巨人は、今シーズンワーストの5連敗中ながらマジックナンバーを「1」として、30日夜、本拠地の東京ドームで最下位のヤクルトと対戦しました。
巨人は1点を追う3回、4番の岡本和真選手がリーグトップの28号ツーランホームランを打って逆転し、同点とされたあとの6回には7番の大城卓三選手のタイムリーで勝ち越しました。
先発の今村信貴投手は6回を2失点にまとめ、7回以降をリリーフ陣に託しましたが、1点リードの8回に4人目のデラロサ投手がヤクルトの5番・エスコバー選手にタイムリースリーベースを打たれて同点となり、試合は延長に入りました。
そして巨人が10回表にヤクルトに得点を与えず、2位の阪神が引き分けためこの時点で巨人の2年連続38回目のリーグ優勝が決まりました。
試合はこのあと、巨人も得点を奪えず、規定により、3対3で引き分けました。
巨人 山口寿一オーナー
巨人の山口寿一オーナーは「苦難の年こそ優勝しようと、球団ぐるみで頑張ってきました。例年と全く違う、厳しいペナントレースを全員の力で制し、ジャイアンツの長い歴史の中でも大きな意義のある優勝と受け止めています。このところの失速は反省点です。一丸となってチーム状態を改善し、8年ぶりの日本一をつかみ取りたいと願っています」と球団を通じてコメントしています。
プロ野球 斉藤惇コミッショナー
巨人がセ・リーグで連覇を果たしたことについて、プロ野球の斉藤惇コミッショナーは「今シーズンは新型コロナウイルスの影響により開幕が遅れ、試合数も120試合に減った。
選手にとっては調整が難しい上、当初は無観客という経験のない環境下での試合になったが、巨人はそうした状況にもめげず、ディフェンディングチャンピオンの名に恥じない戦いぶりで、見事に連覇を果たした。
中でもエースの菅野智之投手は、開幕投手から13連勝と球団の連勝記録を更新するなど、まさに圧巻の投球でチームをけん引した。
また異例のシーズンにありながら、原辰徳監督は巧みな選手起用と采配でチームをまとめあげ、シーズン途中には川上哲治氏の1066勝を超える通算監督勝利数を積み重ねた。再び巨人の黄金時代を築かんとしている。
巨人ファンやプロ野球ファンのみならず、コロナ禍によって閉塞感(へいそくかん)を募らせた国民にも大いなる勇気を与えた優勝だった」とコメントしています。
長嶋茂雄終身名誉監督
長嶋茂雄終身名誉監督は「哲学者でも科学者でもないが、私は1つのセオリーを大切にしている。それは“ジャイアンツセオリー”というものだ。内容的にはジャイアンツがジャイアンツとして、存在し続けるためには、4つのことをしなくてはならない。ただこれが意外と難しい。しかし今シーズンの原監督はそのジャイアンツセオリーを実践していたかのごとく見事なまでの成果をみせた。
1つ目は、言わずもがな勝ったことである。
他チームも同じ条件とはいえ、戦い方において無観客で開幕したことしほど難しいシーズンはなかったように思う。そんな中、原監督は選手に個別の指針を示し、選手は原監督の期待にしっかりと応えた。ゲームにおける戦術や選手の的確な起用法は見事だった。テレビ観戦をしていてたいしたものだな、私は原監督の足元にも及ばないなと考えさせられる場面がしばしばあった。
2つ目は若手を育て、ベテランとの融合を図ったことだ。
吉川尚輝、松原、田中俊太、若林らの若手がスタメンに名を連ねるようになった。また、北村は、坂本や丸のベテランが不調だった時に、サポートする形で活躍した。戸郷も20歳とは思えぬピッチングをする。よほどいい度胸をしているのだろう。そういう意味では、原監督の育成方針と阿部2軍監督らのファームの指導者にも拍手を送りたい。
3つ目はジャイアンツの“顔”を作ったことだ。
別に顔の定義があるわけではない。
ただ、レギュラーとして活躍し続け、抜きんでた実績を残し誰からも愛される。行きつく所はつまり「紳士」ということになるのかもしれない。
そういう意味では、坂本、菅野、丸に続き、岡本もいい顔になってきた。
久方ぶりの『4番・サード』だ。
守備も安心して見られるようになってきた。
あと足りないのは、(私のような)格好良さかもしれない。(笑)
そして最後はファンとともに次の時代を見据えることができたことである。
なぜならジャイアンツは、永遠にファンのための、ファンの共有物でなくてはならないからだ。
ところが今シーズン、原監督はその土台をしっかりと築いてくれた。
この度の連覇で、私は確信した。
