近称の指示代名詞。 話し手に近い場所・時・事柄などをさす語。 この所。
(1)話し手の現にいる場所。
「~はどこだろう」「以前~に来たことがある」
(2)現在話題にしている場所・地点・箇所。
「次に急坂があって, ~を過ぎれば山頂はすぐだ」「昨夜, ~まで読んだ」
(3)現在話題にしている事柄・状態。
「~のところをよく考えてくれ」
(4)過去から経過してきた結果としての現在の状態。
「~にめでたく華燭の典をあげられました」「~が思案のしどころ」「事~に至る」
(5)特にさし示すべき重要な事柄・状態。
「~一番という時」
→ ここぞ
→ ここに
(6)現在を含んだ, ある期間。 現在を中心に過去にも未来にも用いる。
「~数年, 豊作続き」「~数日が山だ」
(7)話し手が現在いる国。 この国。 また, この世。 現世。
「唐土も~も思ふことに堪へぬ時のわざとか/土左」「船の楽どもの舞ひ出でたるなど, 大方~の事とは思し召さず/栄花(つぼみ花)」
(8)人称代名詞のように用いる。 (ア)一人称。 話し手自身をさす。 この身。
「~にも心にもあらでかく罷るに/竹取」(イ)三人称。 話し手の近くにいる人を敬意を込めていう。 こちらの方。 「~もかしこも, うちとけぬ限りの, けしきばみ心深き方の御いどましさに/源氏(末摘花)」
<i>~一番</i>
物事の分かれ目となる重大な局面。
「~の強さ」
<i>~で会ったが百年目</i>
ここで出会った今, 命運が尽きたと思え, の意。 探していた敵などに出会った時にいう。
<i>~ばかりに日は照(テ)らぬ</i>
ここだけによい事があるわけではない。 世間至る所に生活の道はあるということ。
<i>~はひとつ</i>
(1)ここはちょっと。 ここはためしに。
「~田舎にでも帰って出直そう」
(2)ここはどうぞ(…してください)。
「~御勘弁のほどを」「~お手柔らかに」
<i>~までお出(イ)で甘酒(アマザケ)進(シン)じょ</i>
〔「進じょ」は「進ぜん」の転。 「進上」とも書く〕
歩き始めた子供を遊ばせるときの言葉。 また, 自分のいる場所に相手が近づけないのを知ってからかうときの言葉。
<i>~を最後</i>
ここが最後の運命の窮まるところと考えて全力を尽くすこと。
「~と攻め戦ふ/平家 8」
<i>~を先途(センド)と</i>
今が勝敗の分かれ目であるとして死力を尽くすさま。
「~防戦なすにぞ/近世紀聞(延房)」
<i>~を踏(フ)んだら彼所(アチラ)が上(ア)がる</i>
世の中のことはすべて密接な関係があって, 互いに影響しあっている。
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