安倍総理大臣が
働き
方改革に
関連したデータをめぐる
国会答弁を
撤回したのを
受け、
厚生労働省は
19日、
衆議院予算委員会の
理事会で、
答弁の
基にしたデータの
調査方法が
異なり
単純に
比較できないものだったと
釈明し、
謝罪しました。
働き
方改革をめぐり、
安倍総理大臣は
先の
衆議院予算委員会で「
裁量労働制で
働く
人の
労働時間は、
平均的な
人で
比べれば
一般労働者よりも
短いというデータもある」とした
国会答弁を
撤回しました。
これを受けて厚生労働省は19日、幹部が衆議院予算委員会の理事会に出席して、答弁の基になったデータを精査した結果を報告しました。
この中で厚生労働省は、一般労働者と裁量労働制で働く人とで労働時間の調査の方法が異なっていて、単純に比較できないものだったと釈明しました。また、一般労働者のデータの中に、1日の時間外労働を45時間とするなど、少なくとも3件の誤りが確認されたと説明しました。そのうえで「ご迷惑をおかけして申し訳ない」と謝罪しました。
これに対して野党側は、「データの取り扱いが不適切で、国民に大きな誤解を与えるものだ」などと反発し、さらに説明するよう求めました。
単純比較できないデータとは?
厚生労働省によりますと、安倍総理大臣が答弁を撤回した基となったデータは、平成25年4月から6月にかけて厚生労働省が全国の1万1575の事業所を対象に行った「労働時間等総合実態調査」です。
調査結果では1日当たりの労働時間が、一般の労働者が9時間37分、企業の中枢部門で経営に関わる企画などにあたる「企画業務型」の裁量労働制の人が9時間16分で、厚生労働省はそれぞれの事業所の中から「平均的な人」を1人選んで、労働時間などを聞き取る形で行ったと説明していました。
しかし19日に公表された内容によりますと、一般の労働者については「平均的な人」1人について、1か月間で時間外労働の時間が最も長い日の労働時間を事業所に聞いていたのに対し、裁量労働制で働く人に対しては1日の労働時間を聞く内容になっていたということです。
また、一般の労働者では法定労働時間の8時間以外に1日の時間外労働の時間が「15時間を超える」と回答した事業所が9件あったほか、中には「1日45時間」など誤って記入されたのに調査結果に盛り込まれていたと見られるケースも少なくとも3件あったということです。
野党6党 データ故意に作ったかと疑問や指摘
立憲民主党、希望の党、民進党、共産党、自由党、社民党の野党6党は、厚生労働省の担当者からヒアリングを行いました。
そして6党からは、「『裁量労働制で働く人のほうが一般労働者よりも時間外労働が短い』というデータを故意に作ったのではないか」といった疑問や、「調査結果が報告されるまで、時間がかかりすぎている」などの指摘が相次ぎました。
また野党6党は、厚生労働省が精査した結果は安倍総理大臣にデータの内容が伝えられた経緯などの報告が不十分だとしてさらに説明を求めていくことを確認しました。
立民 逢坂氏「極めて不適切で誤解与える調査手法」
衆議院予算委員会で野党側の筆頭理事を務める立憲民主党の逢坂誠二衆議院議員は記者団に対し、「厚生労働省が現場にどのような指示をしたのか全く説明がなく、ただ『こういう実態だった』と言われても調査とは言えず、全く不誠実な対応だ。調査方法が違うものを2つ並べて、どちらかの時間が長いとか、短いとかと言うのは、極めて不適切で、国民に相当大きな誤解を与える調査手法だ」と述べました。
官房長官「比較は極めて不適切だった」
菅官房長官は午前の記者会見で、「『裁量労働制のほうが労働時間が長くなる』という指摘を受け、『こうしたこともある』という例として紹介したものだが、平均的な労働者の労働時間について、一般労働者と裁量労働者で異なるしかたで選んだ数字を比較していたことは極めて不適切だった」と述べました。
そのうえで、菅官房長官は「働き方改革は、長年にわたって議論されながら結論が得られなかった、罰則つきの時間外労働の上限規制の導入、同一労働同一賃金の実現に向けたガイドラインの提起や関係法令の整備など、極めて重要な改革だと考えており、実現に向けて全力で取り組んでいきたい」と述べました。
さらに、菅官房長官は午後の記者会見で、「裁量労働制の見直しや『高度プロフェッショナル制度』の創設は、働く人の健康を確保する措置を使用者側に義務づけたうえで、一人ひとりの事情に応じた多様で柔軟な働き方を選択するもので、働く人々にとっても極めて重要な改革だと考えており、今国会での法案の提出、成立の方針に全く変わりはない」と述べました。