Japanese News: 残るか、離れるか… 難しい選択を迫られる住民たち

能登のと半島はんとう地震じしんでは石川いしかわ県けん内灘うちなだ町まちなどで大だい規模きぼな液状えきじょう化かの被害ひがいが出でました。この液状えきじょう化かの被害ひがいは富山とやま県けんや新潟にいがた県けんでも確認かくにんされ、いまも各地かくちで被災ひさい者しゃの生活せいかつ再建さいけんに影響えいきょうが出でています。

富山とやま県けん 2万まん2500棟むね余あまりの住宅じゅうたくに被害ひがい

このうち富山とやま県けんは、強つよい揺ゆれや液状えきじょう化かの影響えいきょうによる住宅じゅうたくの被害ひがいは12月つき25日にちの時点じてんで2万まん2500棟むね余あまりとしています。

被災ひさいした富山とやま県内けんないの自治体じちたいでは、液状えきじょう化か被害ひがいの再発さいはつを防ふせぐため国くにの事業じぎょうを活用かつようして宅地たくちと道路どうろなどが一体いったいとなった面めん的てきな地盤じばん対策たいさくを検討けんとうしています。

対策たいさくの実施じっしに向むけて地盤じばんのボーリング調査ちょうさなどを進すすめていて、地下ちか水すいをくみ上くみあげるなどして地下ちか水すいの水位すいいを下さげる工法こうほうや、格子こうし状じょうに壁かべを地中ちちゅうに埋め込うめこむ工法こうほうなどを検討けんとうしています。

ただ、地盤じばん調査ちょうさなどに時間じかんがかかっていることから、工法こうほうの選定せんてい時期じきがずれ込ずれこんでいる自治体じちたいもあります。

また、選定せんていされたとしても、対策たいさくを実施じっしするには住民じゅうみんに経済けいざい的てきな負担ふたんが生しょうじる可能かのう性せいがあるほか、住民じゅうみんの同意どういも必要ひつようで、工事こうじの完了かんりょうにも数すう年ねんはかかる見通みとおしです。

富山とやま県内けんないでは富山とやま市しが12月つき、「地下ちか水位すいい低下ていか工法こうほう」を実施じっしする可能かのう性せいが高たかいと住民じゅうみんに説明せつめいしましたが、実施じっしには住民じゅうみん全員ぜんいんの同意どういが必要ひつようで、ポンプの維持いじ管理かんり費ひなど年間ねんかん480万まん円えんの負担ふたんが住民じゅうみん側がわに求もとめられるほか工事こうじには最低さいていでも5年ねん程度ていどはかかるとしていて、今後こんごの合意ごうい形成けいせいが課題かだいになっています。

このほか高岡たかおか市しは2025年ねん3月つきに、射水いみず市しは2025年ねん3月つきから4月つきにかけての時期じきに工こう法案ほうあんを住民じゅうみんに示しめす方針ほうしんです。

一方いっぽうで氷見ひみ市しと滑川なめかわ市しは時期じきは未定みていだとしていて、富山とやま県内けんないの被災ひさい地ちでは地盤じばん対策たいさくが完了かんりょうするめどがまだ立たっていません。

大切たいせつな住すまいを液状えきじょう化かの被害ひがいからどう守まもるのか、被災ひさい者しゃの生活せいかつ再建さいけんに影響えいきょうが出でています。

もとの場所ばしょで再建さいけんしたいと考かんがえる住民じゅうみん

富山とやま県けん氷見ひみ市しは、強つよい揺ゆれや液状えきじょう化かの影響えいきょうで、県内けんないで最もっとも多おおい6700棟むね余あまりの住宅じゅうたくに被害ひがいが出でました。

建物たてものの公費こうひ解体かいたいが進すすみ、さら地さらちも目立めだつようになってきています。

地震じしんからまもなく1年ねんとなる中なか、市しからは液状えきじょう化かの地盤じばん対策たいさくの見通みとおしが示しめされず、住民じゅうみんは地区ちくに残のこるか、離はなれるか、難むずかしい選択せんたくを迫せまられています。

