そして、後任の民主党の大統領候補として、ハリス副大統領を支持し、ハリス氏も意欲を示しました。
再選を目指す現職大統領が選挙戦の途中で撤退するのは1968年のジョンソン大統領以来、56年ぶりの事態です。
日本時間22日午前3時ごろ SNSのXで声明を発表
アメリカのバイデン大統領は21日午後、日本時間の22日午前3時ごろ、SNSのXで声明を発表しました。
このなかでバイデン大統領は「民主党や国にとっては私が選挙戦から退き、大統領としての残りの任期のまっとうに集中することが最良だと信じている」として、秋の大統領選挙での再選を断念し、選挙戦から撤退する考えを明らかにしました。
また、バイデン大統領は、SNSのXへの別の投稿で「私はことしの選挙に向けた党の候補者としてカマラを全面的に支援し、推薦したいと思う」と述べて、カマラ・ハリス副大統領を後任の大統領候補として支持する考えを示しました。
さらに「民主党員よ、今こそ団結してトランプ氏を打ち負かす時だ」と述べてハリス氏への支持を呼びかけました。バイデン氏は今週、国民に向けて撤退するという決断について詳しく説明するとしています。
ハリス氏は21日声明を出し「バイデン大統領の支持を得られたことを光栄に思う。この指名を勝ち取るつもりだ」として意欲を示しました。
再選を目指す現職大統領が選挙戦の途中で撤退するのは1968年のジョンソン大統領以来、56年ぶりの事態です。
民主党の後継の候補者選びについて民主党全国委員会の委員長は「透明かつ秩序ある手続きに着手する」としていて、今後、誰が正式な候補者となるのか、国内外の目が注がれることになります。
一方、野党・共和党の候補者であるトランプ前大統領はSNSに「バイデンは大統領としても大統領候補としてもふさわしくなかった」と非難した上で、「アメリカを再び偉大にする」として大統領選挙に向けて意気込みを示しました。
“選挙戦から退き残りの任期 職務全うに専念が党と国に最善”
バイデン大統領はSNSのXで「みなさんの大統領を務められたことは、私の人生の中で最大の名誉だった。再選を目指すつもりでいたが、私が選挙戦から退き、残りの任期は大統領としての職務を全うすることのみに専念することが、党にとっても国にとっても最善の利益になると考える」とする声明を発表し、選挙戦から撤退する考えを表明しました。
そのうえで「私の決断の詳細については、今週後半に国民のみなさんに話す予定だ」としています。
“民主党候補者としてハリス氏を全面的に支持し推薦したい”
またバイデン大統領は日本時間の22日午前3時10分ごろ、SNSのXで「私はことしの民主党の候補者としてカマラ・ハリス氏を全面的に支持し、推薦したいと思う。民主党員よ、今こそ団結してトランプ氏を打ち負かす時だ」と投稿しました。
現職大統領の選挙戦撤退は1968年のジョンソン大統領以来
アメリカのメディアは、再選を目指す現職の大統領が選挙戦から撤退するのは、1968年のジョンソン大統領以来の事態だと大々的に伝えています。
第36代大統領のジョンソン氏は、大統領選挙の投票日の7か月前、1968年3月31日、泥沼化していたベトナム戦争への対応についての演説の中で、大統領選挙に出ないことを表明しました。
アメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズは、過去75年で、再選に向けての選挙戦から撤退した現職の大統領はいずれも民主党のトルーマン氏とジョンソン氏の2人で、それぞれ朝鮮戦争とベトナム戦争という国民に不人気な戦争をどう終わらせるか模索するなかで撤退したとしています。
いずれのケースもその後、民主党から指名された候補者は本選挙で共和党の候補者に敗れています。
ハリス副大統領が声明「指名を勝ち取るつもり」
バイデン大統領が選挙戦からの撤退を表明したことを受けてアメリカのハリス副大統領は21日声明を出しました。
この中で「わたしは、アメリカ国民を代表し、バイデン氏の大統領としての並外れた指導力と、数十年にわたるわれわれの国に対する貢献に感謝する。バイデン氏が成し遂げた偉大な功績はアメリカの現代史において比類のないもので、2期を務めた、ほかの多くの大統領の功績をしのぐものだ」として、バイデン氏をたたえました。
