英語の
民間試験が
延期された「
大学入学共通テスト」に
新たな
懸念です。
共通テストには、
国語と
数学に
記述式の
問題が
導入されますが、
採点を
任された
民間事業者に、
大学入試センターから
問題と
正答例が
試験を
実施する
前に
知らされる
仕組みになっていることが
分かりました。
センターは、
採点を
迅速に
行うためとしていますが、
専門家は、「
試験の
前に、
民間事業者に
問題などが
知らされれば、
漏えいなどの
懸念が
ある」と
指摘しています。
センター試験に
代わる「
大学入学共通テスト」は、
再来年1月に
実施され、
国語と
数学に
従来のマークシート
方式に
加えて
記述式問題が
初めて導入されます。
採点は、ベネッセの関連会社に委託されましたが、国は50万人に上る記述式の採点をどのように適切に進めるのか、詳細を明らかにしていません。
これについて、NHKは採点の手順などを大学入試センターが記した「仕様書」と呼ばれる資料を入手しました。
そこにはベネッセの関連会社が試験を実施する前に、正答例や採点基準の作成に関与すると明記されていました。つまり、民間事業者は、試験前から問題と正答例が知らされる立場にあるということです。
大学入試センターは、こうした方法でなければ、20日間という短期間で大量の採点を行うことはできないとしたうえで、守秘義務などを厳守してもらうことで、問題の漏えいなどを防ぎたいとしています。
共通テストをめぐっては、先日、英語の民間試験の導入が延期されたばかりです。
大学入試に詳しい東京大学の南風原朝和名誉教授は「試験の教材を販売する教育産業の関連会社が、試験実施前に問題や正答を知ることになれば極めて異例だ。問題の漏えいにとどまらず、採点しやすさを優先に基準が改変されることなど懸念がある」と指摘しています。
記述式問題 経緯と課題
記述式の問題は、従来のマークシート方式では難しいとされた思考力や表現力を測定するため、2021年1月に始まる「大学入学共通テスト」の国語と数学で、新たに導入されることになりました。
国語は、120文字を上限に、3つの問題が出されて、評価は5段階で行われます。
数学は、数式などを答えさせるものが3つ出題され、マークシートと同様に点数化されます。
その導入で課題となったのが、採点をどうするかでした。
大学入試センター試験はすべてマークシートなので機械で採点できましたが、記述式の場合はそれは不可能です。当初は、AI=人工知能の活用も検討されましたが、実用化は見送られました。
結果として、採点は公募によって、ことし8月、ベネッセの関連会社、「学力評価研究機構」に委託することが決まりました。
このベネッセの関連会社は、およそ1万人を採点者として活用する予定ですが、そこには学生のアルバイトも含まれていて、試験の公正、公平さが確保できるか、懸念する声が上がっています。
一方、各大学は、記述式の5段階評価をそれぞれ点数化して合否判定に使うことになっていますが、東北大学など一部の大学は公平性への懸念などを理由に共通テストの記述式を合否判定に原則使わないことを公表しています。