中国ちゅうごくなどとの開発かいはつ競争きょうそうが激はげしくなる中なか、欧米おうべいの通信つうしん大手おおてとも提携ていけいし世界せかいでトップシェアを握にぎりたいねらいです。

「量子りょうし暗号あんごう通信つうしん」は、スーパーコンピューターをはるかに超こえる計算けいさん能力のうりょくを持もつ量子りょうしコンピューターでも解読かいどくできない、次世代じせだいの暗号あんごう技術ぎじゅつです。

東芝とうしばは、この量子りょうし暗号あんごう通信つうしんを来年度らいねんど、日本にっぽんや欧米おうべいで事業じぎょう化かすることを正式せいしきに明あきらかにしました。

日本にっぽんでは政府せいふから通信つうしんネットワークのセキュリティー対策たいさくとして受注じゅちゅうしていて、国内こくないでの事業じぎょう化かはこれが初はじめてとなります。

また、海外かいがいでの事業じぎょう化かでは、イギリスの「ブリティッシュテレコム」とアメリカの「ベライゾン・コミュニケーションズ」と提携ていけいしました。

量子りょうし暗号あんごう通信つうしんをめぐっては、中国ちゅうごくが2025年ねんまでに全土ぜんどに広ひろげる方針ほうしんを掲かかげるなど国際こくさい的てきな開発かいはつ競争きょうそうが激はげしくなっています。

東芝とうしばはこの分野ぶんやで保有ほゆうする特許とっきょの数かずが世界せかい1位いと研究けんきゅう開発かいはつをリードしてきましたが、国内こくない外がいでいち早いちはやく事業じぎょう展開てんかいを進すすめ、世界せかいでトップシェアを握にぎりたいねらいです。

なぜ解読かいどくできない？

重要じゅうような情報じょうほうを第三者だいさんしゃにわからないようにやりとりする「暗号あんごう」の技術ぎじゅつは、情報じょうほう通信つうしんの分野ぶんやでは欠かかせないものになっています。

現在げんざい、一般いっぱん的てきに使つかわれている暗号あんごうは「素数そすう」と呼よばれる数かずの組み合くみあわせなどで作つくられていて、コンピューターの計算けいさん能力のうりょくが飛躍ひやく的てきに上あがると解読かいどくされるリスクが大おおきくなると指摘してきされています。

こうした中なか、どんなコンピューターを使つかっても「絶対ぜったいに解読かいどくできない」と注目ちゅうもくされているのが、「量子りょうし暗号あんごう」です。

「量子りょうし暗号あんごう」は、光ひかりの最小さいしょう単位たんいである光ひかりの粒つぶ「光子こうし」のような極小きょくしょうの物質ぶっしつの動うごきやふるまいを示しめす物理ぶつり学がくの「量子りょうし力学りきがく」を応用おうようした技術ぎじゅつです。

暗号あんごう化かされたデータとは別べつに

「暗号あんごうを解とくために必要ひつような鍵かぎ」となる情報じょうほうを送おくります。

量子りょうし暗号あんごうに長年ながねん取り組とりくむ情報じょうほう通信つうしん研究けんきゅう機構きこうの武たけ岡おか正裕まさひろセンター長ちょうによりますとこの「鍵かぎ」となる情報じょうほうを、分割ぶんかつして「光子こうし」ひとつひとつにのせて送おくるのが特徴とくちょうです。

量子りょうし力学りきがくによれば「光子こうし」は観測かんそくされるとその状態じょうたいが変かわる性質せいしつがあるため、誰だれかが「鍵かぎ」の情報じょうほうを盗み見ぬすみみた瞬間しゅんかんに、「光子こうし」の状態じょうたいが変化へんかするので、盗み見ぬすみみられたことに気きづくことができます。

この技術ぎじゅつでは、盗み見ぬすみみられたことを察知さっちした時点じてんで、その情報じょうほうを、自動じどう的てきに無効むこうにして、盗み見ぬすみみられていない残のこりの情報じょうほうだけで自動じどう的てきに新あたらしい鍵かぎを作り直つくりなおす仕組しくみになっているということです。

