その悩みの実情を知ってほしいと、取材に応じてくれたのは、体操の杉原愛子選手(22) です。
「足を180度開く競技の特性もあるのですが、レオタードからナプキンがはみ出していないか気になったりすることもあります。レオタードに漏れていたらどうしようとか、汗の蒸れも不快だし、そういうところを気にしていたら、100%競技に集中できません」 さらに、生理中にコンディションが悪くなったり、不快感が増すと集中力が落ちて、ケガにつながる危険もあるといいます。 (杉原愛子選手) 「生理前や生理中は体調が悪くなることが多いので、そうした時に無理やり練習すると危ないんです。跳馬の練習中に、着地でケガをしそうになったこともありました。集中できないとケガにもつながるし、いい練習もできないと思っています」
PMSは、生理前の3~10日の間に続く精神的、身体的な症状で、イライラや気分の落ち込みのほか、下腹部や乳房の張り・痛みなどが主な症状とされています。 杉原選手は、症状を改善する低用量ピルの服用を試しましたが、体に合わなかったことや、慣れるまで時間がかかり、服用を見合わせました。 (杉原愛子選手) 「2週間に1回くらい生理が来て、貧血になったりしたので、婦人科に通って低用量ピルを試しましたが体がだるくなったり、いい練習ができなかったので、私には合わなかったと思っています」
このうち、最も多かったのは「生理痛がひどい」。 次に「量が多い」が続きました。 また、「生理のときに使っているもの」を複数回答で答えてもらったところ、「ナプキン」が99%と大半で、次に「タンポン」が25%。続く「低用量ピル」は僅か3%にとどまりました。 低用量ピルを使っていない理由を尋ねると、「怖い」「体調に何か影響が出る?」「産婦人科に行くのが面倒」「合わなかった」「対応に数か月かかる」といった回答が並んでいます。
泉谷選手も長年、生理に悩み続けてきたアスリートの1人でした。
「走って飛んで投げてという競技の特性上、どうしてもナプキンがずれてしまう。また、メインの練習や走り込みのセットの間は、なかなかお手洗いに行けず、気持ち悪いなと思いながらプレーをしなくてはいけないことにストレスを感じていました」 そこで、自身の経験やアスリートの声をもとに開発に携わったのが、アスリート用の「吸水ショーツ」です。
ショーツは、医療用の超吸水性繊維を使用し、ナプキン4枚分に相当する最大20ミリリットルの水分を吸収。漏れを防ぎにくくしたほか、抗菌性の高い布地を使うことで、一日中はいてもにおいが気になりにくいといいます。 また、ユニフォームにラインが響かないよう工夫しました。
この日、大学のハンドボール部とバレーボール部を訪れ、最初にショーツの吸水実験を行いました。
こうした場が自然と生理について話す機会となり、中には、初めて症状があることに気付いた女性アスリートが、医療機関に足を運んだケースもあったということです。 (バレーボール部 女性コーチ) 「個人差があるし、デリケートな問題なので、女性どうしでもなかなか触れにくいのですが、自分に合うものを選べる選択肢が増えたとことは非常にいいことだと思います」
吸水ショーツをきっかけに、男性指導者にも生理の悩みを話しやすい環境を作ろうという狙いです。
「女性の体のことというのは男性コーチも一緒になって悩むというか考える必要があるんじゃないかな。問題提起としてすごく重要なことだという印象です」 (泉谷莉子選手) 「生理の話ってきっと女性選手、私もそうでしたけど言いたいけどなんのきっかけもないから言えないみたいな。コミュニケーションのツールとして架け橋ではないですけどそういうものがまさに吸水ショーツだと思っているのでそういう活動をどんどんしていきたいなと思います」
#BeyondGender
半数以上が「困っている」
第3の選択肢 吸水ショーツ
自分の生理を知って
男性指導者にも 話しやすい環境を
みんなでプラス
2大会連続でオリンピックに出場した、体操の杉原愛子選手が取材で打ち明けたのは、生理の悩み。
これまであまり語られることが少なかった、女性アスリートのリアルな悩みの実情は?
(スポーツニュース部 記者 沼田悠里)
100%競技に集中できない ケガの危険も