氷見ひみ市し北大きたおお町まちで自転車じてんしゃ店てんを営いとなむ河かわ元もと宏行ひろゆきさん（50）は、もとの場所ばしょで店舗てんぽと自宅じたくを再建さいけんしたいと考かんがえています。

店みせは柱はしらが折おれて傾かたむき倒壊とうかいのおそれがあるため、通とおりの反対はんたい側がわの車庫しゃこに仮設かせつ店舗てんぽを設もうけてことし1月つきに営業えいぎょうを再開さいかいしました。

店みせの奥おくにある自宅じたくは20センチほど傾かたむき、「大だい規模きぼ半壊はんかい」と認定にんていされました。

いまも自宅じたくで母親ははおやと2人にんで暮くらしていますが、家いえが傾かたむいた状態じょうたいのため生活せいかつに支障ししょうが出でているということです。

自宅じたくの修理しゅうりと店舗てんぽの再建さいけんには補助ほじょ金きんを活用かつようしても相当そうとうの自己じこ負担ふたんが必要ひつようになりますが、それでも「常連じょうれん客きゃくや地元じもとの復興ふっこうの役に立やくにたちたい」という思おもいから、元もとの場所ばしょでの再建さいけんを目指めざしています。

父親ちちおやの代だいから続つづく河かわ元もとさんの店みせは、地域ちいきで唯一ゆいいつの自転車じてんしゃ店てんとして通学つうがくに自転車じてんしゃを使つかう中高生ちゅうこうせいなどから頼たよりにされてきました。

12月つきも、父親ちちおやの代だいに店みせを利用りようし最近さいきん車しゃの免許めんきょを返納へんのうしたという70代だいの男性だんせいがかごの取り付とりつけに訪おとずれていて「震災しんさいで大変たいへんな中なかで営業えいぎょうしてくれてありがたい」と話はなしていました。

河かわ元もとさんは「地震じしんのあと心しんが弱よわっていたが、客きゃくに『あなたの店みせがなくなったら弱よわる』と涙なみだながらに言いわれて力ちからをもらえた。地元じもとに恩返おんがえしをするためにも、なんとか活気かっきづけて盛り上もりあげていけるように頑張がんばっていきたい」と話はなしていました。

地区ちくに残のこることを決きめたものの、河かわ元もとさんが懸念けねんしているのは「人口じんこうの流出りゅうしゅつ」です。

被災ひさいして地区ちくを離はなれた客きゃくも少すくなくないため、被災ひさい後ごの自転車じてんしゃの販売はんばい台数だいすうは2023年ねんの半分はんぶん余あまりに落ち込おちこんでいるということです。

河かわ元もとさんは「インフラなどが復旧ふっきゅうしても、住民じゅうみんが減へると地域ちいきは衰退すいたいしてしまうので、行政ぎょうせいにはにぎわいを取り戻とりもどせるよう対応たいおうしてほしい」と話はなしていました。

地区ちくを離はなれる苦渋くじゅうの決断けつだんする人ひとも

一方いっぽう、氷見ひみ市しの新道しんどう地区ちくの沖おき崎さき明あきらさん（73）は、行政ぎょうせいによる地盤じばん対策たいさくの見通みとおしが立たたないため、地区ちくを離はなれる苦渋くじゅうの決断けつだんをしました。

家族かぞく7人にんで暮くらしていた自宅じたくは液状えきじょう化かで傾かたむき、柱はしらも折おれるなどして全壊ぜんかいと認定にんていされ、いまは「みなし仮設かせつ」としての市内しないの空き家あきやで暮くらしています。

