※記事では「賃上げや暮らしに関わる予算」を具体的に紹介します。
27日の臨時閣議で決定した政府の来年度予算案は、一般会計の総額が115兆5415億円となっています。
当初予算としては3年連続で110兆円を超え、昨年度の114兆3800億円を上回って過去最大となります。
歳出の内訳は、高齢化に伴い医療や年金などの社会保障費が拡大し、38兆2778億円となるほか、防衛力の抜本的な強化に伴い防衛関係費は8兆6691億円に増え、いずれも今年度の当初予算を上回りました。
さらに、地方交付税交付金は19兆784億円、国債の償還や利払いにあてる国債費は、長期金利の上昇を背景に過去最大の28兆2179億円となります。
予定外の支出に備える予備費には1兆円をあてますが、今年度、別枠として1兆円を計上していた物価高騰などに対応するための予備費は廃止します。
一方、歳入では、堅調な企業業績などを背景に税収が過去最大の78兆4400億円になると見込んでいますが、不足する財源をまかなうため、国債を新たに28兆6490億円発行する計画です。
国債の発行額は、今年度の当初予算と比べ6兆円余り減りますが、財源の4分の1を国債に頼る厳しい財政状況が続く見通しです。
来年度予算案は来年の通常国会に提出され、政府・与党は、野党の賛同も得て早期の成立を目指す方針です。
《賃上げや暮らしに関わる予算は》
◇最低賃金の引き上げに向けた環境整備
最低賃金の引き上げに向けた環境を整えるため、中小企業や小規模事業者のうち、生産性の向上に向けた設備投資などを行い、職場内での賃金が最も低い人について、一定額以上の賃上げした場合に助成金を出して支援する制度を継続し、今年度の当初予算よりも6億8000万円多い、15億円が盛り込まれました。
◇共働きで育児する夫婦の後押しへ給付金
共働きしながら育児をする夫婦を後押しするため、
▽夫婦どちらとも14日以上の育休を取得すれば、手取りの収入が最長28日間は実質的に減らないようにするための給付金と
▽2歳未満の子どもを育てるために時短勤務をする場合賃金の10%にあたる給付金を
それぞれ来年4月以降支給することにし、新たな制度を創設するため、792億円が盛り込まれました。
◇人材確保へ 就職相談窓口増設 マッチング事業
人手不足が深刻な現場での人材確保を支援しようと、
▽ハローワークに設置する医療や介護などの分野への就職相談の専門窓口をさらに増やし
▽介護や育児をしながら働く現役世代の家庭や、福祉施設や保育所など働き手が足りない場所へ、シルバー人材センターの会員を紹介してマッチングを目指す事業などに
416億円が盛り込まれました。
◇リスキリング=学び直しの推進へ支援
リスキリング=学び直しを推進しようと、
▽従業員のキャリア形成を後押しする企業を対象にした支援の拡充や
▽教育訓練を受けるために、給料の支払いがない休暇を取得した労働者に対して給付金を支給する制度の創設などに
1335億円が盛り込まれました。
林官房長官「コストカット型から高付加価値創出型の経済へ」
林官房長官は、臨時閣議のあとの記者会見で「『コストカット型経済』から『高付加価値創出型経済』への移行を確実なものとするとともに、わが国が直面する構造的な変化に的確に対応し、国民の安心・安全を確保するための予算だ」と述べました。
一方、財源の4分の1を国債に頼る、厳しい財政状況が続く見通しとなっていることについて「政府としては、財政健全化の旗を降ろすことなく、プライマリーバランス=基礎的財政収支の黒字化を目指すという方針のもと、これまでの進捗や成果を後戻りさせることなく、歳出・歳入両面からの取り組みを継続していきたい」と述べました。
立民 野田代表「むだづかいされないよう しっかりチェック」
立憲民主党の野田代表は、記者団に対し「総額を見るかぎりは、依然としてコロナ禍の財政運営から脱却できていないのではないのかと思わざるを得ない」と述べました。
その上で「補正予算では減額の要請もしながら修正を求めたが、今回は115兆円を超える予算案なので、国民の税金がむだづかいされることのないようにしっかりとチェックした上で、予算審議の中で何を勝ち取っていくのか、戦略的に検討していきたい」と述べました。