10月1日から窓口負担が変わるのは、これまで1割となっていた人たちの一部です。
負担が1割から2割に引き上げられるのは、
▽単身世帯は年収200万円以上、
▽75歳以上の夫婦2人で暮らすなど、複数世帯は世帯年収が320万円以上の人たちです。
この年収未満の人たちの負担は変わらず1割のままです。
すでに3割となっている現役世代並みの所得があるとされる人の負担も変わりません。
厚生労働省によりますと、1割負担の人の年間の窓口負担額は平均でおよそ8万3000円で、2割に引き上げられても「配慮措置」のため10万9000円ほどに抑えられるとしています。 見直しの背景には、高齢化の進展による医療費の増大があります。 昨年度の75歳以上の1人当たりの医療費は93万9000円で、75歳未満のほぼ4倍となっています。 後期高齢者の医療費の財源は、患者の窓口負担を除いて公費がおよそ5割、残りの4割は現役世代が支払う保険料からの支援金で賄われています。 厚生労働省は今回の措置によって、年間で公費を980億円、現役世代が支払う保険料からの支援金を720億円、抑えられると試算しています。
▽従業員が501人以上の企業に勤務し、 ▽週20時間以上働くこと、 ▽1か月の賃金が8万8000円以上、 ▽1年以上の雇用の見込みがあり、 ▽学生ではないことの5つを満たす必要がありました。 5つの要件のうち、10月1日から2つが緩和されます。 具体的には、 ▽従業員は101人以上、 ▽勤務期間は2か月以上雇用の見込みとしました。 厚生年金に加入すると、国民年金と比べて老後に受け取る年金額が多くなるほか、遺族年金、それに障害年金の受給金額も増えます。 医療保険は、健保組合などが運営する健康保険に加入することになり、 ▽けがや病気で働けなくなった場合の「傷病手当金」や、 ▽出産のために休んだ際の「出産手当金」を受け取ることができるようになるなど、保障が手厚くなります。 厚生年金や健康保険の保険料は、加入者と事業者が折半して納付することになり、これまで国民年金と国民健康保険に加入し保険料すべてを負担していた人は、自己負担が下がります。 一方、これまで配偶者の扶養に入り、保険料を支払っていなかった人が厚生年金などに加入する場合は、新たに保険料の負担が生じることになります。 政府は、パートなどが厚生年金に加入する企業の従業員の人数について、再来年の10月には51人以上まで緩和する方針を決めていて、最終的には撤廃することも検討しています。 また、公的年金に上乗せする「個人型」の確定拠出年金=「iDeCo」が利用しやすくなります。 これまで、「企業型」の確定拠出年金に加入している会社員が加入する場合、労使の合意などが要件となっていましたが、10月1日からは合意がなくても加入できます。 掛け金は、「企業型」と合わせて月額5万5000円までで、このうち「iDeCo」は、月額2万円までの範囲で自由に組み合わせることができます。
中学生以下の子どもが対象の児童手当は、 ▽3歳未満は月1万5000円、 ▽3歳から小学生までの第1子と第2子は1万円、第3子以降は1万5000円、▽中学生は1万円が支給されています。 しかし、一定以上の収入を超えた場合には、手当は支給されません。 その代わりに「特例給付」として子ども1人当たり一律、月5000円が支給されていますが、今月からは、一部の世帯では特例給付も支給されなくなります。 例えば、扶養に入っている配偶者と子どもが2人いるケースでは、世帯でいちばん収入がある人の年収の目安が1200万円以上の場合には除外され、支給されなくなります。 浮いた財源は、待機児童の解消に活用されることになっています。
夫の昇さん(84)ととともに、10月1日から医療費が段階的に増える対象になっています。 去年から前立腺がんを患う昇さんは、骨に転移した影響で腰やひざも悪くなり、遠くまで歩くことが難しくなりました。 この日は、医療費の負担が増える前の9月中に歯の治療を済ませたいと、歯科医を受診しました。 詰め物を入れて処置が終わる予定でしたが、歯の痛みが残ったため、今月以降も治療が続くことになりました。 治療にあたった歯科医師は、「10月から医療費が上がると知らせるとびっくりする患者がたくさんいます。コロナで“受診控え”が増えましたが、同じように受診を控える高齢者が出てくると思います」と話していました。 小島さん夫婦の場合、昇さんのがんの治療などで費用がかさみ、毎月の医療費は合わせて2万5000円ほどかかります。 このうち、1万8000円は医療費が一定の上限額を超えた際に返還される国の「高額療養費制度」を利用していて、今後も金額は変わりません。 一方、残りの7000円は薬や持病の不整脈の診療などにかかる費用で、3年後の令和7年9月までは急な負担の増加を軽減する措置により月に最大3000円負担が増え、3年後以降は負担額は現在の倍の月1万4000円になる見込みです。 2人の毎月の収入は年金を中心に30万円余りですが、ことしは年金の支給額が減り、食料や日用品の値上げも相次いでいて、今後への不安は尽きないと言います。 小島さんは、「夫の医療費は高額なので、この先、本当に医療費が2倍になったらと思うと、とても耐えられません。体や健康に関する医療費なので削るわけにもいきません。年を取るほどよいことがあると思って頑張って仕事もしてきましたが、やりきれない気持ちです」と話していました。
50代の会社員の女性は、「私たちの負担額は現在の3割からこの先もっと増えていくのではという心配があります。高齢者でも余力のある人、年収の多い人は負担してもらってもいいのかなと思います」と話していました。 また、30代の会社員の男性は、「これ以上、現役世代の負担を上げると、その分苦労するとか自分の思い描く社会や人生にならないとかになったらよくないので、そこは後期高齢者の人も負担していいのかなと思います」と話していました。 一方、40代の主婦は、「物価はどんどん上がるのに給料は上がる実感はない中、私たちの世代としては助かると思いますが、今後、自分がそちらの立場になったときにどうなっていくのかなという不安のほうが大きいです」と話していました。
このうち、160万人の対象者がいる東京都で制度の運用にあたる東京都後期高齢者医療広域連合の白鳥幹明管理課長は「現役世代の負担を抑えながら医療保険制度を持続可能なものにするための見直しですが、必要な医療の受診を控える“受診控え”は大きな病気につながりかねず、やめてほしいです」としています。 そのうえで、「医療費の負担を抑えるためには、まずはかかりつけ医への受診を念頭に、薬はジェネリック医薬品の利用なども検討してほしい。医療費が高額になる場合も『高額療養費制度』の利用で療養費の払い戻しを受けられるので、忘れずに手続きしてほしい」と話していました。
パートなどの厚生年金の加入要件はこう変わる
児童手当「特例給付」 支給されなくなるケースも
高齢者の夫婦は医療費が段階的に増加「やりきれない気持ち」
後期高齢者の制度変更 現役世代からは
「“受診控え”はやめて」