【詳くわしく】来らい年度ねんどの税制ぜいせい改正かいせい 焦点しょうてんは？家計かけいへの影響えいきょうどうなる？

「年収ねんしゅう103万まんの壁かべ」の見直みなおしの議論ぎろんに加くわえ、住宅じゅうたくローン減税げんぜい、ガソリン減税げんぜいなど暮くらしに身近みぢかな制度せいども含ふくめて幅広はばひろく議論ぎろんが行おこなわれる見通みとおしです。

今回こんかいの税制ぜいせい改正かいせいの焦点しょうてんについてまとめました。

「年収ねんしゅう103万まんの壁かべ」の見直みなおしは

税制ぜいせい改正かいせいの議論ぎろんで焦点しょうてんとなるのが税ぜい負担ふたんに関にかんする「年収ねんしゅう103万まん円えんの壁かべ」の見直みなおしです。

所得しょとく税ぜいでは、収入しゅうにゅうや所得しょとくから一定いってい額がくを差し引さしひく「控除こうじょ」の仕組しくみがあり、給与きゅうよを得えて働はたらく人ひとは「給与きゅうよ所得しょとく控除こうじょ」の55万まん円えんと「基礎きそ控除こうじょ」の48万まん円えんをあわせた103万まん円えんを年収ねんしゅうが超こえると所得しょとく税ぜいが生しょうじます。

先週せんしゅう、決定けっていされた新あらたな経済けいざい対策たいさくの中なかでは自民じみん・公明こうめい両りょう党とうと国民こくみん民主党みんしゅとうとの合意ごういに基もとづいて、「103万まん円えんの壁かべ」について「税制ぜいせい改正かいせいの中なかで議論ぎろんし引き上ひきあげる」と明記めいきされました。

今後こんご、議論ぎろんが本格ほんかく化かしますが、この中なかで焦点しょうてんとなるのが控除こうじょ額がくの引き上ひきあげ幅はばです。基礎きそ控除こうじょなどの金額きんがくを国民こくみん民主みんしゅ党とうの主張しゅちょう通どおり、103万まん円えんから178万まん円えんに引き上ひきあげた場合ばあい、政府せいふは、国くにと地方ちほうの税収ぜいしゅうがあわせて7兆ちょう円えんから8兆ちょう円えん減へると試算しさんしています。

政府せいふ・与党よとう内ないや自治体じちたいからは強つよい懸念けねんが出でていて、税収ぜいしゅうの減少げんしょうの影響えいきょうを考慮こうりょしながら議論ぎろんが行おこなわれることになります。

何なにを基準きじゅんに引き上ひきあげ幅はばを決きめるかが1つのポイントとなります。

国民こくみん民主みんしゅ党とうは、所得しょとく税ぜいの基礎きそ控除こうじょなどを103万まん円えんから178万まん円えんに引き上ひきあげる根拠こんきょとして、控除こうじょ額がくが103万まん円えんになった1995年ねんからの東京とうきょう都との最低さいてい賃金ちんぎんの上昇じょうしょう幅はばをもとにしたと説明せつめいしています。

一方いっぽう、政府せいふ・与党よとう内ないでは、最低さいてい限げんの生活せいかつ費ひには課税かぜいしないという基礎きそ控除こうじょの考え方かんがえかたを踏ふまえると、最低さいてい賃金ちんぎんではなく物価ぶっかの上昇じょうしょう率りつを用もちいることも選択肢せんたくしだという声こえがあり、議論ぎろんが活発かっぱつ化かする見込みこみです。

また、制度せいどを設計せっけいする上うえであわせて検討けんとうされるのが「特定とくてい扶養ふよう控除こうじょ」です。

「特定とくてい扶養ふよう控除こうじょ」とは19歳さい以上いじょう23歳さい未満みまんの子こを扶養ふようする親おやの所得しょとくから63万まん円えんを差し引さしひく仕組しくみで、子この年収ねんしゅうが103万まん円えんを超こえると親おやがこの控除こうじょを受うけられず税ぜい負担ふたんが増ふえることから、アルバイトなどで働はたらく学生がくせいの働はたらき控ひかえにつながっているという指摘してきも出でています。

