(1)(人間や物が)存在しない。 完全な非存在の場合も, ある場面に不在の場合もある。
「地獄は本当にあるか~・いか」「ほめられて喜ばない人は~・い」「ここに置いておいた消しゴムが~・い」「家には相談する相手も~・い」
(2)(事柄が)起こらない。 行われない。
「今日は授業が~・い」「この川の絶ゆること~・く/万葉 36」
(3)(人間や事物について)所有していない。 (ア)人が財産などを所有していない。
「家も~・いし, 妻子も~・い」「今日は金が~・い」(イ)人や物がしかるべき属性を欠いている。 「風格が~・い」「意味の~・い行為」「迫力の~・い時代劇」「このパンはひからびて味が~・い」(ウ)人がある能力・経験や感覚などをそなえていない。 「学力が~・い」「知恵も~・いし, 度胸も~・い」「いいアイディアが~・い」「やる気が~・い」
(4)数量・時間などを表す語を受けて, その数量や時間に達していない意を表す。
「駅まで一キロも~・い」「試験まで一週間と~・い」
(5)(人間が)生存していない。 死んでいる。 《亡》「今は~・い人」
(6)他に類がない。 またとない。
「その時の情けなさそうな顔といったら~・かった」「~・きすきものにて, 朝夕琴を指しおくことなかりけり/十訓 10」
(7)(「…こと」を受けて)(ア)否定を表す。
「欲しくないことも~・いが, わざわざ買う気はしない」(イ)未経験であることを表す。 「まだ食べたことが~・い」「こんなみじめな思いをしたことは~・い」(ウ)不必要であることを表す。 「何も急ぐことは~・い」(エ)可能性がないことを表す。 「まさか死ぬことも~・いだろう」
(8)(補助形容詞)
(ア)形容詞・形容動詞の連用形, および一部の助動詞「だ」「たい」「らしい」などの連用形の下に付いて, その状態の打ち消しを表す。
「それほど寒く~・い」「あまり静かでは~・い」「顔を見たくも~・い」「学生らしく~・い」「ここに使はるる人にも~・きに/竹取」(イ)動詞の連用形に助詞「て」の付いたものに付いて, 「…ている」「…てある」という状態の打ち消しを表す。 「電車が全然動いて~・い」「彼は死んで~・い」「まだ夕食を食べて~・い」「窓があけて~・い」
(9)名詞の下に付いて, 否定の意を表す形容詞をつくる。
「頼り~・い」「情け~・い」
﹛派生﹜~げ(形動)~さ(名)
︱慣用︱ 罪が~・根も葉も~・満更でも~・身も蓋(フタ)も~・目が~/一も二も無く・声なき声・手もなく・武士に二言なし
無い袖(ソデ)は振(フ)れない
持っていないものは出しようがない。
「いくら催促されたって, ~ないよ」
無い物は無・い
⇒ 「無い物」の句項目
無きにしも非(アラ)ず
⇒ 「無き」の句項目
無くて七癖(ナナクセ)有って四十八癖(シジユウハツクセ)
人には多かれ少なかれ, みな癖がある。
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