前の法務大臣の河井克行容疑者(57)と妻で参議院議員の案里容疑者(46)は去年7月の参議院選挙をめぐって地元議員らに票の取りまとめを依頼し、報酬として現金を配ったとして公職選挙法違反の買収の疑いで逮捕され、検察当局は合わせて94人におよそ2570万円を配った疑いがあるとみて捜査を進めています。
この94人の中に三原市の天満祥典市長が含まれていることが明らかになっていますが、天満市長はことし3月、報道陣に対し「私自身が現金を受け取ったことはないと断言する」と説明し、天満市長が現金を受け取った疑いが報じられた後も、市議会などで「現金の授受はない」と強く否定していました。
しかし、天満市長は25日午後に開いた記者会見で、河井前大臣から去年3月と6月に、現金合わせて150万円を受け取ったことを一転して認めました。
そのうえで「市民に多大な迷惑をかけ、深くおわびする。市政の運営に混乱を来すと考え、辞職を決めた」と述べ、市議会の議長宛てに辞職願いを提出したことを明らかにしました。
これまで現金の授受を否定していたことについて天満市長は「河井前大臣と秘密の約束をしたと理解していたので、それを守っていた。しかし市民にいつまでも受け取っていないと言い続けることができないと思い、みそぎをすることにした」と説明したうえで、「うその説明をしたと取られてもしかたがない」と述べました。
また受け取った現金の趣旨については「参議院選挙の買収という認識はなかった。時期が来れば預かった現金を返却しようと思っている」と述べました。
三原市選挙管理委員会などによりますと、天満市長の辞職は今月30日付けで認められる見通しで、市の選挙管理委員会に辞職が通知された翌日から50日以内に市長選挙が行われることになります。
現金授受認める議員 相次ぐ
河井克行前法務大臣と妻の案里参議院議員の逮捕から25日で1週間。広島県内では現金を受け取ったことを認める地元議員が相次いでいます。
【広島市議に30万円】
広島市議会の石橋竜史議員は25日、市役所で報道陣の取材に応じ、去年5月下旬に河井前大臣の事務所で現金30万円を受け取ったことを認めました。
石橋市議は、その時の状況について「河井前大臣が『当選おめでとう』と言って白い封筒を出してきた。『勘弁してください』と断ったが、『2人だけの秘密だ』と言って胸元にねじ込まれ、河井前大臣はすぐに部屋を去った。政権の中枢に近い河井前大臣とのパワーバランスもあり、あらがえなかった」と述べました。
石橋市議は平成23年の初当選以降、河井前大臣から毎年のように夏や冬に「餅代」や「氷代」として現金を渡されたとしていますが、「当選祝い」として現金を提供されたのは、初めてだったということです。
石橋市議は、現金提供の趣旨は、参議院選挙での票の取りまとめではなく、市議選の当選祝いと認識していたと説明したうえで、みずからの進退については「議員活動を続けていきたいが、現時点では決めかねている。支援者や市民には、謝罪しながら説明責任を真摯(しんし)に尽くしたい」と涙を流しながら話しました。
【町議に30万円「安倍総理から」】
また、案里議員の後援会の会長を務めた広島県府中町の繁政秀子町議は25日、町役場で報道陣の取材に対し、去年5月、広島市内の案里議員の事務所で、河井前大臣から現金30万円を受け取ったと認めました。
河井前大臣は、現金を渡す際「安倍総理から」と述べたということです。
受け取った現金は使っておらず、今後、返却したいとしています。
関係者によりますと、石橋市議と繁政町議は、いずれも逮捕容疑となっている現金の提供先の94人の中に含まれているということです