昔々、ある山にいたずら好きのあまんじゃくという小鬼が住んでいた。このあまんじゃく、ふもとの村に下りて来ては悪さばかりして、手のつけられないいたずら者だった。ある晩のこと、あまんじゃくが村を歩いていると、1人の娘が外に出て空を見上げていた。あまんじゃくが何をしているのかと尋ねると、娘は流れ星に願い事をしているのだと言う。これを聞いたあまんじゃくは、すぐに消えてしまう流れ星に願い事をするより、いっそのこと空の星を全部落として自分のものにすれば、いくらでも願い事が叶うと思った。あまんじゃくは、早速箒(ほうき)を持って山のてっぺんに登った。山に登ってみると、星はすぐ頭の上で、手が届きそうに見えた。そこであまんじゃくは、箒を空に向かって振り回した。しかし星にはまだ届かない。それではと、今度は近くにあった石を積み上げて、その上に乗って箒を振り回してみた。だが、それでも星を落とすことは出来なかった。もっと石を高く積み上げれば、必ず星が取れると思ったあまんじゃくは、とうとう川原や林の中の石、果ては石灯篭まで、石という石は全て山の上に積み上げた。こうして、あまんじゃくは、山のてっぺんに見上げるような石の塔を作った。あまんじゃくはその石の塔に登ると、今度こそはと箒を空に振り回した。しかし、やっぱり星には届かなかった。そのうちに東の空が明るくなり、夜が明け始めた。あまんじゃくは、悔しくなり石の塔の上で地団駄を踏んでしまった。すると石の塔はグラグラと揺れ、とうとう崩れてしまった。崩れた石は山から転げ落ち、山のてっぺんからふもとの村までずっと続いていたそうだ。そしてあまんじゃくはその石の下敷きになってしまったのか、それから村には二度と姿を現さなかったということだ。