町内ちょうない会かいの副ふく会長かいちょうでもあった沖おき崎さきさんは当初とうしょは元もとの場所ばしょで自宅じたくを再建さいけんしようと考かんがえ、これまでも市しの住民じゅうみん説明せつめい会かいに参加さんかしたり市長しちょうの現場げんば視察しさつに同行どうこうしたりして早期そうきの復旧ふっきゅうを呼よびかけてきました。

氷見ひみ市しは当初とうしょ、地盤じばん対策たいさくの工こう法案ほうあんを10月つきをめどに示しめす方針ほうしんでしたが、地層ちそう調査ちょうさに時間じかんがかかっているなどとして工法こうほうの選定せんていがずれ込ずれこんでいて、発表はっぴょうの時期じきは未定みていだとしています。

さらに工法こうほうが選定せんていされたとしても実施じっしには住民じゅうみんの同意どういが必要ひつようで、工事こうじには数すう年ねんはかかるため対策たいさくが完了かんりょうする見通みとおしが立たたないことから、沖おき崎さきさんは市内しないの別べつの地区ちくで家いえを建たてる準備じゅんびを進すすめています。

11月つきの説明せつめい会かいに参加さんかした沖おき崎さきさんは「市しの説明せつめいに進展しんてんが見みられない。本来ほんらいなら家いえを建て直たてなおしたかったが、地盤じばん改良かいりょうに数すう年ねんかかるとなると年齢ねんれい的てきな問題もんだいもありこの場所ばしょに建たてるのは無理むりだ」と話はなしていました。

地区ちくを離はなれる住民じゅうみんが相次あいつぐなか、課題かだいとなっているのが「地域ちいきコミュニティーの衰退すいたい」です。

被災ひさいした住民じゅうみんで作つくる団体だんたいによりますと、被災ひさい前まえの新道しんどう地区ちくには77世帯せたいが暮くらしていましたが、転居てんきょしたり転居てんきょを検討けんとうしたりする世帯せたいは12月つき時点じてんで4割わり近ちかくの30世帯せたいに上のぼるということです。

義理ぎりの母親ははおやの沖おき崎さきアイ子あいこさんは（92）みなし仮設かせつでの暮くらしでは近ちかくに友人ゆうじんもおらず、ストレスなどで体重たいじゅうも減へったということです。

アイ子あいこさんは「もとの家いえでは散歩さんぽして世間せけん話ばなしもできたけれど、いまはできないのでさみしい。この場所ばしょでは死しにたくない」と涙なみだながらに話はなしていました。

沖おき崎さき明あきらさんは「こんなに仲なかのよい町内ちょうないはなかったが、地震じしんで町まちが変かわるし人ひとも変かわっていくので複雑ふくざつで残念ざんねんな気持きもちです」と話はなしていました。

専門せんもん家か液状えきじょう化かは「対策たいさくとらなければ再ふたたび起おきる」

地盤じばん工学こうがくが専門せんもんで、富山とやま県内けんないの液状えきじょう化かの被災ひさい地ちを視察しさつした専門せんもん家かは、液状えきじょう化かが起おきた場所ばしょでは同おなじ規模きぼの地震じしんで再ふたたび液状えきじょう化かの被害ひがいが出でるおそれがあるとして、地域ちいきの復興ふっこうのためには地盤じばん対策たいさくが重要じゅうようだと指摘してきしています。

地盤じばん工学こうがくが専門せんもんの東京とうきょう電機でんき大学だいがくの安田やすだ進すすむ名誉めいよ教授きょうじゅは富山とやま県けんの氷見ひみ市しと高岡たかおか市しに対にたいし地盤じばん対策たいさくの助言じょげんなどをしていて、11月つきも現地げんちを視察しさつしました。

安田やすだ名誉めいよ教授きょうじゅによりますと、液状えきじょう化かは緩ゆるい砂すなの層そうや地下ちか水位すいいが高たかい場所ばしょで起おきやすく、今回こんかいの地震じしんでも埋め立うめたて地ちや過去かこに川かわが流ながれていた場所ばしょなどで発生はっせいしたということです。