その上で、バイデン氏が民主党の大統領候補としてハリス氏を支持したことについて「バイデン大統領の支持を得られたことを光栄に思う。この指名を勝ち取るつもりだ」として、党の候補者の指名獲得に意欲を示しました。
そして、「わたしは全力を尽くして民主党を、そしてわれわれの国を結束させ、トランプ氏を打ち負かす」としています。
ハリス副大統領とは
カマラ・ハリス氏は西部カリフォルニア州出身の59歳。
父親はジャマイカ出身、母親はインド出身で移民の2世として生まれ育ちました。
カリフォルニア州の司法長官を務めたあと、2017年に上院議員となり、2020年の大統領選挙で議員1期目ながら民主党の候補者指名争いに挑戦しました。
支持が広がらず、党の候補者選びから撤退したあと、バイデン氏への支持を打ち出し、候補者選びを勝ち抜いたバイデン氏によって副大統領候補に選ばれました。
その後、ハリス氏は、女性として、また、黒人としてもアメリカ史上、初めての副大統領となり、多様性を重視するバイデン政権の象徴となりました。
ハリス氏は、連邦最高裁判所が2022年、人工妊娠中絶は憲法で認められた権利だとしたおよそ50年前の司法判断を覆したことをめぐり、全米各地で中絶の権利の擁護を訴えるなどして、バイデン氏の再戦を支援してきました。
また、若年層や、民主党が支持基盤としてきた黒人層の取り込みを後押しする役割も期待されてきました。
一方、バイデン政権で、移民対策を任されたにも関わらず、就任から5か月あまり、メキシコ国境の現場に足を運ばず、共和党から批判されるなど、目立った実績はないとの厳しい評価もあります。
政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」のまとめによりますと、7月20日までの各種世論調査の平均では、ハリス氏を支持するとした人は38.1%、支持しないとした人は52.3%となっています。
トランプ氏「ハリス氏のほうがバイデン氏よりも倒しやすい」
アメリカのCNNテレビは、バイデン大統領が選挙戦から撤退を表明した数分後にトランプ前大統領本人が電話取材に応じたと報じました。
この中で、トランプ氏はバイデン大統領について「わが国史上最悪の大統領として語り継がれるだろう」と述べたということです。
そのうえでバイデン大統領が後任の大統領候補として支持することを表明しているハリス副大統領について、トランプ氏は「ハリス氏のほうがバイデン氏よりも倒しやすい」と述べたと伝えています。
また、トランプ氏は日本時間の22日午前3時半ごろ自身のSNSで「いかさまバイデンは、大統領としても大統領候補としてもふさわしくなかった。彼はうそやフェイクニュースなどで大統領の座についただけだ。彼の周りにいるすべての人々が、彼には大統領になる能力がないことを知っていた」と投稿し、改めてバイデン大統領を非難しました。
そのうえで「彼が大統領であることによって私たちは非常に苦しむが、彼が与えたダメージからすぐに回復することができるだろう。アメリカを再び偉大にするのだ」と投稿しました。
共和党 副大統領候補 バンス氏 改めて対決姿勢を鮮明に
共和党の副大統領候補に指名されたJ・D・バンス上院議員は日本時間の22日午前5時20分ごろ、SNSに「ジョー・バイデン氏は私が生きてきた中で最悪な大統領であり、カマラ・ハリス氏も彼と常に歩みを共にしてきた」と投稿し、バイデン大統領と後任の大統領候補として支持されているハリス副大統領の両氏を非難しました。
そのうえで「トランプ氏と私は、民主党の候補が誰であろうとアメリカを救う準備はできている。かかってこい」と投稿し、改めて対決姿勢を鮮明にしました。
共和党 ハリス氏批判の動画を早速SNSに投稿
共和党全国委員会は、バイデン大統領が後任の党の大統領候補としてハリス副大統領を支持したことを受けて、SNSに、早速、ハリス氏を批判する動画を投稿しました。
動画では、ハリス氏がバイデン大統領から移民対策を任されていたことに触れた上で「ハリス氏が担当についたあと、記録的な数の不法移民が国境に押し寄せた。ハリス氏の出だしは国境問題を無視するという手荒なものだった」と指摘しました。
