英国の権威ある建築賞を受賞した大学の建物が築30年にも満たないうちに取り壊されることが判明し、批判の声が高まっている。
センテナリービルはイングランド北部のサルフォード大学のために建てられ、1996年に王立英国建築家協会(RIBA)によるスターリング賞を受賞した。この賞は英国で最も優れた新築ビルに贈られる。
サルフォード大学はCNNに対し、数年間にわたる無人の状態を経て、この建物が解体される予定であることを認めた。
同大学は12日、CNNに対し声明で「センテナリービルは数十年にわたり大学施設の一部となってきたが、残念ながら老朽化したインフラにより、もはや現代の基準や要件を満たしていない」と述べた。
声明によると「現在、建物の築年数の3分の1は無人の状態」であり、取り壊しは地域の「包括的な」再開発の一環であるという。
建築家のスティーブン・ホダー氏は12日、CNNに寄せた声明で、この発表に「大いに落胆」していると述べた。
ホダー氏は「これは懐旧の念からくるものでもなければ、RIBAスターリング賞を受賞したからでもなく、私たちの経験の発展にとってこの建物が重要だったからでもない」と話す。
同氏は「築30年の建物の取り壊しを支持することはできない。取り壊しと建て替えによる炭素排出について真剣に検討する必要がある」と続けた。
「老朽化したインフラ」は取り壊しを正当化する理由にはならず、アップグレードしたり、取り換えたりすることは可能だという。同氏は、持続可能性の証明を推進している大学にとって、取り壊しは間違いなくその方針の信頼性を損なうものであるとし、再考を強く求めている。
英国の20世紀の建物を保護する活動団体「20世紀協会」は10月、この建物を保護するためヒストリック・イングランドに登録申請書を提出した。ヒストリック・イングランドは、同国の公共環境の保護に取り組む公的機関だ。
協会は12日、CNNに寄せた声明で、この建物を学校またはコミュニティーセンターに変える計画が頓挫し、取り壊す計画になったことは「非常に残念」だと述べた。大学には再考を促すとの考えを示し、「これは洗練された現代建築であり、適応できる再利用の機会があることは明白だ」としている。
RIBAの理事長ジャック・プリングル氏は、センテナリービルについて個別にコメントすることはできないとしながらも、「建物を創意工夫して再利用することは、(温室効果ガス排出量を実質ゼロにする)『ネットゼロ』の未来にとって極めて重要だ」と述べた。