今回こんかいの視察しさつでは、砂すなが噴き出ふきだす「噴砂ふんさ」と呼よばれる現象げんしょうが起おきた場所ばしょや、液状えきじょう化かで地盤じばんが水平すいへいにずれ動うごいたためアスファルトが側溝そっこうにはみ出はみでている場所ばしょなどの状況じょうきょうを確認かくにんしていました。

安田やすだ名誉めいよ教授きょうじゅは「液状えきじょう化かが一度いちど起おきると水みずがしぼり出だされて地盤じばんが固かたまりその後そのごは液状えきじょう化かしにくくなると考かんがえられがちだが、実際じっさいには逆ぎゃくで液状えきじょう化かしやすいままだ。対策たいさくをとらなければ、再ふたたび起おきることになる」と指摘してきしています。

そのうえで「対策たいさくを行おこなえば、家いえや道路どうろが再ふたたび被害ひがいを受うけることはなくなる。東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいの被災ひさい地ちでは対策たいさくを取とったことで住民じゅうみんが増ふえたところもあるので、対策たいさくをすれば安心あんしんして暮くらせると思おもう」として、地域ちいきの復興ふっこうのためには地盤じばん対策たいさくが重要じゅうようだとしています。

新潟にいがた市しでも被災ひさい者しゃの生活せいかつ再建さいけんに影響えいきょう

能登のと半島はんとう地震じしんによる液状えきじょう化かの被害ひがいを受うけた新潟にいがた市しも、ほかの地域ちいきと同おなじように被災ひさい者しゃの生活せいかつ再建さいけんに影響えいきょうが出でています。

新潟にいがた市し西にし区くに住すむ立松たてまつ修おさむ（68）さんと有美ゆみさん（64）の夫婦ふうふの自宅じたくも地盤じばんの液状えきじょう化かで最大さいだいで30センチほど沈しずみ込こみ、「大だい規模きぼ半壊はんかい」と判定はんていされました。

自宅じたくは今いまも窓まどがずれ、敷地しきち内ないの水道すいどう管かんも壊こわれて水みずは出でないままで生活せいかつできる状況じょうきょうではないため、立松たてまつさん夫婦ふうふは地震じしんの翌日よくじつから親戚しんせきと営いとなんでいたカフェを休業きゅうぎょうしそこで仮住かりずまいを続つづけています。

将来しょうらいの住すまいをどうするか2人にんで話し合はなしあいを重かさねた結果けっか、およそ40年ねんにわたって住すみ続つづけ愛着あいちゃくがある今いまの自宅じたくがある場所ばしょにとどまり、地盤じばん改良かいりょうしたうえで建て直たてなおすことを決きめました。

新あらたな生活せいかつに向むけて家具かぐの処分しょぶんや荷物にもつの整理せいりを進すすめていますが、「公費こうひ解体かいたい」も遅おくれていて自宅じたくを建て直たてなおすめどは立たっていません。

さらに近所きんじょの人ひとたちの中なかには、「再さい液状えきじょう化か」への不安ふあんなどから住すみ続つづけることをあきらめ地域ちいきを離はなれた人ひともいて、立松たてまつさん夫婦ふうふもこの場所ばしょで再ふたたび暮くらすことを決意けついしたものの、不安ふあんがよぎることがあるといいます。

地域ちいき全体ぜんたいで復興ふっこうへの歩あゆみを進すすめるためにも、新潟にいがた市しに液状えきじょう化か対策たいさくの具体ぐたい案あんを早はやく示しめしてほしいと考かんがえています。

立松たてまつ修おさむさんは「家いえを建て直たてなおしたあと、もし再ふたたび液状えきじょう化か被害ひがいが出でた場合ばあい、もう建て直たてなおす力ちからは残のこっていないと思おもいます。来年らいねんはこれから先さき2人にんがどうしていけばいいのか、生活せいかつ再建さいけんへの道筋みちすじが見みえるような1年ねんになってほしいです」と話はなしていました。