3月28日に発生したミャンマー中部を震源とするマグニチュード7.7の大地震について、ミャンマーで実権を握る軍はこれまでに2719人が死亡し、4521人がけがをしたほか、441人の行方がわからなくなっているとしています。
現地ではいまも各地で救助活動が行われており、首都ネピドーでは1日、発生から90時間以上、がれきの下に閉じ込められていた63歳の女性が救助されたということです。
ただ、被災地域は広範囲にわたり、多くの住宅が倒壊していて活動は難航しており、軍は、死者はさらに増えるおそれがあるとしています。
一方、隣国タイの首都バンコクで倒壊した建設中の高層ビルについて、地元当局はこれまでに少なくとも13人が死亡し、いまも70人以上と連絡がとれていないとしています。
このビルをめぐっては、現場で使われていた鉄筋の一部が必要な基準を満たしていなかったと発表されるなど、設計や構造に問題がなかったか疑問視する声が上がっています。
こうした中、タイ政府は、調査委員会を設置して原因の究明を進めていて、防災対策が進んでいる日本側に対しても、専門家の派遣など協力を求めています。
また、地元当局によりますと、今回の地震ではバンコク市内で建物の被害が1万件以上、報告されているということで、当局が建物の危険度などを確認する検査を続けているものの、市民の間では余震などへの不安が広がっています。
タイ バンコク 建物被害1万件以上 検査続く
建設中の高層ビルが倒壊したタイの首都バンコクでは市民の間に不安が広がる中、地元当局が建物の危険度や耐震性を確認する検査を続けています。
1日は、バンコク中心部にある41階建てのマンションで検査が行われ、担当の職員がマンションの管理会社から説明を受けながら被害状況を確認しました。
このマンションには、日本人を含めたおよそ900人が暮らしていますが、廊下の天井がはがれ落ちたり、至るところで壁に亀裂が入ったりしていて、職員たちは、亀裂が入った壁を撮影するなどして、詳しく調べていました。
住んでいる部屋の天井に亀裂が入ったという50代のタイ人の女性は「問題がある部屋には住みたくないので引っ越したいです。もし、また地震が起きたら、絶対に引っ越します」と話していました。
バンコクには5万人以上の日本人が暮らしていますが、地元当局によりますと、バンコク市内では建物の被害が1万件以上、報告されているということで、自宅が被害を受けた日本人も少なくありません。
検査を行った担当者は「しっかり調査をすることでふだんと変わらない生活を送れるようになると思う。不安を取り除くため、なるべく早く調査を終えたい」と話していました。
タイ副首相 日本に専門家派遣など要請
地震の被害を受けて、バンコクにある日本大使館の大鷹正人大使は1日、タイのアヌティン副首相と面会しました。
面会の後、取材に応じたアヌティン副首相は、日本側に対し、倒壊した建設中の高層ビルについてタイ政府が設置した調査委員会に専門家を派遣することや、災害時の警報システムの知見を共有することなどを要請したと明らかにしました。
これについて、大鷹大使は面会後「倒壊の原因究明についてわれわれができるサポートはしたい」と述べ、できるかぎりの支援を行う用意があると伝えたということです。
バンコクには5万人以上の日本人が暮らしていて、大鷹大使は、地震の被害状況について英語で発信するなど、在留邦人への支援を続けていくよう求めたということです。
日本の国際緊急援助隊 医療チーム ミャンマーへ出発
ミャンマー中部で発生した大地震を受けて、政府の国際緊急援助隊の医療チームが現地に派遣されるのを前に、1日夜、羽田空港で結団式を行いました。
先月28日に発生したミャンマー中部を震源とする大地震を受け、政府は、医師や看護師ら32人からなる国際緊急援助隊の医療チームを派遣することになりました。
出発を前に、1日夜、羽田空港でチームの結団式が行われ、ミャンマー情勢に詳しい外務省職員の矢間秀行団長は「日本として現地の人に寄り添った支援ができると思う。できるかぎりのことをして、全員無事に帰ってきたい」と述べました。
このあと、医療チームの大場次郎医師は記者団の取材に応じ「発生から時間が経過し、徐々に、感染症や暑さ、粉じんなどによる疾病に移行する時期になっている。日本でさまざまな災害に向き合ってきており、海外の現場でも多くの命を救える機会があると思う」と述べました。
また、増田由美子チーフナースは「現地の方々はすごく不安だと思うので、こまやかに声かけをして、不安の除去に努めたい」と話していました。
医療チームは、2日午前0時半ごろ、日本を出発し、午後には、ミャンマーに入る予定で、すでに派遣されている調査チームと合流して、およそ2週間、被災した人たちの治療などにあたることにしています。
WFP「地震は最悪のタイミングで起きた」
国連のWFP=世界食糧計画の担当者は1日、ミャンマーの最大都市ヤンゴンからオンラインの会見を開き「地震はミャンマーの人々にとって最悪のタイミングで起きた」と訴え、各国に支援を呼びかけています。
国連によりますとミャンマーでは4年前のクーデター後、軍と民主派勢力側との戦闘で、2000万人が人道支援を必要とする状況が続いてきましたが、WFPは地震の2週間ほど前に、各国からの資金不足によって、食料支援を大幅に削減せざるをえないと発表していました。
地震を受けて、首都ネピドーや第2の都市マンダレーなどで緊急の食料配布を始めているものの、資金が足りないため、ミャンマー各地の倉庫に食料の備蓄があっても、被災地に運ぶのが難しい状況だということです。
WFPの担当者は「今月中に85万人に食料と現金を支援したいがニーズは膨大だ。戦闘の終結と人道支援へのアクセスが妨げられないこと、そして、十分な資金が支援には欠かせない」と訴えています。