江戸に海丸という海産物問屋があり、そこにお梅どんという十八になる女中がいた。お梅どんはたいそうな働きもので気だても良かったが、決して器量よしというわけでなかった。
ある夏の暑い日、お梅どんが店先で水を播いていると、一人の乞食がやって来て、水を一杯くれと言う。しかし女将さんが出てきて、とっとと帰れと言って追い返してしまう。心の優しいお梅どんは乞食を可哀相に思い、女将に内緒で水と握り飯を分けてやると、乞食はお礼といって汚い手ぬぐいを差し出す。
お梅はその夜、夢の中で観音様に顔をなでられる夢をみるが、井戸に顔を映すと、やはり以前のままだった。悲しくなった青梅は明け方まで泣きとおした。朝になり、若い衆がいつものようにお梅の顔をからかった。お梅は涙があふれ、顔を洗って、乞食に貰った手ぬぐいで顔を拭いた。
するとお梅の顔が大和絵に出てくるような美人に変わっていた。
そこに女将さんがやって来てことの顛末を聞くと、さっそく自分も美しくなろうと江戸の乞食を集めて、酒や食事を振る舞い、乞食の使った手ぬぐいを集めた。女将の顔はどの手ぬぐいを使っても変わらなかったが、最後に残った手ぬぐいで顔を拭くと、馬の顔になってしまった。