※一※ (動カ五[四])
※一※(他動詞)
(1)物に手をかけて近くへ寄せる。 《引》
〔綱や網の場合は「曳く」とも書く〕
(ア)物に手をかけて力を入れ, 全体を自分の方へ近寄せる。 引っ張る。
⇔ 押す
「押しても~・いてもびくともしない」「地曳き網を~・く」(イ)装置や道具の一部分を, 自分の近くへ寄せる。
「サイド-ブレーキを~・く」「ひもを~・くと明かりがつく」「引き金を~・く」(ウ)引き抜く。 「大根を~・く」「お前の山の小松~・き遊ぶ/源氏(初音)」
(2)人・動物や物を離れないようにつないだりして, 自分が先に立ち, ともに移動する。 引っ張る。 (ア)車両などを引っ張って進む。 《引・牽・曳》「荷車を~・く」「たくさんの貨車を~・いた機関車」「犬に橇(ソリ)を~・かせる」(イ)動物などをついて来させる。 《引・曳》「馬を~・いて村へ帰る」
(3)無理について来させて, ある場所に移動させる。 《引・曳》「屠所に~・かれる羊」
(4)地面をこすって進むようにする。 引きずる。 《引・曳》「裾(スソ)を~・く」
(5)自分の体の中に入れる。
「かぜを~・く」
(6)人を誘い寄せる。 (ア)呼びこむ。 誘いこむ。 《引》「店先で客を~・く」(イ)他人の注意・心をこちらに向けさせる。 《引・惹》「人目を~・くような服」「同情を~・く」「美貌に~・かれる」「気を~・く」「人柄に~・かれる」
(7)線状の施設を作って, 自分の方へ導き入れる。
「用水路を作って水を~・く」「水道を~・く」「電話を~・く」
(8)のばす。 《引》(ア)縮んでいたものを広げる。
「窓にカーテンを~・く」「幕を~・く」(イ)表面に広く塗る。 「フライパンに油を~・く」「蝋(ロウ)を~・いた紙」(ウ)本体から長く伸びるようにする。 「声を長く~・く」「裾を長く~・く」
(9)線を書く。 線状に長く伸ばす。
「線を~・く」「図面を~・く」「納豆が糸を~・く」
(10)長く続ける。
「声を長く~・く」
(11)一部を取る。 《引》(ア)数量や金額について, 一部を取り去る。 少なくする。
「一〇~・く三は七」「毎月の給料から税金を~・かれている」(イ)言葉・証拠などをあげる。 「徒然草の一節を~・く」「吉野川を~・きて世中をうらみきつるに/古今(仮名序)」(ウ)くじ引きなどで, 一つを選んで自分のものとする。 「おみくじを~・く」「(トランプデ)ばばを~・く」(エ)こっそり盗む。 「ねずみが餅を~・く」
(12)辞書・索引などを参照する。 《引》「辞書を~・いて調べる」「電話帳を~・いて番号を調べる」
(13)血統・素質などを受け継ぐ。 《引》「この子は祖父の血を~・いて気が強い」「彼の哲学はドイツ観念論の流れを~・いている」
(14)弓に張った弦を引っ張る。 また, 弓につがえた矢を射る。 《引》「的に向かって弓を~・く」
(15)退却させる。 《引・退》(ア)出ていた体・手足などを引っこめる。
「体を~・いて車をよける」「もう少しあごを~・いて」(イ)自分の側の軍勢を退却させる。 「兵を~・く」(ウ)(「身を引く」の形で)それまでかかわりのあった人や事柄との関係を断つ。 「実業界から身を~・く」
(16)花札で遊ぶ。 《引》「花札を~・く」
(17)引き出物として与える。 また, 配付する。
「布施に馬を~・き給へりける/今鏡(村上の源氏)」
(18)湯を汲んで浴びる。
「湯殿しつらひなどして御湯~・かせ奉る/平家 10」
(19)取り外す。
「橋を~・いたぞ, 誤ちすな, とどよみけれども/平家 4」
(20)贔屓(ヒイキ)にする。
「この弟の左の大臣を院とともに~・き給ひて/今鏡(藤波中)」
※二※(自動詞)
(1)後ろにさがる。 退却する。 また, やり始めたことを途中でやめる。 《引・退》「進むことも~・くこともできない」「言いだしたらあとには~・かない」
(2)長く続いた勤めをやめる。 引退する。 《引・退》「 H 先生はこの三月で本校をお~・きになる」「今度の公演を最後に舞台から~・くことになった」
(3)勤めなどを休む。
「『寝てゐるか』『あい, 此頃は~・いてやすが, お前だから出たのよ』/洒落本・寸南破良意」
(4)十分な程度にあったものがなくなる。 《引・退》
⇔ 出る
「潮が~・く」「汗が~・く」「顔から血の気が~・く」「やっと熱が~・いた」「腫れが~・く」
‖可能‖ ひける
※二※ (動カ下二)
⇒ ひける
︱慣用︱ あとを~・糸を~・尾を~・杖(ツエ)を~・手薬煉(テグスネ)を~・手を~・弓を~・我が田へ水を~/鼠(ネズミ)に引かれそう
引くに引けない
引き下がりたいと思っても, 今さら引き下がるわけにいかない。
引くの山の
〔「山」は祇園会(ギオンエ)の山鉾(ヤマボコ)の意〕
多忙・繁雑なさま。 ごたつくさま。 何のかの。
「綿が高いの銭が安いの手代共が寄合うて, 勘定が合ぬの~/浄瑠璃・夏祭」
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