「特定とくてい扶養ふよう控除こうじょ」は、過去かこには、基礎きそ控除こうじょなどの引き上ひきあげにあわせた対応たいおうが取とられた経緯けいいもあり、今回こんかいも扱あつかいが検討けんとうされる見通みとおしです。

ガソリン減税げんぜいは

先週せんしゅう、決定けっていされた経済けいざい対策たいさくにはガソリン減税げんぜいにつながる内容ないようも盛り込もりこまれました。

ガソリン税ぜいは「揮発きはつ油ゆ税ぜい」と「地方ちほう揮発きはつ油ゆ税ぜい」をあわせた総称そうしょうで、1リットルあたりあわせて53.8円えんが課かされ、このうち25.1円えんが本来ほんらいの課税かぜい額がくに上乗うわのせされています。

ガソリン税ぜいはもともと道路どうろ整備せいびのための特定とくてい財源ざいげんで、1974年ねんに財源ざいげん不足ふそくなどに伴ともない税率ぜいりつの上乗うわのせが始はじまりました。当時とうじ、この上乗うわのせはあくまで暫定ざんてい的てきだとしていたことから、上乗うわのせ分ぶんも含ふくめた税率ぜいりつは「暫定ざんてい税率ぜいりつ」と呼よばれていましたが、道路どうろ財源ざいげんの確保かくほを理由りゆうに上乗うわのせはその後そのごも続つづきました。

2009年ねんには、ガソリン税ぜいなど道路どうろ整備せいびのための特定とくてい財源ざいげんとされていた税収ぜいしゅうが一般いっぱん財源ざいげん化かされましたが、ガソリン税ぜいでは、厳きびしい財政ざいせい事情じじょうや温暖おんだん化か対策たいさくへの意識いしきの高たかまりを背景はいけいに「当分とうぶんの間ま税率ぜいりつ」として残のこり、同おなじ税率ぜいりつのまま続つづいています。

国民こくみん民主みんしゅ党とうはかつての「暫定ざんてい税率ぜいりつ」である「当分とうぶんの間ま税率ぜいりつ」のうち上乗うわのせ分ぶん25.1円えんを撤廃てっぱいするよう求もとめていて、議論ぎろんのポイントの1つとなっています。

また、ガソリン税ぜいをめぐっては2010年度ねんどの税制ぜいせい改正かいせいでガソリン価格かかくが高騰こうとうした際さいに上乗うわのせ分ぶんの課税かぜいを取とりやめる「トリガー条項じょうこう」が導入どうにゅうされました。

ガソリンの全国ぜんこく平均へいきんの小売こうり価格かかくが1リットルあたり160円えんを3か月かげつ連続れんぞくで超こえた場合ばあい、自動じどう的てきに発動はつどうされる一方いっぽう、3か月かげつ連続れんぞくで130円えんを下回したまわった場合ばあいには、上乗うわのせ分ぶんの課税かぜいが復活ふっかつする仕組しくみです。

トリガー条項じょうこうは、2011年ねんの東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいのあと、復興ふっこう財源ざいげんを確保かくほするために凍結とうけつされていましたが、国民こくみん民主みんしゅ党とうはトリガー条項じょうこうの凍結とうけつの解除かいじょも求もとめていて、これも焦点しょうてんの1つです。

ガソリン税ぜいの上乗うわのせ分ぶんによる税収ぜいしゅうは、年間ねんかん1兆ちょう5000億おく円えん程度ていどとなることから、上乗うわのせ分ぶんの廃止はいしやトリガー条項じょうこうの凍結とうけつの解除かいじょを行おこなった場合ばあい、税収ぜいしゅうの減少げんしょう分ぶんをどう賄まかなうのかが課題かだいとなります。

子育こそだて世代せだいの「住宅じゅうたくローン減税げんぜい」は

年末ねんまつの住宅じゅうたくローンの残高ざんだかに応おうじて所得しょとく税ぜいや住民じゅうみん税ぜいが減税げんぜいされる「住宅じゅうたくローン減税げんぜい」の子育こそだて世帯せたいなどに対にたいする優遇ゆうぐう措置そちの扱あつかいも焦点しょうてんとなります。

