斎藤知事は26日午後、報告書を受けた見解を説明しました。
【動画】斎藤知事の見解説明ノーカット
※動画は1時間7分41秒。
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《斎藤知事 説明の内容を詳しく》
10件のパワハラ認める「指摘を真摯に受け止めたい」
斎藤知事は、第三者委員会の報告書で自身の言動がパワハラと認定されたことについて「知事就任後、県政改革やよりよい県政運営を追求していきたいという思いで、職員に対して、厳しいことばなどで注意や指導などを行ってきたが『パワハラに該当するという指摘』は私自身も真摯(しんし)に受け止めたいと考えている。不快な思いや負担に思われた職員に対しては、改めておわびと謝罪を申し上げたい」と述べました。
10件のパワハラを認めるのか記者団に問われると「第三者委員会としてパワハラに該当するという指摘を受けたので、パワハラの認定については認めていきたい」と述べました。
内部告発文書への県の対応「適切な対応だったと考える」
内部告発文書への県の対応をめぐり、通報者さがしなどが公益通報者保護法に違反し、元局長の懲戒処分で、文書の作成と配布を理由にした部分は違法で無効だと指摘されたことについて、斎藤知事は「文書は個人名や企業・団体名をあげて事実ではないことを述べていて、ひぼう中傷性が高いという認識には変わりありません。あとから見ればさまざまな課題は指摘されているが、当時の判断としてはやむをえない適切な対応だったと考えています。第三者委員会の指摘は尊重させていただきたいと思いますが、懲戒処分について、県としては弁護士の助言をもらいながら進めてきたので、手続き・内容ともに適切だったと考えています。ただ第三者委員会が指摘する公益通報者保護法の体制整備については、真摯に受け止めなければならないと考えています」と述べました。
「風通しのよい職場環境構築が責任の取り方と考える」
斎藤知事は、自身の責任を問う声も聞こえているとした上で「反省すべきところは反省し、改めるべきところは改めて、今回の一連の件を契機に、より風通しのよい職場環境を構築することが、県民の皆さんに対する私の責任の取り方だと考えています」と述べました。
そして「改めて、お亡くなりになられた元県民局長、そして竹内元県議に対して、哀悼の誠をささげるとともに、ご遺族に対しても謹んでお悔やみを申し上げます。お二人のこれまでの県政へのご尽力に改めて感謝を申し上げたい」と述べました。
元県民局長への非難「不快な思いや負担感じさせ 申し訳ない」
斎藤知事は、去年3月の記者会見で、元県民局長を「公務員失格」とか「うそ八百」などのことばで非難したことについて「元県民局長に対して、不快な思いや負担を感じさせたことは、大変申し訳ないと思っている。表現が強かったことは反省しなければいけない」と述べました。
告発文書「ひぼう中傷性高い文書という認識に変わりない」
斎藤知事は、告発文書について「真実相当性が認められなかった項目については、個人名や企業・団体名まであげて事実でないことをただ述べていることから、ひぼう中傷性の高い文書であるという認識に変わりはない」と述べました。
また、文書の作成と配布を理由にした元局長の懲戒処分は違法で無効だと指摘されたことについては「4つの非違行為のうち3つについては報告書で適法・有効とされている。残りの1つ、違法性の指摘は真摯に受け止めるが、公益通報の各種論点については、司法の専門家でも意見が分かれている。私自身が当事者であることと、第三者委員会が私の主張や説明について、さらに反論する場がないということを踏まえれば、これ以上、言及することは差し控えたほうがよい」と述べました。
「司法の場での判断 一番大事なポイント」
斎藤知事は、自身や県の対応が公益通報者保護法に違反しているかどうか問われ「百条委員会に招致された専門家も司法の場での判断だという認識を指摘されている。一番大事なポイントだと思っています」と述べました。
「襟を正して県政進めることが自分なりの身の処し方」
斎藤知事は「研修などもしっかり受けながら、このようなことがないように、襟を正して、努力して県政を進めていくことが、自分なりの身の処し方だ」と述べました。
第三者委報告書 パワハラと認定された言動 されなかった言動は
第三者委員会の報告書でパワハラと認定された斎藤知事の10件の言動です。