武岡たけおかセンター長ちょうは、量子りょうし暗号あんごうの分野ぶんやでは日本にっぽんが世界せかいをリードしているとしていて「欧米おうべいや中国ちゅうごくなどが開発かいはつにしのぎを削けずっているが東芝とうしばの製品せいひんは『鍵かぎ』の情報じょうほうを送おくる性能せいのうが世界せかいの製品せいひんと比くらべても何なん倍ばいも高たかく、世界せかい最高さいこうの信頼しんらい性せいを誇ほこっている。一方いっぽうで、新あたらしい技術ぎじゅつなので社会しゃかいにどう組み込くみこんでいくのかが課題かだいで、日本にっぽんでは医療いりょう情報じょうほうを守まもる実証じっしょう実験じっけんに世界せかいに先駆さきがけて取り組とりくんでいる。今後こんごは、通信つうしん基盤きばんの事業じぎょう者しゃと協力きょうりょくしてビジネスとしてまわしていくことが必要ひつようだ」と指摘してきしています。

東芝とうしば “世界せかいトップの水準すいじゅん”

量子りょうし暗号あんごう通信つうしんの開発かいはつに取り組とりくむ東芝とうしばの村井むらい信哉のぶやプロジェクトマネージャーは、「量子りょうし暗号あんごう通信つうしんは光ひかりの粒つぶ＝光子こうしにデータをのせることで、データを盗ぬすもうとするサイバー攻撃こうげきなどを検知けんちできる。暗号あんごう化かされたデータをあけるための『暗号あんごう鍵かぎ』を、絶対ぜったい安全あんぜんな形かたちで相手あいてに届とどけることができるというのがポイントだ」と説明せつめいしています。

村井むらい氏しは通信つうしんの速度そくどと安定あんていして通信つうしんできる距離きょりで、世界せかいトップの水準すいじゅんにあるとしたうえで、「政府せいふ機関きかんや金融きんゆう機関きかんあるいは医療いりょう機関きかんといった、非常ひじょうに機密きみつ性せいの高たかい情報じょうほうを扱あつかっているところから入はいっていくことになると思おもう。最終さいしゅう的てきには幅広はばひろく全国ぜんこく規模きぼでサービスを提供ていきょうしていくことをねらっていきたい」と話はなしていました。

世界せかいで開発かいはつ競争きょうそうが激化げきか

インターネットなどの通信つうしんでは、さまざまなデータが暗号あんごう化かされてやり取やりとりされていますが、スーパーコンピューターよりもはるかに高たかい計算けいさん能力のうりょくを持もつ「量子りょうしコンピューター」が本格ほんかく的てきに使つかわれるようになると、いま使つかわれている暗号あんごうは簡単かんたんに解読かいどくされてしまうおそれがあります。

このため今後こんごは民間みんかんのビジネスだけでなく、国くにの安全あんぜん保障ほしょうの面めんからも機密きみつ性せいの高たかい情報じょうほうを守まもるため、量子りょうしを使つかった絶対ぜったいに解読かいどくされない「量子りょうし暗号あんごう通信つうしん」が欠かかせないとされていて、東芝とうしばでは2035年ねんには世界せかいの市場しじょう規模きぼが2兆ちょう円えんを超こえると見込みこんでいます。

こうした中なか、中国ちゅうごくは金融きんゆうや司法しほうの分野ぶんやですでに実用じつよう化かし、2025年ねんまでに中国ちゅうごく全土ぜんどに広ひろげようと力ちからを入いれているほか、韓国かんこくも現地げんちの通信つうしん大手おおてが量子りょうし暗号あんごう通信つうしんの技術ぎじゅつを持もつスイスの企業きぎょうを買収ばいしゅうして事業じぎょう化かするなど、国際こくさい的てきな開発かいはつ競争きょうそうが激はげしくなっています。

加藤かとう官房かんぼう長官ちょうかん「将来しょうらいの経済けいざい社会しゃかいを支ささえる重要じゅうよう技術ぎじゅつ」

加藤かとう官房かんぼう長官ちょうかんは、午前ごぜんの記者きしゃ会見かいけんで、「『量子りょうし暗号あんごう通信つうしん』は、将来しょうらいの経済けいざい社会しゃかいを支ささえる重要じゅうよう技術ぎじゅつとして研究けんきゅう開発かいはつを推進すいしんしてきており、これに東芝とうしばをはじめ、国内こくない関係かんけい企業きぎょうが参加さんかしているものと承知しょうちしている。安全あんぜん保障ほしょうにもかかわる重要じゅうような技術ぎじゅつであり、研究けんきゅう開発かいはつ、実用じつよう化かに向むけた支援しえんに引き続ひきつづき取り組とりくみたい」と述のべました。