双方の死者 あわせて1000人を超える
パレスチナ暫定自治区のガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスは、7日にロケット弾の発射やイスラエル側に越境する大規模な攻撃を行ったのに続き、8日、「新たな部隊をイスラエル側に潜入させることができた。敵の拠点を破壊している」としてイスラエルへの攻撃を続けているとしています。
一方のイスラエル軍も「数百人のハマスのテロリストを無力化したが、軍は戦闘の中心地にいる」と、イスラエル南部の町などでハマスとの戦闘が続いていると明らかにしたほか、「ハマスのテロ活動の拠点を攻撃した」と主張し、ガザ地区への空爆を続けています。
複数のイスラエルメディアによりますとこれまでにイスラエル側で少なくとも600人が死亡し、2000人以上がけがをしたということです。
ロイター通信は、今回のハマスの攻撃を、50年前の第4次中東戦争以降で、イスラエルが受けた最大規模のものだと伝えています。
一方、ガザ地区の保健当局は8日、イスラエル軍の攻撃によりこれまでに413人が死亡したとしていて、イスラエルとパレスチナ双方の死者は、あわせて1000人を超えています。
イスラエル側は多くの兵士や市民が連行され、人質になっているとしていて、ガザ地区の周辺から住民の避難を進めるとともに数万人規模の部隊をガザ地区周辺に配置したとしています。
2014年に、イスラエル軍の地上部隊がガザ地区に侵攻した際にはパレスチナ側で市民を含む2200人以上が死亡しています。
今後、イスラエル軍が、ガザ地区への地上侵攻に踏み切るのかが焦点です。
ハマス「100人以上のイスラエル人 ガザ地区で人質に」
イスラム組織ハマスは、8日、声明を発表し「われわれは100人以上のイスラエル人をガザ地区で人質にしている」と主張しました。
“音楽イベント会場で260人の遺体” イスラエル有力メディア
イスラエルの有力メディア「ハーレツ」は、救助団体の話として、7日に行われた音楽イベントの会場で、260人の遺体が見つかったと伝えています。
このイベントはガザ地区との境界に近い場所で開かれていて、イスラム組織ハマスによる攻撃を受けたということです。
地元メディアなどは、多くの人が逃げ惑う中でハマスに銃撃されたほか、子どもを含め連行された人もいると伝えています。
ハマスに祖母が人質にとられた女性「胸が張り裂けそう」
イスラム組織ハマスに祖母が人質にとられたというイスラエル人の女性が、オンラインでのメディア各社の取材に応じ、悲痛な思いを語りました。
インタビューに応じたのは、祖母の行方がわからなくなっているアドバ・アダルさんです。
アダルさんの祖母のヤッファさんは、ガザ地区に近いイスラエル南部に住んでいましたが、7日、人質として、ハマスに連れ去られたということです。
アダルさんは「祖母とは7日の午前8時ごろに連絡が途絶え、最後に受け取ったメッセージは『銃声やアラビア語の叫び声が聞こえる』という内容だった」と話し、攻撃が始まってまもなくして祖母とは連絡がとれなくなったとしています。
その後、アダルさんは、ガザ地区で撮影されたとされる動画をSNS上で見つけ、その動画ではヤッファさんとみられる女性がカートに乗せられている様子が映っています。
アダルさんは「祖母は持病の薬も持っていません。食べ物や水はあるのか、そもそも無事なのかもわからず、胸が張り裂けそうです」と話していました。
そのうえで「85歳の祖母は何も悪いことをしていません。イスラエル政府には祖母や人質になった人を取り戻すためにあらゆることをしてほしい」と涙ながらに訴えていました。
国連安保理が緊急会合 会合を前に双方が互いを強く非難
国連安保理の緊急会合は現地時間の8日午後、日本時間の9日午前4時すぎから非公開でおよそ2時間、行われました。
会合に先立ちイスラエルのエルダン国連大使は記者団に対し「戦争犯罪は明確に非難されなければならない。これはイスラエルにとっての911だ」とパレスチナ側を非難し、イスラエルの作戦はテロとの戦いだと正当化しました。
