イスラエルの有力メディア、ハーレツは、5日、イスラエルの戦時内閣が、ガザ地区の住民に届ける人道支援物資を増やすため、ガザ地区北部と接するエレズ検問所を一時的に開放するなどの緊急措置を決定したと伝えました。
ハーレツによりますと、イスラエル政府は声明のなかで「支援の拡大は人道危機を防ぐためのもので戦闘を継続させ、戦争の目的を達成するために不可欠だ」としています。
複数の欧米メディアは、エレズ検問所が開放されるのは去年10月にイスラエルとハマスの戦闘が始まってから初めてで、今回の緊急措置は、アメリカからの要求を受けた対応とみられると伝えています。
アメリカのバイデン大統領は4日、イスラエルのネタニヤフ首相と電話で会談し、民間人の保護などでイスラエル側の対応に変化が見られなければアメリカの政策を見直す可能性があると警告していました。
ガザ地区には南部のラファ検問所などから支援物資が搬入されていますが、イスラエル側の検問などで北部の住民には行き届かず、深刻な食料不足に陥っていて、今後、エレズ検問所がいつ開放されるかや人道状況の改善につながるかが焦点です。
エレズ検問所とは 戦闘開始後は半年近くにわたって封鎖
エレズ検問所は、イスラエルとガザ地区北部との境界にあり、主に人の往来を管理する検問所です。
過去にはイスラエル側に向かうパレスチナ人の労働者や、ガザ地区に出入りする各国の外交使節やジャーナリストなどが利用してきました。
去年10月7日のイスラム組織ハマスによる攻撃の際には戦闘員が検問所を襲撃してイスラエル側に侵入したとされ、周辺で撮影されたとみられる映像には、ガザ地区とイスラエル側を分離する壁が爆破され戦闘員たちが走って行く姿などが写っていました。
検問所はガザ地区での戦闘が始まってから半年近くにわたって封鎖されていましたが、開放されれば人道状況が深刻化するガザ地区北部に陸路でより多くの支援物資を搬入できるようになることから、開放の時期や期間が焦点となります。
米「イスラエル政府発表の措置を歓迎」
アメリカ・ホワイトハウスのNSC=国家安全保障会議のワトソン報道官は4日、声明を発表し「われわれはバイデン大統領の要請を受けてイスラエル政府が発表した措置を歓迎する。ガザ地区北部に新たな支援ルートを確保するためのエレズ検問所の開放などは完全かつ迅速に実施されなければならない」と強調しました。
その上で「アメリカのガザ地区に関する政策は、こうした措置や、市民や人道支援関係者の保護など、イスラエルの迅速な行動に対するわれわれの判断で決まる」として、イスラエル側の対応を引き続き注視する姿勢を示しました。
国連「前向きなニュース」
国連のデュジャリック報道官は4日、NHKの取材に対し「これまでわれわれはガザへの検問所を増やし、より多くの支援物資を搬入することができるよう求めてきた。これは前向きなニュースだ」として、検問所の開放を歓迎しました。
その一方で「これがどのように実施されるかを見極めなければならない」として、実際に人道支援物資の搬入につながるのか注視していく必要があると指摘し、「人道目的の停戦と大規模な援助が必要だ」として即時停戦の必要性を改めて強調しました。