自衛隊の「統合作戦司令部」は東京 市ヶ谷の防衛省内に置かれ、24日におよそ240人体制で発足しました。
陸海空自衛隊の司令部は、それぞれ異なる場所にありますが、今後は「統合作戦司令部」が防衛大臣の命令のもと、各自衛隊を一元的に指揮します。
司令部トップの「統合作戦司令官」が部隊の指揮に専従であたるほか、アメリカ軍などと作戦に関する連絡調整も行います。
一方、これまで部隊を実質的に指揮してきた自衛隊制服組トップの統合幕僚長は、省内調整など、防衛大臣の補佐に、より専念することになります。
防衛省は「統合作戦司令部」の設置によって、事態の状況に応じた迅速な部隊の運用や、アメリカ軍との連携強化などにつながるとしています。
「統合作戦司令部」とは
東京 市ヶ谷の防衛省内に設置された「統合作戦司令部」は、全国22万余りの隊員がいる陸海空自衛隊を一元的に指揮します。
もともと各自衛隊の司令部は、▽陸上自衛隊が「朝霞駐屯地」、▽海上自衛隊が「横須賀基地」、▽航空自衛隊が「横田基地」と異なる場所に置かれていて、平素はそれぞれの司令官が部隊を指揮していました。
大規模災害や、外国で紛争が起きて現地に滞在する日本人を国外に退避させる場合などには、陸海空自衛隊による統合部隊が臨時で編成されますが、指揮官はその時々で異なっていました。
今後は「統合作戦司令官」が防衛大臣の命令や、統合幕僚長の指示のもと、陸海空の各司令官などを通じて部隊の指揮に専従であたります。
防衛省は、常設の「統合作戦司令部」を設けたことによって、さまざまな事態が起きても、より迅速に対応できるようになるとしています。
「統合作戦司令官」が指揮できるのは、▽平時の警戒監視や、▽災害派遣、▽弾道ミサイルへの対処、▽在外邦人などの保護、それに▽有事の際の防衛任務など、広範囲に及びます。
こうしたことから「統合作戦司令官」の階級は、統合幕僚長や陸海空自衛隊トップの陸上幕僚長、海上幕僚長、航空幕僚長と同じになります。
統合作戦司令部には陸海空の隊員などおよそ240人が勤務していて、2025年度末までに280人体制となる計画です。
東日本大震災が設置のきっかけに
「統合作戦司令部」が設置されるきっかけになったのは、14年前の東日本大震災です。
このときは、自衛隊制服組トップの統合幕僚長が部隊を実質的に指揮する役割を担い、日本で支援活動にあたったアメリカ軍との調整も行いました。
その一方で、防衛大臣の補佐として政府の会議に出席し説明にあたるなど負担が集中し、役割を分担する必要があるという指摘が出ていました。
在日アメリカ軍は「統合軍司令部」設けることに
自衛隊の「統合作戦司令部」が創設されるのにあわせて、アメリカは今後、在日アメリカ軍を再構成し、カウンターパートとなる「統合軍司令部」を設けることにしています。
在日アメリカ軍の部隊の指揮権は、現在、東京の横田基地にある在日アメリカ軍司令部ではなく、ハワイにあるインド太平洋軍司令部が持っています。
ハワイと日本との間には距離や時差があるため、専門家からは、有事の際などに自衛隊とアメリカ軍が円滑に連携するには、在日アメリカ軍司令部の指揮・統制の権限を強化する必要があると指摘されてきました。
アメリカとしては、自衛隊の「統合作戦司令部」の創設にあわせて、今後、在日アメリカ軍に作戦指揮の権限を持つ「統合軍司令部」を設立することで、日米の部隊の指揮・統制の向上を図るねらいです。
この統合軍司令部について、在日アメリカ軍はNHKの取材に対し「司令官には中将が就任する計画だ。再編計画は順調に進んでいる」とコメントしています。
一方で、CNNテレビは19日、アメリカ国防総省が組織や態勢を見直すために検討している案の中に、在日アメリカ軍を強化する計画の中止が含まれていると伝えていて、計画どおりに進むのか注目されています。