住宅じゅうたくローン減税げんぜいは、ことしの入居にゅうきょ分ぶんから減税げんぜいの対象たいしょうとなる借入かりいれ額がくの上限じょうげんが引き下ひきさげられています。上限じょうげんは、住宅じゅうたくの省エネしょうえね性能せいのうに応おうじて決きまり

▽省エネしょうえねや耐震たいしん性せいにすぐれた「長期ちょうき優良ゆうりょう住宅じゅうたく」は、5000万まん円えんから4500万まん円えんに、

▽消費しょうひエネルギー実質じっしつゼロの水準すいじゅんを満みたした住宅じゅうたくは4500万まん円えんから3500万まん円えんに、

▽省エネしょうえね基準きじゅんに適合てきごうした住宅じゅうたくは4000万まん円えんから3000万まん円えんに

それぞれ引き下ひきさげられています。

ただ、子育こそだて世帯せたいなどはことしに限かぎって上限じょうげんの引き下ひきさげが見送みおくられ従来じゅうらいの水準すいじゅんが維持いじされています。

国土こくど交通こうつう省しょうは建設けんせつ費ひの高騰こうとうが続つづいていることから、この措置そちを来年らいねんまで延長えんちょうするよう求もとめていてこの扱あつかいが注目ちゅうもくされます。

高校生こうこうせいなどの扶養ふよう控除こうじょの見直みなおしは

高校生こうこうせいなどを扶養ふようする場合ばあいの所得しょとく税ぜいや住民じゅうみん税ぜいの扶養ふよう控除こうじょの扱あつかいも焦点しょうてんです。

これは子育こそだて支援しえん策さくとして児童じどう手当てあてを高校生こうこうせいまで拡充かくじゅうすることに伴ともなうもので、去年きょねんの年末ねんまつに決きまった税制ぜいせい改正かいせい大綱たいこうでは、

▽所得しょとく税ぜいの課税かぜい対象たいしょうから控除こうじょ＝差し引さしひく額がくを年とし38万まん円えんから25万まん円えんに、

▽住民じゅうみん税ぜいの控除こうじょ額がくを年とし33万まん円えんから12万まん円えんに縮小しゅくしょうする案あんを示しめし、

ことし年末ねんまつに向むけて結論けつろんを出だすとしています。

今回こんかいの税制ぜいせい改正かいせいの議論ぎろんでどのような結論けつろんとなるのかが注目ちゅうもくされます。

「iDeCo」掛け金かけきんの限度げんど額がくは

公的こうてき年金ねんきんに上乗うわのせする「個人こじん型がた」の確定かくてい拠出きょしゅつ年金ねんきん＝「iDeCo」の掛金かけきんの限度げんど額がくをめぐっても議論ぎろんが行おこなわれる見通みとおしです。

「iDeCo」は、公的こうてき年金ねんきんに上乗うわのせする「個人こじん型がた」の確定かくてい拠出きょしゅつ年金ねんきんで、税ぜいの優遇ゆうぐう措置そちがあります。

掛金かけきんの上限じょうげんは、自営じえい業ぎょうや会社かいしゃ員いんといった働はたらき方かたなどによって異ことなりますが、掛金かけきんの全額ぜんがくが所得しょとくから控除こうじょされる仕組しくみになっています。

厚生こうせい労働ろうどう省しょうは、物価ぶっかや賃金ちんぎんの上昇じょうしょうに対応たいおうするとともに働はたらき方かたに中立ちゅうりつな形かたちとなるよう掛金かけきんの限度げんど額がくを引き上ひきあげる方向ほうこうで検討けんとうしていて、与党よとうの税制ぜいせい調査ちょうさ会かいでは、税制ぜいせい上じょうの観点かんてんから引き上ひきあげ幅はばなどについて議論ぎろんが行おこなわれる見通みとおしです。