まずは5連覇、そして見据える先は10連覇でいこう、と。
4つのことが全て実践されたことで、ジャイアンツの伝統は確固たるものになるだろう。原監督、よくやってくれた」と球団を通じてコメントしています。
リーグ連覇の軌跡
セ・リーグで2年連続38回目の優勝を果たした巨人は今シーズン、首位の座を明け渡しのは7月12日の1度だけ。
新型コロナウイルスの影響で開幕がおよそ3か月遅れ、試合日程が立て込むなど例年と大きく異なるペナントレースとなる中、残る5チームを投打に圧倒して頂点に立ちました。
巨人では6月初旬にキャプテンの坂本勇人選手とキャッチャーの大城卓三選手の主力2人が新型コロナウイルスに感染していたことがわかり離脱しました。
それでも2人は6月19日からのシーズンには間に合い、チームは阪神との伝統の一戦で開幕3連戦を迎えました。
開幕戦はエース・菅野智之投手が7回2失点で勝利に導くと残る2試合は11点、7点と打線がつながって3年ぶりの開幕3連勝。
そして10試合を7勝2敗1引き分けと開幕ダッシュにつなげました。
菅野投手はその後も野球人生初というフォーム改造で球速がアップした効果もあって6月7月、8月と2回続けての月間MVP。
開幕投手から13連勝してプロ野球記録も更新しました。
その菅野投手とともに先発ローテーションを担ったのが2年目の20歳、戸郷翔征投手でした。
戸郷投手は150キロ前後の速球を軸にここまで8勝をマーク。
けが人などが出て苦しい台所事情を救いました。
またリリーフ陣では5年目の中川※コウ太投手とデラロサ投手が安定したピッチングを続けたほか、今シーズンからサイドスローに変えた大江竜聖投手と楽天からシーズン途中に交換トレードで加入した高梨雄平投手の2人の左ピッチャーが左バッターとの対戦を中心に競った展開で好投を見せました。
チーム防御率は3.39でリーグトップです。
一方の打線は序盤、坂本選手と丸佳浩選手の調子が上向かない中、24歳の岡本和真選手がホームランと打点を量産し、今もタイトル争いを続けるなど若き4番としての成長を示しました。
脇を固める選手では昨シーズン43試合の出場にとどまった38歳の中島宏之選手が規定打席には達していないものの2割台後半の打率をマークし、勝負強いバッティングも光りました。
さらに楽天時代の5年間で106本のホームランを打ったウィーラー選手は期待どおりにふた桁ホームランを打ち、内外野を守る起用さと明るいキャラクターでチームに欠かせない存在となりました。
原辰徳監督は若い選手にも積極的にチャンスを与え、それを生かしたのがドラフト1位の入団ながらけがで力を発揮できなかった吉川尚輝選手と育成出身で7月下旬にプロ初出場を果たした松原聖弥選手です。
同期入団で4年目の2人は終盤、1番と2番に定着し、中軸につなげる役割を果たしました。
9月には今シーズン最長の9連勝など月間19勝をマークして72試合目で優勝へのマジックナンバー「38」を点灯させました。
10月は投打がかみ合わず5連敗を喫するなど月間負け越しとなりましたが、2位・阪神に8.5ゲームの差をつけて111試合目で優勝を決めました。
※コウは白に告。
原監督 インタビュー
自身、9回目となるリーグ優勝を決めた巨人の原辰徳監督はグラウンド上でのインタビューで「長く苦しいペナントレースでいつもぎりぎりの僅差の勝負だった。きょうは引き分けで優勝を決めたが、ことしのペナントレースを象徴するようなゲームだったと思う」と優勝までの道のりを振り返りました。
また新型コロナウイルスの影響を受けた異例のシーズンとなったことを踏まえ、「ジャイアンツの選手はもちろん、12球団の選手、関係者がこういう状況の中でコンディションをしっかり作りチーム愛をもちながら戦ってきた。ここまで戦ってきた選手は誇りある人たちだと改めて敬意を表する。6月19日に開幕することができてから選手たち、コーチ、スタッフ、もうちょっというならば私もよく頑張った。野球界は非常に苦しいスタートを切ったが、観客が応援に来られる状況になり、どんどん増えていくと思う。世の中も明るくいい方向にいっていると思う。野球界、われわれが中心に前に突き進みたい」と述べました。
最後に日本シリーズへ向けて「選手にはむちを入れながら頑張らせてきた。後半に来て少し疲れも出てきて5連敗したが、きょうの優勝で疲れも半減し、英気を養って、きたる日本シリーズにおいて正々堂々と戦い、日本一になることを祈願したい」と意気込んでいました。