英イングランドにあるチューダー朝の建物の壁に、「おびただしい」魔女の印が刻まれているのが見つかった。
これらの刻印は厳密には厄よけの印で、当時は悪に対するお守りの儀式になると考えられていた。
刻印発見のニュースはちょうどハロウィーンの時期に合わせ、歴史遺産や建物、史跡を管理する非営利団体「イングリッシュ・ヘリテージ」によって発表された。
イングリッシュ・ヘリテージが29日に発表した声明によると、ゲインズバラ・オールドホールは英東部リンカンシャー州に位置するマナーハウスで、ヘンリー8世や当時の王妃キャサリン・ハワードが訪問したこともあるという。
刻印を発見したのはイングリッシュ・ヘリテージのボランティア、リック・ベリーさん。2年をかけて、この大邸宅に刻まれた約20の刻印を記録した。
イングリッシュ・ヘリテージによると、「おびただしい」模様がそこに含まれるものの、それは特に邸宅内の使用人区画に集中していた。
シンプルな円のマークも見つかった。通常であれば、円の内側に悪魔を閉じ込めるための花びら6枚(「ヘキサフォイル」と呼ばれる)が彫られているはずだ。
これについてイングリッシュ・ヘリテージの広報担当者はCNNへのメールで、一つの説として、花びらが摩滅したか、彫った人の技量を超える模様だった可能性が考えられるとの見方を示した。
「マリアマーク」と呼ばれ、聖母マリア(Virgin Mary)に保護を求める印との見方がある絡み合ったVマークや、悪から身を守るために使われる五角形も見つかった。
ベリーさんはイングリッシュ・ヘリテージから送られたメールを通じ、「イングリッシュ・ヘリテージのボランティアとして20年近くゲインズバラで活動してきた。この建物のことは熟知しているので、数年前に記録にない厄よけの印を見つけた時には驚いた」と振り返った。
「他にも見つからないか確認してみることに決め、今も探し続けている。直近のものは数週間前に見つかった小さな五芒星(ごぼうせい)だが、あと何個見つかるかは誰にも分からない」(ベリーさん)
呪いが掛けられていた対象は、1596年から屋敷を所有していたウィリアム・ヒックマンとみられる。イングリッシュ・ヘリテージは声明で、上下逆さまに書かれたヒックマンの名前が見つかったとも説明。X(旧ツイッター)への投稿では、一連の刻印は「おそらく」この時期に彫られたものとみられると指摘した。誰かの名前を汚すことはその人物に呪いを掛けることになると広く信じられていたが、これはローマ帝国やアングロ・サクソンの支配下にあった時代に一般的だった風習で、これまでイングリッシュ・ヘリテージの建物で見つかったことはなかった。
今回の邸宅では、焼け焦げた跡も約100カ所見つかった。焼け跡は火災に対するお守りになると考えられていた。