これに対し、パレスチナのマンスール国連大使は「イスラエルはパレスチナの人たちの生命と権利に対して力を使い続けている」と述べ、イスラエル側を非難しました。
外交筋によりますと会合では多くの国からハマスによる攻撃を非難する声や事態の沈静化を求める声があがったということです。ただ、具体的な対応についてはまとまらず、今後も協議を続けるとしています。
アメリカ イスラエル軍へ軍事装備品の供与開始
ホワイトハウスなどの発表によりますと、アメリカのバイデン大統領とイスラエルのネタニヤフ首相は8日、電話で会談しました。
この中でバイデン大統領は「テロを正当化するいかなる理由もなく、すべての国がこのような残虐な行為に対し、団結しなければならない」と述べ、イスラエルを支持する立場を改めて強調しました。そのうえで、イスラエル軍に対し、弾薬を含む軍事装備品などの供与を始めたことを伝えるとともに、今後、追加の軍事支援を行う見通しを明らかにしました。
また、オースティン国防長官は8日の声明で、最新鋭の空母「ジェラルド・フォード」を中心とした空母打撃群を、イスラエルに近い東地中海に移動するよう指示したと明らかにしました。また、中東地域における戦闘機の部隊を増強し、即応態勢を維持しているとしています。
こうした動きについて、アメリカの有力紙、ウォール・ストリート・ジャーナルは、政府関係者の話として、地域の不安定さにつけ込むイランを抑止するねらいもあると伝えています。
パレスチナ武装組織 “30人以上を人質に”
ハマスによるイスラエルに対する大規模な攻撃に参加しているパレスチナの武装組織「イスラム聖戦」は、8日「これまでに30人以上を人質にとっている。イスラエルに捕まっているパレスチナ側のすべての囚人が解放されないかぎり、彼らは解放されないだろう」とする声明を出しました。
イスラエル軍の報道官は「ガザ地区にはかなりの数のイスラエル人がハマスによって捕らえられている」と述べていますが、連れ去られた人質の正確な数は明らかになっていません。
日本人の被害情報なし 日本大使館
イスラエルにある日本大使館によりますとこれまでのところ日本人が被害にあったという情報は入っていないということです。
大使館ではイスラエル滞在中の日本人に対し、ミサイルの飛来を知らせる警報が出た場合には、シェルターや頑丈な建物に避難し、安全を確保するよう呼びかけています。
“フランス人 1人死亡 数人が行方わからず” 仏外務省
ハマスによる大規模な攻撃に関連しフランス外務省は8日、フランス人1人の死亡が確認されたほか、数人の行方がわからなくなっていると明らかにしました。
フランス外務省は8日の声明で「ハマスが男性や女性、それに子どもを人質に取っている事件は、ハマスが持つテロリズムの本質を思い起こさせる。フランスは、人質の即時かつ無条件の解放を求める」とハマスを非難するとともに、人質の解放を訴えています。
“複数のアメリカ人が死亡” ブリンケン国務長官
アメリカのブリンケン国務長官は8日に放送されたCNNのインタビューで、パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスによる攻撃で複数のアメリカ人が死亡し、行方が分からなくなっている人もいるという情報があり、確認を進めていることを明らかにしました。
そして、ブリンケン長官は「バイデン大統領の方針はイスラエルがハマスからの攻撃に対応するために必要なものを提供することだ」と述べ、イスラエルへの軍事支援を近く発表する見通しを示しました。
また、ブリンケン長官は8日に放送されたABCのインタビューでイランが攻撃に関与しているか問われ「今回の攻撃にイランが関与しているという直接的な証拠はまだないが、長年にわたる支援は明らかだ」と述べました。
“複数のドイツ人 連れ去られた可能性” 独外務省
ドイツ外務省は、8日、NHKの取材に対しイスラエル側に侵入したイスラム組織ハマスの武装勢力に連れ去られた人たちの中に、複数のドイツ人が含まれている可能性があると明らかにしました。
