ウクライナ危機ききで、アメリカ政府せいふは、ヨーロッパ諸国しょこくなどとともにロシアに強力きょうりょくな経済けいざい制裁せいさいを科かし、ウクライナに多額たがくの軍事ぐんじ支援しえんをすることに力ちからを注そそいできました。

このことによって、中国ちゅうごくが軍事ぐんじ力りょくを背景はいけいに影響えいきょう力りょくを増ますインド太平洋たいへいよう地域ちいきへのアメリカの関与かんよが後回あとまわしになったり弱よわまったりするのではないかという懸念けねんが関係かんけい国こくの間まに生しょうじていることが背景はいけいにあります。

そのためにバイデン大統領だいとうりょうは今回こんかい、日本にっぽんと韓国かんこくという、信頼しんらいを置おく東アジアひがしあじあの同盟どうめい国こくに足あしを運はこび、強固きょうこな同盟どうめい関係かんけいや、地域ちいきの安全あんぜん保障ほしょうへの一貫いっかんした関与かんよをアピールしたい考かんがえです。

ブッシュ大統領だいとうりょうの前まえのクリントン大統領だいとうりょうは、1998年ねんに中国ちゅうごくに9日間にちかん滞在たいざいしたのにもかかわらず、日本にっぽんには立ち寄たちよらず、「ジャパン・パッシング（Passing）」とやゆされたことすらありました。

それと比くらべると、時代じだいは大おおきく変かわりました。その理由りゆうをひも解とくには、次つぎの米べい中ちゅう関係かんけいの年表ねんぴょうを見みれば一目瞭然いちもくりょうぜんです。

ところが習近平ちから指導しどう部ぶの発足ほっそくと相あい前後ぜんごして、中国ちゅうごくは軍事ぐんじ拡張かくちょうと言論げんろん統制とうせいを一段いちだんと強つよめます。アメリカは中国ちゅうごくが戦後せんごの国際こくさい秩序ちつじょに挑戦ちょうせんしていると受け止うけとめるようになりました。

トランプ前ぜん政権せいけんは当初とうしょは中国ちゅうごくに融和ゆうわ的てきな姿勢しせいもとりましたが、途中とちゅうから対たい中ちゅう強硬きょうこう姿勢しせいを一気いっきに強つよめました。

バイデン政権せいけんはそれを踏襲とうしゅう。中国ちゅうごくを「最大さいだいの競合きょうごう国こく」と位置いちづけ、米べい中ちゅうが対抗たいこうし合あう時代じだいに突入とつにゅう。「新しん冷戦れいせん」とも呼よばれるようになりました。

アメリカ国内こくないの中国ちゅうごくに対にたいする世論せろんも悪化あっかしていて、バイデン大統領だいとうりょうとしてはいま、中国ちゅうごくに足あしを運はこべば、支持しじを失うしないかねない状況じょうきょうなのです。

それとともに、バイデン大統領だいとうりょうは、アメリカの「核かくの傘かさ」を含ふくむ「拡大かくだい抑止よくし」が、強固きょうこで十分じゅうぶんであることを再さい確認かくにんする方針ほうしんです。

インドは武器ぶきの購入こうにゅうなどを通をつうじて歴史れきし的てきにロシアとの関係かんけいが強つよく、ウクライナ危機ききを受うけて、クアッドの枠組わくぐみでロシアへの圧力あつりょく強化きょうかを打ち出うちだそうとすると、インドは賛同さんどうしづらいという事情じじょうがあります。

このため、クアッド首脳しゅのう会合かいごうでは、中国ちゅうごくを念頭ねんとうに、コロナや気候きこう変動へんどう対策たいさく、宇宙うちゅう協力きょうりょくなど4か国かこくが一致いっちして取り組とりくみやすい分野ぶんやで、関係かんけいをさらに深ふかめることで、中国ちゅうごくへの圧力あつりょくを強つよめたい考かんがえです。

バイデン大統領だいとうりょうの日本にっぽん訪問ほうもんの、隠かくれたもう一ひとつのねらいは、そのIPEF＝インド太平洋たいへいよう経済けいざい枠組わくぐみの東京とうきょうでの発表はっぴょうです。

IPEFは「アイペフ」と読よみます。

Indo-Pacific Economic Frameworkの頭文字かしらもじをとった新あらたな経済けいざい連携れんけいで、トランプ前ぜん政権せいけん時じにアメリカが離脱りだつしたTPP＝環太平洋かんたいへいようパートナーシップ協定きょうていに代かわる枠組わくぐみとして、バイデン政権せいけんが提唱ていしょうしました。

サプライチェーン＝供給きょうきゅう網もうの構築こうちくや国境こっきょうを越こえたデータ管理かんりなどで中国ちゅうごくに対抗たいこうしていくのがねらいです。

ところがアメリカが参加さんかを期待きたいするASEAN＝東南アジアとうなんあじあ諸国しょこく連合れんごうの国々くにぐにの反応はんのうがいまひとつです。

ASEAN諸国しょこくのなかには、アメリカの「本気ほんき度ど」に対にたいする懐疑かいぎ的てきな見方みかたや、経済けいざい的てき結び付むすびつきの強つよい中国ちゅうごくとの関係かんけい悪化あっかを懸念けねんする声こえが少すくなくないからです。

さらに、関税かんぜいの引き下ひきさげといった目めに見みえるメリットが感かんじられないことへの不満ふまんもあります。

このためバイデン大統領だいとうりょうは今回こんかい、ASEAN諸国しょこくの間まで信頼しんらい度どの高たかい日本にっぽんの後押あとおしを受うける形かたちで、IPEFの立たち上あげに向むけた協議きょうぎの開始かいしを東京とうきょうで発表はっぴょうすることで、スタートダッシュを図はかりたい考かんがえです。

IPEFの具体ぐたい的てきな中身なかみのほか、何なんか国かこくが参加さんかするのかが注目ちゅうもくされています。