そして、メディアのインタビューで、国境を訪れる予定があるのか、またこれまで国境を訪れたことがあるのかを問われたのに対し、ハリス氏があいまいに答える動画を示し、十分に対応してこなかったと批判しています。
大統領選挙に向けて共和党は、法的な手続きを経ずにメキシコとの国境を越えて入国を試みる人がバイデン政権下で急増しているとして、その対応を強く批判しています。
新たな候補者選び「代議員」投票に委ねられる可能性
アメリカメディアはバイデン大統領の撤退を受けて、民主党の新たな候補者選びは来月行われる全国党大会で「代議員」による投票に委ねられる可能性があると伝えています。
代議員は各州などから選出され、党大会の会場で投票によって党の大統領候補を正式に指名する役割を担う人たちです。
通常は党大会までに行われる各州などでの予備選挙や党員集会の結果にもとづき、あらかじめ決まった候補者に投票します。
アメリカメディアによりますと今回の民主党の候補者選びではバイデン大統領が予備選挙などを通じて代議員のほとんどを固めていたということです。
ただ予備選挙などはすでに実施されたあとのため、バイデン大統領の撤退によって代議員たちは自分たちの判断で誰に投票するかを決めることになるということです。
アメリカメディアは「代議員が自由に投票して決める手続きとなるのを避けるため、民主党は党大会までに候補者の一本化を目指すだろう」と伝えています。
民主党の全国党大会は8月19日からイリノイ州シカゴで開かれる予定ですが、民主党全国委員会はこれまで、バイデン大統領を指名する手続きを、党大会より前にオンラインで実施する計画を発表していました。
バイデン大統領の撤退表明を受けて現時点で、どのような手続きがとられるのかは分かっていません。
今後、バイデン大統領にかわる党の新たな大統領候補の選出に向けた動きが活発化するとみられます。
オバマ元大統領「この決断はバイデン氏が国を愛する証し」
オバマ元大統領は日本時間の22日午前4時40分ごろ声明を発表しました。
声明では「バイデン氏はアメリカで最も重要な大統領の1人であり、私にとって親愛なる友人である。そしてきょう、彼が最高の愛国者であることを改めて認識させられた」としてこれまでの功績に謝意と敬意を表しました。
そして「バイデン氏は決して戦いから引き下がらないことを私は知っている。彼が政治情勢を見て新しい候補者にバトンを渡すべきだと決断したことは、人生において最も困難なことの1つに違いない。この決断は、バイデン氏が国を愛する気持ちの証しであり自分の利益よりもアメリカの利益を優先させた歴史的な例だ。後世の指導者たちも見習うだろう」とコメントしました。
一方、バイデン大統領が後任の民主党の大統領候補として、支持する考えを示しているハリス副大統領については、言及しませんでした。
ペロシ元下院議長「アメリカ史上最も影響力のある大統領の1人」
民主党の重鎮で、バイデン大統領の盟友とされるペロシ元下院議長は日本時間の22日午前4時10分ごろ、SNSのXに「バイデン大統領は、常にアメリカのことを第一に考える愛国心の強い人である。彼の残したビジョンや価値観、それにリーダーシップは、彼をアメリカ史上最も影響力のある大統領の1人にした」と投稿したうえで、バイデン大統領のこれまでの功績などに謝意と敬意を表しました。
民主党 議会上院トップ “バイデン氏の選挙戦撤退決断を支持”
民主党の議会上院トップのシューマー院内総務はSNSに「ジョー・バイデン氏は偉大な大統領で偉大な立法の指導者であるだけでなく、本当に素晴らしい人間だ。彼の決断は容易なものではなかったが、彼は再び国や民主党、そしてわれわれの未来を第一に考えた。ジョー、きょう、あなたは真の愛国者で偉大なアメリカ人であることを示した」と投稿し、バイデン氏が選挙戦から撤退するという決断を支持しました。
民主党 議会下院トップ バイデン大統領の功績たたえる
民主党の議会下院トップのジェフリーズ院内総務は21日声明を発表し「バイデン大統領は、アメリカ史上、最も実績のある指導者の1人だ。バイデン大統領が知性と気品と威厳をもって導いてくれたおかげで、アメリカはよりよい場所になった。私たちはいつまでも感謝している」とバイデン大統領の功績をたたえました。