これらの人々はドイツとイスラエルの国籍を保有しているとした上で、連れ去られたとみている人数や名前などは、安全上の理由で明らかにしないとしています。
また、ドイツの有力誌シュピーゲルやロイター通信は、8日、イスラエルに住んでいるドイツ人の母親が、当時、イベントに参加していた20代の娘と連絡が取れなくなっていると話していると伝えています。
英スナク首相 “必要とするいかなる支援も行う”
イギリスのスナク首相は8日、イスラエルのネタニヤフ首相と電話で会談し、イスラエルが必要とするいかなる支援も行うと伝えました。
イギリスの首相官邸によりますと、「スナク首相はイスラエルとともにこのようなテロ行為に対し断固として立ち向かうことを再確認した」としています。
また、世界が一致してこうした攻撃に反対するよう、イギリスが行っている外交活動を説明したとしています。
その上で、両首脳は、状況の進展に応じて緊密に連絡を取り合うことで合意したということです。
イラン 攻撃を支持「パレスチナ自衛は正当な権利」
イスラエルと敵対し、ハマスやヒズボラを軍事的にも支援してきたイランは今回の攻撃を支持する姿勢を鮮明にしています。
首都テヘラン中心部の広場では8日までに、今回の攻撃への支持を表す巨大なポスターがビルの外壁にはられました。
ポスターは、パレスチナ伝統の織物で民族の団結の象徴にもなっている「クーフィーヤ」という布が、イスラエルの国旗にあしらわれている「六ぼう星」を覆い隠していく様子が描かれています。
イラン外務省のキャンアニ報道官は7日に出した声明で「抑圧されたパレスチナの人々がイスラエルによる日常的な暴力から自衛するのは当然で正当な権利だ」として、今回の攻撃を支持する考えを改めて強調しました。
また、軍トップのバゲリ参謀総長は8日、地元メディアに寄せたコメントの中で「この作戦はイスラエルの政権崩壊という悪夢を現実的なものに変えた」と称賛しました。
そのうえでイスラエルがアラブの盟主とされるサウジアラビアと国交正常化に向けた動きを活発化させていることについて「ばかげたショーのような向こう見ずな努力だ」と切り捨てました。
イランはことしに入り、7年間にわたって断絶していたサウジアラビアとの外交関係を正常化させる一方、そのサウジアラビアをはじめとしたアラブ諸国が近年、イスラエルと関係改善を進めつつあることに警戒を強め、繰り返しけん制しています。
ハマス武装勢力がタイ人11人連れ去り 母親「なぜ 解放して」
タイ政府によりますと、イスラエル側に侵入したイスラム組織ハマスの武装勢力が11人のタイ人を実効支配するガザ地区に連れ去ったということです。
このうちの1人、ナタポーン・オンケーオさんの(26)母親のトンクーンさんがNHKのインタビューに応じました。
タイ東北部出身のナタポーンさんは長男として家族を養うため、およそ2年前からイスラエルの農場で果物などの収穫作業に当たっていたということです。
トンクーンさんは、ナタポーンさんがハマスに連れ去られたとする写真をインターネットで見て初めて事態を知ったということです。
トンクーンさんは「息子の身の安全を心配している。なぜ、彼が連れ去られたのか。ナタポーンに非はないので解放してほしい。心配で寝ることもできないでいる」とハマスに解放するよう求めました。
エジプトで警察官が発砲 イスラエル人ら3人死亡
エジプトのメディアは8日、北部の都市アレクサンドリアで、警察官が銃を発砲し、イスラエル人の観光客2人とエジプト人1人が死亡したと伝えました。
警察官は無差別に銃を発砲したということで、エジプトの治安当局はこの警察官を拘束し、事件の背景などを調べているということです。
これまでのところイスラム組織ハマスとイスラエルの衝突が関連しているのかどうかは分かっていません。
一方、エジプトのアメリカ大使館は「事件はガザ地区とイスラエルで続く敵対行為と関連している可能性がある」として、エジプトに滞在するアメリカ国民に対して安全意識を高めるよう求めるメッセージをSNSに投稿しました。
《1からわかる!イスラエルとパレスチナ》