FRBは18日までの2日間、金融政策を決める会合を開きました。
声明ではインフレの要因となってきた労働市場のひっ迫が和らいできているという認識を改めて示し、政策金利を0.25%引き下げることを決めました。
これによって、政策金利は4.25%から4.5%の幅になります。
利下げはことし9月と先月に続き、3会合連続です。
また、会合の参加者19人による政策金利の見通しでは、来年・2025年末時点で金利水準の中央値が3.9%と、前回9月の想定より0.5ポイント引き上げられました。
来年の利下げの回数はこれまでの4回の想定から2回に減る計算で、利下げのペースがゆるやかになるとの見通しが示されました。
アメリカでは堅調な個人消費を背景にインフレが再燃する懸念も出ていて、会合の参加者は来年の物価についてもこれまでの想定より上昇するという見通しを示しました。
来月には関税の引き上げなどの政策を掲げるトランプ氏が大統領に返り咲きますが、新政権の政策がインフレなど経済に及ぼす影響と金融政策の対応が今後の焦点となりそうです。
パウエル議長 記者会見
「労働市場 インフレ要因にはなっていない」
FRBのパウエル議長は、会合後の記者会見で「名目賃金の伸びは過去1年間で鈍化し、求人数と仕事を求めている人とのギャップは縮小した。全体として、多くの経済指標が労働市場の状況は2019年よりもひっ迫していないことを示唆している。労働市場は、大きなインフレ圧力の要因にはなっていない」と述べました。
「政策金利 より慎重姿勢で臨むことできる」
「きょうの決定により、金利はピーク時から1%引き下げられ、政策スタンスはだいぶ金融引き締め的ではなくなった。政策金利のさらなる調整を検討する際には、より慎重な姿勢で臨むことができる」と述べました。
「中立金利にかなり近づいた」
「われわれは中立金利にかなり近づいた。追加利下げについては、インフレ率のさらなる低下と労働市場の継続的な底堅さを期待している。経済と労働市場が堅調である限り、追加利下げを検討する際には慎重な姿勢で臨むことができる」と述べました。
「ぎりぎりの判断も 最善の決断」
「ぎりぎりの判断だったが、政策の目標を進展させるために最善の決断だったと考えている。リスクは両面あると考えている。(利下げが)遅すぎると労働市場の活動を不必要に弱めてしまうことになり、(利下げが)早すぎるとインフレ率の低下を妨げることになってしまう。バランスを考慮し、追加の利下げを行うことを決定した」と述べました。
「利下げプロセス 新たな段階に」
「(利下げの)プロセスは新たな段階に入った。今後はインフレ率の低下を見極めながら慎重に動くのが適切だと思う」と述べました。
「関税のインフレ影響分からず 結論出すのは時期尚早 」
経済の課題について問われると「経済について私は非常に楽観的に見ている。来年もよい年になると期待している」と述べました。
一方で、関税とインフレとの関係について問われると、「関税がどれぐらいインフレに影響するかはいくつもの要因がある。実際の政策について、われわれは全く分かっていない。結論を出すのは時期尚早だ。どの国からどの品目に、どのくらいの期間、どの程度の規模で関税が課されるか、また報復関税が課されるのかどうかも分からない」と述べ、明言を避けました。
NYダウ 前日比1100ドル超の大幅下落に
18日のニューヨーク株式市場では、FRB=連邦準備制度理事会が、来年の利下げのペースは従来の想定より緩やかになるという見通しを示したことを受けて、ダウ平均株価は、前日と比べて1100ドルを超える大幅な下落となりました。
FRBは18日、0.25%の利下げを決めましたが、今後の政策金利の見通しで来年の利下げのペースが前回・9月の想定よりも緩やかになる予測が示されました。
また、パウエル議長の会見内容から、今後の利下げの余地が限られているという見方も出ました。
ニューヨーク株式市場では、ダウ平均株価は取り引き開始直後から上昇していましたが、FRBの発表などを受けて、企業業績への懸念から一転して下落する展開となり、売り注文が加速しました。
終値は、前日から1123ドル3セント安い、4万2326ドル87セントとなり、10営業日連続の下落となりました。
アメリカの経済チャンネル、CNBCによりますと、10営業日連続の下落は1974年以来、およそ50年ぶりだということです。
また、ハイテク関連の銘柄が多いナスダックの株価指数も、3.5%を超える大幅な下落となりました。
市場関係者は「来年の利下げ回数を3回と予想する投資家が多かったため、FRBが示した見通しは驚きをもって受け止められた」と話しています。
NY市場 利下げペース鈍化見通しで1ドル=154円台後半に
また、ニューヨーク外国為替市場では、利下げペースの鈍化で日本とアメリカの金利差が縮まりにくいという観測から、円を売ってドルを買う動きが進み、円相場は一時、1ドル=154円台後半まで円安ドル高が進みました。
来年の利下げ 想定は2回に
今回の会合でFRBは会合の参加者19人による来年以降の政策金利の見通しを示しました。
会合の参加者がそれぞれ適切だと考える金利が点=ドットで示されることから「ドット・チャート」と呼ばれ、市場では、その中央値がFRBが目指す金利水準だと受け止められています。
今回示された見通しでは、来年・2025年末の時点での金利水準の中央値は3.9%で、前回・ことし9月の想定より0.5ポイント引き上げられました。
1回の利下げ幅を通常の0.25%とした場合、利下げの回数は、前回示した4回の想定から2回に減る計算になります。
FRBは来年、金融政策を決める会合を8回、開く予定で、利下げは4会合に一度のペースになります。
再来年の利下げの回数は、前回の想定から変わらず2回でした。
また、FRBはインフレの状況を見極める指標として重視するPCE=個人消費支出の物価指数の上昇率の見通しも示しました。
来年10月から12月にかけての上昇率は、前の年の同じ時期と比べて2.5%となり、前回示した想定より0.4ポイント高く、インフレ率が再び上昇する予測となっています。
アメリカでは、個人消費や雇用の面で堅調さが維持されていますが、トランプ次期大統領が掲げる関税の引き上げが実現した場合、輸入コストの増加が物価上昇につながる可能性も指摘されています。
市場関係者は、「来年の利下げの回数は3回になると予想していた投資家が多く、今回示された見通しは市場の予想より緩やかな利下げのペースだった」と話しています。