1995年3月20日にオウム真理教が起こした地下鉄サリン事件では、都内を走る3つの路線に猛毒のサリンがまかれ、14人が死亡し、およそ6300人が被害に遭いました。
事件から30年になるのを前に、NHKは去年12月、被害者の支援団体のNPO法人「リカバリー・サポート・センター」を通じて事件の被害者にアンケート調査を行い、133人から回答を得ました。
このうち、「事件が風化していると感じることがあるか」と尋ねたのに対し、「ある」と回答した人は87.2%に上りました。
また、「体に生じる症状がサリンの後遺症かわからず悩んでいることはあるか」と尋ねたところ、半数を超える54.9%が「ある」と回答したほか、「後遺症のケアについて、今後も必要だと感じるものはあるか」と尋ねたところ、82.7%が「ある」と答えました。
「若い人々はサリン事件を知らない人が多いと感じる」とコメントを寄せる人もいて、未曽有の化学テロの教訓を若い世代にいかに伝えていくかが課題となっています。
【詳しく】アンケートの結果
アンケート結果の詳細です。
▽「地下鉄サリン事件の被害について悩みを相談できる人がいるか」を尋ねたところ、「いる」と回答した人は50.4%、「いない」と回答した人は45.9%と、ほぼ同じ割合になりました。
▽「事件や後遺症の影響であきらめた・できなかったことはあるか」を尋ねたところ、41.4%が「ある」と回答しました。
「ある」と答えた人にその詳細を複数回答で聞いたところ、「仕事」が最も多く、47.3%、電車に乗る「交通手段」が25.5%、「趣味」が21.8%、「結婚・子育て」が18.2%となりました。
▽「体に感じる症状がサリンの後遺症なのかわからず悩んでいることはあるか」という質問に対して、「ある」と回答した人は54.9%でした。
具体的な症状について記述してもらうと、「視力の低下」や「目の疲れ」といった目に関するもののほか、「疲れやすい」や「手足のしびれ」といった体に現れるもの、それに「化学物質過敏症」といった症状を上げる人もいました。
一方で、「体の不調が年齢的なものなのかわからない」といった記述もあり、30年という年月がたち、サリンの後遺症と加齢による症状と区別が難しくなっていることも伺えます。
▽「後遺症のケアについて、今後も必要だと感じるものはあるか」について尋ねたところ、「ある」と回答した人は82.7%に上りました。
その詳細について複数回答で尋ねたところ、「国や自治体の支援・調査」が64.5%と最も多く、公的な支援を求める声が多く見られました。
次いで「相談できる団体の存在」が59.1%、「医療体制の充実」が46.4%となり、今後も後遺症へのケアを必要としていることがわかりました。
最後に、「事件から30年がたつが、事件が風化していると感じることがあるか」を尋ねたところ、「ある」と答えた人は87.2%を占めました。
「若い人々はサリン事件を知らない人が多いと感じている」などというコメントも寄せられました。