クリントン夫妻もハリス氏を支持
クリントン元大統領と、妻のヒラリー・クリントン元国務長官はSNSに声明を発表し「アメリカ国民とともにバイデン大統領の功績に感謝する」と述べるとともに「ハリス副大統領を推薦し、彼女のためにできるかぎりの支援をする」として大統領候補としてハリス氏を支持する考えを示しました。
民主党全国委 ハリソン委員長「まもなく次のステップ知らせる」
民主党全国委員会のハリソン委員長は21日声明を出し「われわれは、バイデン大統領が本日行った決断に敬意を表す」としています。
その上で「民主党は、近日中に、11月にトランプ氏を打ち負かすことができる大統領候補とともに、団結した党として前進するための透明かつ秩序ある手続きに着手する。まもなく、アメリカ国民に対し、次のステップと、指名プロセスの道筋を知らせる」としています。
ウクライナ ゼレンスキー大統領「厳しく力強い決断に敬意」
バイデン大統領が選挙戦から撤退すると表明したことについてウクライナのゼレンスキー大統領は、SNSで「近年、下された多くの力強い決断は、困難な時代にバイデン大統領がとった大胆な措置として記憶されるだろう。そして、私たちはきょうの、厳しく、力強い決断に敬意を払う」とコメントしました。
そのうえで「アメリカの超党派の支えと共に行われてきた、ウクライナの自由のための戦いへの揺るぎないバイデン大統領の支援に感謝している。これはこれまでも、これからも重要だ」と投稿し、ウクライナへの支援の継続を訴えました。
英首相「米国民にとって最善と信じることに基づき決断下した」
バイデン大統領が秋の大統領選挙での再選を断念し、選挙戦から撤退すると表明したことについて、イギリスのスターマー首相はSNSに「バイデン大統領の決断を尊重するとともに、大統領としての残りの任期中、ともに仕事ができることを楽しみにしている。彼はそのすばらしいキャリアを通じてそうしてきたように、アメリカ国民にとってこれが最善だと信じることに基づき決断を下したのだ」と書き込みました。
また、スナク前首相は「バイデン大統領とともに仕事をして、彼のアメリカに対する愛情と奉仕への献身を私は目の当たりにした。われわれのパートナーシップはオーストラリアを含む安全保障の枠組みAUKUS、イスラエルへの断固たる支援、中東イエメンの反政府勢力フーシ派の脅威から国民を守るための共同での取り組みなど、重要な成果をもたらした」と書き込みました。
カナダ トルドー首相 SNSに謝意を投稿
カナダのトルドー首相はXに「バイデン大統領は偉大な人物で、彼のすべての行動は祖国への愛によって導かれている。大統領として、彼はカナダ人のパートナーであり、真の友人だ」と投稿しました。
また投稿には、バイデン大統領と夫人への感謝のことばのほか、カナダの議会下院を訪れたバイデン大統領が、トルドー首相の腕に手を置き、笑顔を見せる写真も添えられています。
また、オーストラリアのアルバニージ-首相も、Xに「民主主義的な価値観や国際安全保障、経済的な繁栄、それに気候変動対策について共通のコミットメントにより、オーストラリアとアメリカの同盟はかつてないほど強固なものになった」と投稿し、バイデン大統領への謝意を表しました。
世界各地のメディアも速報
バイデン大統領が選挙戦から撤退することを表明したことについて、世界各地のメディアは速報で伝えています。
このうち、アメリカのCNNテレビは、「現職の大統領が再選を辞退するのは、数十年ぶりだ」などと伝えています。
また、有力紙ニューヨーク・タイムズは「2024年の大統領選を大混乱に陥れた」と伝えています。
イギリスの公共放送BBCは、トランプ前大統領が銃撃された事件などもあげ、「すでに歴史的な事態が起きている大統領選挙は未知の世界に突入する」などと伝えています。
さらに、中東の衛星テレビのアルジャジーラもワシントンからの中継を交えて伝えています。
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