1. 出張先の施設のエントランスが、自動車の進入を禁止していたため、20メートルほど手前で公用車を降りた際、出迎えた職員を激しく叱責した
2. 空飛ぶクルマに関する企業との連携協定の締結が事前に報道されたことを問題視し、知事室で担当職員を問い詰め、「勝手にやるな」などと厳しい口調で非難し、職員が説明しようとしたが聞く耳を持たなかった
3. 県立美術館が夏休み期間中に休館するという報道を見て、「聞いていない」と激怒し、職員へのチャットで「こんなことでは美術館への予算措置はできない」などと強い措置を取ることを示唆した上で、翌日、担当者から事情を聞くことなく、叱責するなどした
4. 兵庫県が受賞した「SDGs未来都市」などの授与式にマスコミが取材に来ないことを問題視し、夜間・休日にも職員にチャットを送り、個別に売り込んで交渉することなどを繰り返し求めた
5. 報道機関から担当課が取材を受けたことについて、記者会見前に知事にレクチャーがなかったことなどを問題視して、担当職員を叱責した
6. 机をたたいて職員を叱責した
7. AI関連の事業について職員と協議した際、担当者が説明を始める前に、内容を知らないのに会見で発表するかの判断はできないと一蹴し、説明しようとする担当者らに「なぜ今聞かないといけないのか」などと述べて、中身の説明に入らせなかった
8. 議会で承認された介護関連の事業を協議した際、担当者らに「こんな話は聞いていない」などと叱責し、担当者が資料を見せても「こんな資料は知らない。資料に入っていたら知事が全部知っているとは思わないように」と述べて、それ以上の協議を行わなかった
9. デジタル商品券「はばたんペイ」についての協議で、キャンペーン用のうちわを見ながら舌打ちし、大きなため息をついて、斎藤知事のメッセージと顔写真がないことを問題にした
10. 長期間にわたって継続的に繰り返されてきた夜間・休日のチャットによる叱責や業務指示
報告書は、これらの言動が職員の不満や士気の低下を招き、勤務環境を悪化させたとしています。
また、この10件とは別に、
▽斎藤知事の去年3月27日の記者会見について「元局長を『公務員失格』とか『うそ八百』などのことばで非難したことは、本人に精神的苦痛を与え、職員一般を萎縮させる、パワハラに該当する行為だった」と指摘しました。
一方、6件の言動はパワハラと認定しませんでした。
▽知事が事前に聞いていなかった記念碑の除幕式がテレビで取り上げられたことで立腹し、ほかの職員を通じて知った責任者が謝罪したという内容と、
▽スポーツイベントで知事用の個室を用意しなかったことや昼食が冷めていたことの不満を側近職員に伝え、側近職員が担当者を叱責したという内容については、
知事が直接叱責したわけではないとしています。
また、知事による左遷的な人事処分があったという内容については、個々の人事の必要性などを評価できないとしました。
ただ、斎藤知事が「俺は知事だぞ」などと強い口調で叱責したと情報提供があったことなどについては、「その時の言動が必要性のないものだったとは認定しないが、自身が知事であることをことさら強調する発言は、場面などによっては議論や反論を封じる意味を持つもので、適切さを欠く場合がある」と指摘しています。
第三者委と県議会百条委の報告書を比較
兵庫県の斎藤知事の内部告発文書をめぐっては、3月、県から委託を受けた第三者委員会と、県議会の百条委員会が、それぞれ報告書を出しました。
▽パワハラの疑いについて、第三者委員会は、告発文書に記載された内容を含む16件の言動のうち、10件を「パワハラにあたる」と認定し、「勤務環境を悪化させた」などと指摘しました。
百条委員会は「知事が執務室や出張先で職員に強い叱責をしたことは事実と評価でき、知事の言動はパワハラ行為と言っても過言ではない不適切なものだった」としました。
▽贈答品の受け取りについて、第三者委員会は、「多くの特産品の農産物などを知事ひとりが持ち帰っていたことはおおむね事実だが、社交儀礼の範囲内を超えることが明らかとは言えず、文書が指摘する強欲などの趣旨が該当する事実は認められなかった」とした上で、「知事が贈与を要求しているなどと、疑惑の目で見られるケースがあったことは否定しがたい」と指摘しました。
百条委員会は「知事は、秘書課の職員だけが分けてもらえるという問題を起こさないために、多くを自宅に持ち帰ることを認めていて、個人として消費していたと捉えられてもしかたがない行為もあり、『おねだり』との憶測を呼んだことは否定できない」としました。
