(係助)
〔現在では「わ」と発音する。 助詞「を」の下に付くとき, 「をば」となることがある〕
種々の語や文節, 活用語の連用形などに接続する。 多くの事柄の中から, 一つのものを取り出して提示するのが本来の用法である。
(1)特に一つの物事をとりあげて提示する。
「お酒~ぼくが買う」「食事~もうすんだ」
(2)題目を提示して, 叙述の範囲をきめる。
「象~鼻が長い」「ぼく~学生だ」「今日~よい天気だ」
(3)二つ以上の判断を対照的に示す。
「行き~よいよい, 帰り~こわい」「親に~孝行, 友人に~信義」
(4)叙述を強める。 (ア)
〔格助詞・副詞などに付いて〕
意味や語勢を強める。 「たいてい~, そのまま帰る」「君と~もう会わない」(イ)
〔動詞・形容詞の連用形, および助詞「て・で」に付いて〕
一続きの叙述の一部分を強調する。
「絶対に行き~しない」「なるほど美しく~ある」「まだ書いて~いない」「真実で~ない」
(5)〔「…(で)は…(だ)が」の形で〕
譲歩の気持ちを表す。 活用語の連用形に付くこともある。
「雨も, 降り~降ったが, ほんのわずかだ」「ごめんどうで~ございますが」
(6)動作・作用の行われる条件・事態を表す。 現代語では「ては」の形で用いられるが, 古語では「ずは」「くは」「しくは」などの形をとることもある。
「不正があって~ならない」「おこられて~大変だ」「会社として~万全の備えをするつもりです」「忘れて~夢かとぞ思ふ/伊勢 83」「あらたまの年の緒(オ)長くあひ見ず~恋しくあるべし/万葉 4408」「鶯の谷よりいづるこゑなく~春くることをたれかしらまし/古今(春上)」「恋しく~形見にせよとわが背子が植ゑし秋萩/万葉2119」
→ ずは(連語)
→ ずば(連語)
(7)文末にあって, 終助詞的に用いられる。 体言や活用語の連体形に接続して, 感動の意を表す。 よ。
「はも」「はや」などの形をとることがある。 「歯固めの具にももてつかひためる~/枕草子 40」「あはれ, それを奉り鎮め給へりし~や/大鏡(道長)」
(8)(文末にあって終助詞的に用いられ)話し手自身に対して, 念を押すような気持ちでの詠嘆を表す。
「すはよい~とて追たそ/史記抄 3」「又五十字, 百字有る歌もあらう~さて/狂言・萩大名(虎寛本)」
〔(7)は上代では「はや」「はも」の形をとる。 (8)は中世以後の用法。 近世では「わ」と表記されることが多くなり, 現代語で主として女性が用いる終助詞「わ」の源流となる〕
→ はや
→ はも(連語)
→ わ(終助)
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