(助動)
〔格助詞「に」に動詞「あり」の付いた「にあり」の転〕
断定の助動詞。 体言および活用する語の連体形に接続する。 また, 副詞の「かく」「しか」, 助詞の「ば」「ばかり」「て」「と」「のみ」「まで」「より」などにも付く。
(1)事物や動作・状態などについて説明し断定することを表す。 である。 だ。
「世の中にある人, ことわざしげきもの〈なれ〉ば, 心に思ふことを, 見るもの, 聞くものにつけて, いひいだせる〈なり〉/古今(仮名序)」「この人, 歌よまむと思ふ心ありて〈なり〉けり/土左」「この大臣(オトド)の末かく〈なり〉/大鏡(頼忠)」「人に恐れ, 人に媚ぶるは, 人の与ふる恥〈に〉あらず。 貪る心にひかれて, 自ら身を辱しむる〈なり〉/徒然 134」
(2)場所などを表す語に付いて, そこに存在することを表す。
「春日〈なる〉三笠の山に月の舟出づ/万葉 1295」「里〈なる〉侍(サブライ)めしにつかはしなどす/枕草子 87」
(3)(連体形「なる」の形で)ある名をもっていることを表す。
「大井〈なる〉所にて人々酒たうべけるついでに/後撰(雑三詞)」「此の一巻や, しなのの俳諧寺一茶〈なる〉ものの草稿にして/おらが春」
(4)(連用形「なり」の形で)指定する意で事柄を並列することを表す。
「婿〈なり〉甥〈なり〉, 治兵衛がこと頼む/浄瑠璃・天の網島(中)」
(5)(終止形「なり」の現代用法)(ア)(多く「也」と書く)証書・帳簿などで金額を示すのに, それ以下の端数のないことを表す。
「一金五百万円也」(イ)珠算の読み上げ算で, 一項の数値ごとに付けて区切りを明らかにする。 「御破算で願いましては百円〈なり〉, …」
〔(4) は近世以降の用法。 しだいに助詞化して, 並立助詞としても扱われる〕
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