいふくおうの生誕せいたん１０００年ねんの年としに間まに合あうように設定せっていされている。

タペストリーの図柄ずがらで最もっとも有名ゆうめいなのは、イングランド最後さいごのアングロサクソン王おう、ハロルド２世よがヘースティングズの戦たたかいで目めに矢やを受うけて殺害さつがいされる場面ばめんだ。

それ以外いがいに目立めだった情景じょうけいとしては、ハレー彗星すいせい（すいせい）の描写びょうしゃがある。彗星すいせいの名前なまえの由来ゆらいとなる英国えいこくの天文学者てんもんがくしゃエドモンド・ハレーが生うまれるのは、タペストリーの年代ねんだいの約やく６００年後ねんごだ。
バイユー博物館はくぶつかんの主席学芸員しゅせきがくげいいん、アントワーヌ・ベルネイ氏しは報道向ほうどうむけ発表はっぴょうの中なかで、閉館中へいかんちゅうのタペストリーについて、写真しゃしんの撮影さつえいや検査けんさ、国くにが監督かんとくする大掛おおがかりな復元作業ふくげんさぎょうを実施じっしすると明あきらかにした。作業さぎょうを通つうじ、布地ぬのじの傷きずみが一定いっていに保たもたれるはずだという。

タペストリーの移動いどうや復元ふくげんの工程こうていは、今年ことし１月がつに始はじまった。麻布まふの生地きじから慎重しんちょうにほこりを払はらい、１９８３年ねんから加くわえられた羊毛ようもうの裏当うらあてを取とり除のぞいていく。今秋こんしゅうに保存作業ほぞんさぎょうが開始かいしすると展示てんじケースから外はずされ、保存用ほぞんようの木枠きわくに詰つめた上うえで一時的いちじてきな保管場所ほかんばしょへと移うつされることになる。