また国連のグテーレス事務総長もネタニヤフ首相の考えは「受け入れられない」として、「パレスチナの人々が国家を樹立する権利は認められている」と強調しています。
なぜネタニヤフ首相が2国家共存を否定する姿勢を変えないのか?
望月麻美キャスターの解説です。
※1月22日と23日の「キャッチ!世界のトップニュース」で放送した内容です。
※動画は12分11秒、データ放送ではご覧になれません。
こうした中でも、ネタニヤフ首相が2国家共存を否定する姿勢を変えることはまずないものとみられています。なぜなら、みずからの政治生命に直結するためです。
イスラエルでは現在、戦時内閣が組まれていますが、ネタニヤフ首相の右派政党「リクード」はもともとパレスチナ人の追放などを訴える極右政党などと連立政権を組んでいます。
ニューヨーク・タイムズはこのうちの2人の閣僚、スモトリッチ財務相とベングビール国家治安相に言及しています。2人は、2国家共存に強硬に反対する立場です。
ニューヨーク・タイムズは、仮にネタニヤフ首相がパレスチナ国家の樹立を認める方向に進めば、2人は政権の連立解消に動くだろうという専門家の話を伝えています。
一方、市民の間でも、2国家共存を期待する声は年々、小さくなっているのが現実です。こちらは調査会社「ギャラップ」がイスラエル人を対象に行った世論調査です。
2012年と、ハマスとイスラエルの衝突が始まったあとの去年10月中旬から12月上旬にかけて行った調査結果を比較しています。
▼2012年には「2国家共存」を支持すると答えた人は61%、支持しないと答えた人は30%だったのに対し、
▼去年の調査では、支持するが25%、支持しないが65%で逆転しました。
パレスチナ人を対象に行った調査でも同じ傾向が見られています。2012年には支持すると答えた人は59%、支持しないと答えた人は40%でした。
しかしハマスによる襲撃前の去年7月から9月にかけて行った調査では、支持するは24%に落ち込み、支持しないが72%に上昇しました。
イスラエルがヨルダン川西岸地区への入植活動を続けるとともに、イスラエルとハマスの武力衝突も断続的に起きる中、市民の意識もこの10年、変化してきたのです。
アメリカの外交専門誌、「フォーリン・アフェアーズ」はイスラエルが2国家共存を拒否しているためほぼ克服できない課題が存在するとする一方、交渉による解決を達成する努力を怠ればイスラエル人とパレスチナ人が何世代にもわたって苦しみを味わうことになるとしています。
今回の軍事衝突で計り知れない犠牲を出しながら、イスラエル・パレスチナ問題は解決の糸口を見いだせないままでいます。
イスラエル 国内外で批判高まる
EUが開いた会議でも各国からイスラエルに対し2国家共存による和平を求める声が相次ぎました。
しかしここでも、イスラエルが2国家共存を否定する姿勢に変わりは無かったようです。
2国家共存を議論する代わりにイスラエルのカッツ外相は会議で、ある動画を流したと各国のメディアは伝えました。
ガザ地区からおよそ5キロ離れた海上に人工の島を造り、ガザ地区に搬入する人道支援物資の検査などを行うというものです。
動画は、カッツ外相が運輸相だった2017年ごろに初めて公開されたものです。
カッツ外相が、EUの会議の場でこのような動画を流したことについてニューヨーク・タイムズは集まった外相たちを驚かせたと伝えています。
さらに、EUのボレル上級代表が「もっと良い時間の使い方があったのではないか」と述べるなど、2国家共存の否定を貫くイスラエルの姿勢に各国から批判の声が上がっています。
一方、イスラエル国内でも、ネタニヤフ首相の強硬な姿勢に対する批判の声や人質解放を求める声が高まっています。
22日、イスラエル議会で開かれた委員会には人質の家族や支援者が詰めかけ、人質の解放に向けて直ちに行動するよう議員たちに訴えました。
「人質が死にかけているときにふんぞり返っている場合か!」
ハマスに連れ去られてからすでに3か月以上、人質の安否を案じている家族は耐えきれない状況に追い込まれています。
そして、このところ、現在の戦時内閣の閣僚や前の政府関係者からも、人質を安全に取り戻すためにはハマスと交渉するしかないという声が上がっています。
こうした中、アメリカのニュースサイト、アクシオスは22日、イスラエルの当局者の話として、イスラエルが人質全員の解放に向けて、カタールやエジプトの仲介のもとイスラム組織ハマス側に最長2か月の戦闘の休止を提案したと伝えました。
提案は、
▼はじめにハマスが女性や高齢男性、健康状態が悪化している人質を解放し、
▼その後段階的にそれ以外の人質や兵士を解放するという内容で、
▼全員が解放されるまで戦闘を休止し、その期間は最長で2か月ということです。
一方、イスラエルとしては戦闘休止後には作戦を縮小するものの戦闘の終結には合意せず、拘束しているパレスチナ人およそ6000人全員を釈放するつもりはないとしています。
強硬な姿勢を崩さないネタニヤフ政権に対する国内外からの批判が高まる中、戦闘の休止や人質の解放につながるのか、注目されます。