コロナに加えてインフルエンザの感染も広がりつつある中で、各地の医療機関からは「発熱外来や救急外来のひっ迫を防ぐためにも重症化リスクの低い患者は自宅での検査キット利用を検討してほしい」との声が相次いでいます。
厚生労働省はこうした状況に備え、これまで医療機関での使用に限られていた同時検査キットの一般向けの販売を認めました。
メーカーによって1箱に入っているキットの個数が異なるため、販売価格はこの値段×キットの個数となります。 新型コロナだけの抗原検査キットと同じように医療保険は適用されないため、全額自己負担となります。 また医療費控除の対象にもなりません。
一般向けの販売が解禁されてからインターネットなどですぐに販売を始めたのは1社にとどまりました。 そもそも同時検査キットは医療機関への供給が不足してはいけないので、一般販売向けの供給よりも医療機関への供給を優先することが前提になっています。 さらに一般販売を始めるにあたっては、それまでの医療機関向けのものとは違い、一般の人にも分かるような説明書や新たなパッケージの準備を各メーカーが行うには時間がかかるため、どれぐらいの供給量が確保できるのかが課題となっていました。 こうした中、少しでも多くのキットが市場に出回るよう、厚生労働省は薬剤師が常駐する薬局で販売する場合、医療用の検査キットであれば新たに一般販売のための承認を得なくても販売できるようにすることを特例で認める対応をとりました。 その後さらに各メーカーの対応も進み、1月17日時点で一般販売の条件を満たしているのは5社の製品で、うち3社の製品が薬局に加えドラッグストアやインターネットでも購入できます。
これらのうち「研究用」とパッケージなどに書かれている商品があります。 この「研究用」と書かれたキットは国が販売を認めているものではなく、また効果も確認されていないものです。 「研究用」と書かれたキットで行った検査結果は正しい結果が出ているかを保証できないため、保健所への報告やオンライン診療でも使えません。 では国が承認しているものには、なんと書かれているのでしょうか。
厚生労働省は「研究用」と書かれたものは使わず、これらの国が承認した商品を使うよう注意を呼びかけています。 また同時検査キットは、新型コロナの抗原検査キットと同じように「体外診断薬」という医薬品の一部にあたります。 医薬品は医薬品医療機器法で転売が禁じられているため、キットが余ったからといって転売することはできません。 厚生労働省は転売をしないよう監視や指導を強化しています。
そして線がどこに出るかで、コロナ・インフルそれぞれの「陽性」「陰性」の結果が分かります。
一方症状が重い場合は、コロナでもインフルエンザでもかかりつけ医などを受診し、軽い場合は電話やオンラインでの受診を検討してほしいとしています。 注意点として、陽性だった場合にキットで出た線が時間がたつと薄くなってしまう場合があります。 このため検査後の線が出た状態のキットをスマートフォンなどで撮影し記録しておくようにしましょう。
国立感染症研究所などによりますと1月8日までの1週間に全国約5000か所の医療機関から報告されたインフルエンザの患者数は、前の週の2.37倍の2万3139人でした。 1医療機関あたりの1週間の患者数は4.37人で、ここから推計される全国の患者数は、およそ18万2000人となっています。 1医療機関あたりの患者数(都道府県別)は以下のとおりです。 ▼沖縄県17.77人▼宮崎県12.37人▼佐賀県10.08人。 これらの3県は今後、4週間以内にインフルエンザの大きな流行が起きるおそれが高いとされる「注意報レベル」の10人を超え、3県はいずれもインフルエンザに関する注意報を発表しています。 そのほかの地域では▼福岡県9.62人▼大阪府8.26人▼愛媛県7.39人▼長崎県7.11人などとなっています。
時田医師は東京・港区のクリニックで発熱外来も担っています。
特にインフルエンザは発熱から陽性になるまでに時間がかかるので、自宅でキットを使う場合は、発熱後おおむね12時間以上たってから検査してほしいということです(※医療機関では早期に検査できる場合もあるので相談を)。 時田医師「のどが痛い、熱も出てきた、といってすぐ検査をしたくなる気持ちはわかります。しかし、特にワクチンを接種していると最初からすぐにウイルス量が多いわけではなく、陽性になりにくいケースもあります。検査の結果が陰性でも仕事に行ったりせずにしっかり自宅で休んで様子を見て、時間を置いてもう一度検査をしてほしい」。
冷蔵庫の中に保管していたり、冬場で暖房が入っていない部屋で使うと反応が進まず「偽陰性」になるケースがあります。 時田医師「細かいことですが温度も影響してきます。逆に真夏に入手して放置していた検査キットを使うと偽陽性となることもあるので、適正に使用してほしい」。
このため時田医師によりますと、医療機関で行う場合に比べて10%ほど感度が落ちてしまうということです。 鼻先で検査する場合も、「添付文書」と呼ばれる説明書に書かれている範囲内でなるべく奥の方まで綿棒を入れて、定められた回数しっかりと綿棒を回転させて、入念に採取してほしいということです。
綿棒を溶液の中で回したり、容器の上から複数回もみ込んだりして、よく溶かすことが大切です。 時田医師「容器をつまんでもんだり、綿棒を回したりする動作は10回以上やることがお勧めです。やりすぎることはないので、しっかりと溶かすことで、結果がかなり違います」。
ウイルス量が多いほど線が濃くなりますが、この際に大切なのが「色」です。 検査キットごとに、定められた陽性の色と違う色が出現した場合は、陽性ではないのに反応した「偽陽性」の可能性もあるということです。 時田医師「鼻水の中の成分が入り込むことなどで偽陽性になる場合があって、その時は例えばピンクのラインが出るはずなのにグレーのラインが出る、といったことがあります。本来の色ではなかったり、ラインが薄くて判断できない場合は、医療機関に相談してください」。
時田医師が強調するのは、同じ同時検査キットでも医療機関で検査する場合と、自宅で行う場合で精度に違いがあるということです。 このため、あくまでも発熱外来がひっ迫している時の補助的な手段として使うこと、検査の結果がすべてと思わず、特に症状があるのに陰性となった時は結果に安心して外出しないことが大切だとしています。 その上で、自宅で使う場合もできるだけ正しい結果に近づけられるよう、添付文書をよく読んでしっかりと使い方のポイントを抑えることが大切だといいます。 また特に幼い子どもは症状が似たさまざまな感染症にかかりやすく、中には重篤な結果となるものもあります。 このためコロナやインフルエンザが陰性でも安心せず、不安な症状があったらかかりつけ医を直接受診することが大切だということです。
Q2.値段は?最新の供給状況は?
Q3.購入の際の注意点は?
Q4.キットの使い方は?
Q5.インフルエンザの感染状況は?
Q6.キットを自宅で使う際の注意点は?
ポイント1)使うタイミングは発熱から12時間以上たってから
ポイント2)検査キットは冷やしすぎない
ポイント3)検体採取はなるべく奥の方からしっかりと
ポイント4)検体をしっかり溶かす
ポイント5)結果の判定ラインは色に注目
まとめ:自宅検査はあくまでも補助的存在