A.ことしに
入ってから
円相場はドル
に対して20%
ぐらい円安になっていて、
かなり急激な
円安だ。
これの直接的な説明は日米の金利差の拡大ということで、日本ではまだ物価上昇率が低いということと、景気が完全には戻っていないということで、日銀が金融緩和を継続していて金利が一定で変わっていない。
それに対してアメリカは物価上昇率が8%を超えていて、これは大変だということで、インフレを抑えるために中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会が金利を上げてきた。
そこで金利差がどんどん開いていって、この金利差にひかれて日本から資本が動いている、ドルを買って円を売って円安が起きているということがいちばん重要なポイントだと思う。
Q.日本で「安くなった」のがじわじわ進んできたのはなぜ?
A.
円相場は
かなり長い間、110
円から120
円の
間に
収まっていた
時期が
ある。
ただ、
その間も
日本はデフレで
物価が
全然上がらない、むしろ
下がっている
状況で、
アメリカは
常に2%
ぐらいで
インフレが
継続していたと。
物価上昇率の格差によって日本が「安く」なっていくということが起きていた。日本に住んでいたらほとんど実感しないわけですね。
しかし、アメリカと日本の同じ物の物価を比べると日本がどんどん「安くなっていた」ということがかなり長い期間続いた。長期的には物価上昇率の格差が、ボディブローのように効いたということ。
Q.日本の物価上昇率が低かった理由は?
A.1つは
景気がよくなかった
時期が
長く
続いた。
それによって
所得が
増えない、
消費意欲が
出ないということで、
企業が
価格を
上げることができないという
状況が
かなり長く
続いた。
むしろ値下げ競争も起きてコストを削って値段を下げて顧客を獲得しようとする企業や業種がかなり多くあった。
もう1つは、デフレの期間があまりにも長く続いたために価格は上がらないものだと思い込んでしまった消費者がどんどん増えてきて、少しでも値上げすることに対して拒否反応を示すようになっていって、ますます企業は価格を上げられないという状況が発生した。
今はいろんなコストが上がりすぎて一斉に値上げするような新しい局面に入っていると思う。
Q.「安い」国から抜け出すにはどんなことが必要?
A.
アメリカの
場合は
物価が
上がるけれども
賃金も
上がるということが
長く
続いてきた。
物価上昇率も
長期的に
見ると2%の
目標を
達成してきた。
一方、賃金も、交渉する時に物価が2%上がっているんだから賃金も最低2%上がらないと暮らしていけませんよねということで、2%プラスマイナスで賃金が決まっていた。
日本の場合は人手不足であっても、物価上昇率がゼロであれば賃金の上昇率もゼロでいいではないかというような形で、労働者側もあまり文句を言わず賃金が上がらない状況が長く続いてきた。
それを打破するために企業が賃金を上げてもよしとする、つまり労働生産性が上がるということが重要だ。
Q.円安に歯止めをかけるためには、日本はどんな対応が必要?
A.
やはり日本の
経済が
強く
成長して
労働生産性も
上がって
賃金も
上がって、それによって
購買意欲が
出て
需要が
強いことによる
物価上昇が
起きるということが、
日本が「
安い」、
あるいは円が
安いということの
歯止めに
なると
思う。
労働生産性と賃金を上げることがいちばん重要だと思う。年功序列で上がっていく賃金も改めていくことが必要だ。
Q.円安の今後の見通しは?
A.
円安はどこかで
反転する。
アメリカの
金利上昇は
どこかで
頭打ちに
なるので、アメリカの
物価上昇率にこれ
以上のサプライズがなければ
日米の
金利差による
円安の
進行はこれ
以上は
続かず、どこかで
頭打ちになることが
見えてきたのではないかと
思う。
急激な変化は悪影響があるのでチェックする必要があり、政府・日銀の市場介入は急激な変化を抑えるという意味では成功だったと思う。
ただ、目先の金利差とかいうことではなくて体力そのものを上げていかないと「安い日本」は変わらない。
【デイビッド・ワインスタイン所長 一問一答】
続いて、
主催した
コロンビア大学ビジネススクール
日本経済経営研究所デイビッド・ワインスタイン
所長にも
話を
聞きました。
Q.このテーマで講演会を開いた理由は?
A.
なぜ日本が
これほど「
安く」なったという
問題は、
日本人だけでなく
多くの
アメリカ人にとっても
非常に
関心の
ある問題だ。
ここ数か月、
私たちは
急激なドル
高と
円安を
目の当たりにしてきた。
私たちはグローバルな経済の中で生活し多くの人々が日本から物を買っていて、その物がより安くなるのを見ているので、外国為替市場がなぜこうした動きをしているのかへのアメリカ人の関心は高い。
Q.円安が進んだ理由をどのように考える?
A.2つの
大きな要因が
あると
思う。
1つは日本の生産性だ。日本の生産性は長いあいだほかの国々ほどの速度では上昇していない。これは長期的な要因だと思う。
もう1つの重要な要因はロシアによるウクライナへの軍事侵攻で、これによって原油価格が急激に上昇し世界がより不安定になったことだ。結果として多くの資金が安全な国としてアメリカに流れ込んだ。
また、日本は輸入する原油や化石燃料に依存していてその価格が上がったことが円安の要因となった。
Q.円安の今後の見通しは?
A.
外国為替市場で
何が
起きるかを
予測するのは、
常に難しいことだと
思う。さらに
円安になる
要因や
逆に
円高の
方向に
進む要因については
話すことが
できる。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の状況が悪化したり、日本がアジアの安全保障上の課題に直面したり、原油価格が上昇したりすれば、さらなる円安につながる可能性がある。
日本の政策も重要な要因だ。日本が輸入する化石燃料への依存を減らすことができたり、生産性を向上させることができたりすれば、円相場の値上がりにつながる可能性がある。
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