▽おととし行われた阪神・オリックス優勝パレードの寄付金集めをめぐり、「県から信用金庫への補助金を増額し、募金としてキックバックさせた」という内容については、第三者委員会は、「キックバックや見返りは認められなかった」とした上で、「信用金庫にパレードの協賛金を依頼した元副知事が、補助金についても決定的な役割を果たしたことが、外形的にみて疑念を抱かれる結果になったことは指摘せざるを得ない」としています。
百条委員会は「キックバックは確認できなかった」とする一方、「2000万円もの協賛金を集めた時期が、補助金が増額された時期と符合することや、協賛金への協力が1日でとりまとめられるなど、不自然な点も見受けられる。背任の疑いの告発状が警察に受理されていて、捜査当局の対応を待ちたい」としています。
▽去年、当時の副知事が、公益財団法人の理事長に事前に相談せずに副理事長の解任を通告したことが理事長の命を縮めたなどとする内容について、第三者委員会は、「死亡との因果関係の有無を裏付ける証拠はないが、人事に関する方針を事前の相談なく伝えた出来事は理事長に対して一定以上大きなストレスを与えたことがうかがわれる」と指摘しました。
百条委員会は「解任の話が命を縮めたとは言いがたいが、理事長に大きな心理的ストレスを与えたことは推察できる。一部で事実誤認、憶測、疑いにとどまるものも含まれている」としました。
▽当時の副知事らが商工会議所などに圧力をかけて斎藤知事の政治資金パーティー券を大量購入させたという内容については、第三者委員会は「事実関係が認められなかった」としました。
百条委員会は「事実は確認できず、事実誤認の可能性もある」としたうえで、「経済界に影響力のある立場を利用して疑念を抱かれる行動を取っていたことは否めない」と指摘しました。
▽4年前の知事選挙での県職員による事前運動と、
▽斎藤知事への投票依頼については、
第三者委員会は「事実は認められなかった」とし、百条委員会は「事実は確認できなかった」としています。
一方、告発文書をめぐる県の対応について、第三者委員会は、「告発文書に記載された内容の一部は公益通報の要件を満たし、文書の配布は不正な目的とは評価できない」として、告発は公益通報にあたるとし、通報者さがしをしたことや、文書を作成した元局長の公用パソコンを回収したことは公益通報者保護法に違反すると指摘しました。また、▽元局長の懲戒処分で文書の作成と配布を理由にした部分は違法で無効だとしたほか、▽去年3月の斎藤知事の記者会見について「元局長を『公務員失格』とか『うそ八百』などのことばで非難したことは、本人に精神的苦痛を与えるなどパワハラに該当する行為だった」として、極めて不適切だと評価しました。
百条委員会は「文書作成が不正な目的と断言できる事情はないと考えられ、文書は公益通報者保護法上の外部通報にあたる可能性が高い」として、「文書内容の事実確認より通報者の特定を優先した調査や知事が記者会見で文書の作成者を公にしたことなどは、公益通報者保護法に基づく措置を怠った対応であり、現在も違法状態が継続している可能性がある」としています。その上で、「公益通報の認識を欠き、あとになって公益通報に該当しないから問題ないと主張して懲戒処分にまで至ったことは大変遺憾だ。斎藤知事や幹部職員による初動対応や元局長の処分過程など全体を通して、客観性、公平性を欠いており、行政機関の対応として大きな問題があったと断ぜざるを得ない」と指摘しています。
第三者委員会の報告書は、パワハラの疑いや告発文書をめぐる県の対応の違法性や不当性について、百条委員会の報告書より厳しく指摘するものとなりました。
知事 県議会閉会であいさつ
兵庫県の斎藤知事は、定例県議会の閉会にあたり議場であいさつしました。
この中では、内部告発文書をめぐり、第三者委員会が、知事のパワハラを認め、告発者を捜した県の対応などを違法だと指摘したことなどについて「大変重く受け止めており、組織的・制度的な側面と私個人のふるまいの双方で、改めて深く省みることが必要と考えている」と述べました。
そして「公益通報制度の適切な運用と体制整備、ハラスメント防止意識の浸透など、よりよい職場環境をつくることを検討し、改善に努めていく」と述べました。
その上で「職員には不快な思いや負担をかけたことを心からおわびする。自分自身を見つめ直し、感謝の気持ちと謙虚な姿勢を胸に刻んで県政運営にあたる」と述べました。