退職たいしょく金きんへの課税かぜいは

退職たいしょく金きんへの課税かぜいのあり方ありかたも焦点しょうてんとなる見込みこみです。

いまの所得しょとく税ぜいの制度せいどでは退職たいしょく金きんを一括いっかつで受け取うけとる場合ばあい、

▽勤続きんぞく年数ねんすうが20年ねんまでは1年ねんにつき40万まん円えんが退職たいしょく所得しょとくから控除こうじょされますが、

▽20年ねんを超こえた分ぶんは控除こうじょ額がくが1年ねんあたり70万まん円えんに引き上ひきあげられます。

同おなじ企業きぎょうで働はたらく期間きかんが長ながくなるほど税ぜい負担ふたんが軽かるくなり、終身しゅうしん雇用こようを前提ぜんていとした仕組しくみとなっています。

政府せいふはこれまで「骨太ほねぶとの方針ほうしん」などで、転職てんしょくする人ひとが増ふえるいまの実態じったいを踏ふまえた制度せいどに見直みなおす方針ほうしんを示しめしていました。

働はたらき方かたや退職たいしょく金きんに対にたいしてさまざまな考え方かんがえかたがあるなか、議論ぎろんの行方ゆくえが注目ちゅうもくされます。

中小ちゅうしょう企業きぎょうに対にたいする法人ほうじん税ぜいの優遇ゆうぐう措置そちは

中小ちゅうしょう企業きぎょうに対にたいする法人ほうじん税ぜいの優遇ゆうぐう措置そちの扱あつかいも検討けんとうされます。

中小ちゅうしょう企業きぎょうにかかる法人ほうじん税ぜいにはさまざまな優遇ゆうぐう措置そちが設もうけられていますが、今年度こんねんど末まつに期限きげんを迎むかえるものがあります。その1つが中小ちゅうしょう企業きぎょうの軽減けいげん税率ぜいりつで、大だい企業きぎょうは所得しょとくに対にたいして23.2％の税率ぜいりつがかかりますが、中小ちゅうしょう企業きぎょうは所得しょとくのうち800万まん円えんまでの分ぶんは税率ぜいりつが15％に抑おさえられています。

また、設備せつび投資とうしを行おこなう場合ばあいに税ぜい負担ふたんを軽減けいげんする措置そちなどもあります。

経済けいざい団体だんたいからは中小ちゅうしょう企業きぎょうの経営けいえい環境かんきょうは厳きびしいとして継続けいぞくを求もとめる声こえがあがる一方いっぽう、政府せいふ内ないなどからは優遇ゆうぐう措置そちは要件ようけんを厳格げんかく化かして対象たいしょう企業きぎょうを絞しぼるべきといった指摘してきもあり、どのような議論ぎろんが行おこなわれるのか注目ちゅうもくされます。

防衛ぼうえい増税ぞうぜいの開始かいし時期じきは

防衛ぼうえい費ひ増額ぞうがくの財源ざいげんにあてるための増税ぞうぜいの開始かいし時期じきも焦点しょうてんです。

政府せいふ・与党よとうは、おととし、防衛ぼうえい力りょくの抜本ばっぽん的てきな強化きょうかに必要ひつような財源ざいげんとして法人ほうじん税ぜい・所得しょとく税ぜい・たばこ税ぜいの増税ぞうぜいを決きめ、2027年度ねんどに1兆ちょう円えんあまりを確保かくほすることを決きめました。

ただ、増税ぞうぜいの開始かいし時期じきについては「2024年ねん以降いこうの適切てきせつな時期じきとする」として結論けつろんを持ち越もちこし、去年きょねんの年末ねんまつの議論ぎろんでも自民党じみんとうの派閥はばつの政治せいじ資金しきんパーティーをめぐる問題もんだいの影響えいきょうもあり、再ふたたび先送さきおくりされました。

防衛ぼうえい力りょく強化きょうかに向むけた予算よさん措置そちが進すすむ中なか、税制ぜいせい改正かいせいの議論ぎろんで増税ぞうぜいの開始かいし時期じきが決きまるかが焦点しょうてんとなります。