「応氏杯世界選手権」は4年に1度開催される囲碁の国際大会で、国内では棋聖・天元・本因坊の三冠を有する一力九段が日本代表として出場し、決勝で中国の謝科九段と対戦しました。
決勝は五番勝負で、第3局が8日、中国 上海のホテルで行われました。
ここまで2勝負けなしの一力九段は、苦しい局面が続いていた終盤、謝九段の隙を見逃さず、一気に逆転して相手を突き放し、237手までで勝って、3勝負けなしで優勝しました。
日本棋院によりますと日本の代表選手が主要な国際大会で優勝するのは2005年の「LG杯」を制した張栩九段以来、19年ぶりで「応氏杯世界選手権」で優勝するのは初めてです。
一力遼九段「本当にうれしい」
一力遼九段は対局開始のおよそ5分前に会場の部屋に入り、目を閉じたり、盤を見つめたりして静かに待っていました。
そして、対局終了後に行われた表彰式で優勝カップと賞金が手渡されると笑顔で写真撮影に応じていました。
一力九段は「苦しい形勢だったので、途中はかなり厳しいかなと思いましたが、最後まで諦めないよう心がけていました。今はほっとしていますし、優勝できると思っていなかったので本当にうれしいです。日本から応援してくれた方々に感謝の気持ちを伝えたいです」と話していました。
師匠 宋光復九段「泣き虫少年の夢がかなった」
対局が行われたホテルの別の部屋では、師匠の宋光復九段がテレビモニターで対局の様子を見守っていて、一力九段の勝利が決まると、手で顔を覆い感極まる様子で喜びをかみしめていました。
宋九段は「感無量です。小学2年生のときから門下生になり、いろんな苦労をしてきましたが積み重ねが報われました。これを機に次のステージに向かっていくと思いますが、その姿を見守っていきたいです」と話していました。
また、宋九段は「一力三冠おめでとうございます。泣き虫だった少年の夢が叶いました。学業、経営との両立の中で多くの試練を乗り越えての世界一、まさに立派です。また二刀流では世界タイトルは取れないと言う多くの評価を覆す快挙でもあります。入門以来19年常に走り続ける毎日の中でこれを機に師匠としては少し休みを取ってほしいと思う所ですが三冠の事ですからこれからも同じ様に今まで以上に全速力で走り続ける事でしょう。どうか体調には気をつけながら更なる活躍を期待しています」とコメントしています。
日本棋院 武宮陽光理事長「心から称賛の意」
日本棋院の武宮陽光理事長は「決勝五番勝負で二連勝したあとのプレッシャーは、これまでにない程大きいものであったと思います。重圧の中、また名人戦挑戦手合を戦う過密日程の中で偉業を達成されたことに、心から称賛の意を表します。日本棋院創立100周年の記念すべき節目の年に、ファンの悲願であった国際棋戦優勝を成し遂げられたことは大変感慨深く、これまで囲碁界を支えてくださった多くの皆様によい報告ができましたことを大変うれしく思います」とコメントしています。