ベンチャー開発かいはつロケット カイロス2号機ごうき きょう打ち上うちあげ 和歌山わかやま

和歌山わかやま県けん串本くしもと町まちの発射はっしゃ場じょうから14日にち打ち上うちあげられるのは、東京とうきょうのベンチャー企業きぎょう「スペースワン」が開発かいはつした固体こたい燃料ねんりょう式しきの小型こがたロケット「カイロス2号機ごうき」です。

ロケットには台湾たいわんの宇宙うちゅう機関きかんや京都きょうとのベンチャー企業きぎょうなどの5つの小型こがた衛星えいせいが搭載とうさいされていて、打ち上うちあげから50分ふん余あまりあとに高度こうど500キロ付近ふきんで衛星えいせいを切り離きりはなし、予定よていの軌道きどうに投入とうにゅうする計画けいかくです。

初号しょごう機きはことし3月つき、打ち上うちあげの直後ちょくごに爆発ばくはつし、失敗しっぱいしていて、開発かいはつした企業きぎょうは対策たいさくを講こうじたうえで2号機ごうきの打ち上うちあげに臨のぞんでいます。

衛星えいせいの軌道きどうへの投入とうにゅうが成功せいこうすれば、民間みんかん企業きぎょう単独たんどくの打ち上うちあげとしては国内こくないで初はじめてとなります。

世界せかい的てきに人工じんこう衛星えいせいの打ち上うちあげの需要じゅようが高たかまる中なか、企業きぎょうは低ひくいコストで衛星えいせいを宇宙うちゅうに届とどける「宇宙うちゅう宅配たくはい便びん」を目指めざし、2030年代ねんだいには年間ねんかん30回かい、ロケットを打ち上うちあげたいとしています。

天候てんこうなどに問題もんだいがなければ、「カイロス2号機ごうき」は14日にち午前ごぜん11時じに打ち上うちあげられる予定よていです。

特徴とくちょうは「自律じりつ飛行ひこう安全あんぜん」 日本にっぽんのロケットで初はじめて導入どうにゅう

「カイロス」は全長ぜんちょうおよそ18メートルの固体こたい燃料ねんりょう式しきの小型こがたロケットです。

同おなじ固体こたい燃料ねんりょう式しきで、JAXA＝宇宙うちゅう航空こうくう研究けんきゅう開発かいはつ機構きこうが開発かいはつを進すすめている日本にっぽんの新あらたな主力しゅりょくロケット「イプシロンS」より一いち回まわり小ちいさく、運はこべる荷物にもつの重おもさも4分ぶんの1程度ていどですが、その分ぶん、コストを下さげられ、短期間たんきかんで打ち上うちあげることができるということです。

カイロスの特徴とくちょうは「自律じりつ飛行ひこう安全あんぜん」と呼よばれる機能きのうを日本にっぽんのロケットで初はじめて導入どうにゅうしたことです。

従来じゅうらいのロケットでは、異常いじょうが起おきた際さい、飛行ひこうを中断ちゅうだんさせるために地上ちじょうから信号しんごうを送おくってロケットを破壊はかいする「指令しれい破壊はかい」を行おこないますが、カイロスの場合ばあい、搭載とうさいされたコンピューターが飛行ひこうの経路けいろや内部ないぶの機器ききなどの異常いじょうを検知けんちし、みずから機体きたいを破壊はかいします。

この自律じりつ飛行ひこう安全あんぜんの導入どうにゅうによって、管制かんせい室しつで作業さぎょうにあたる人数にんずうを十じゅう数すう人にんまで減へらすことができ、より効率こうりつ的てきな打ち上うちあげが可能かのうになるということです。

一方いっぽうで、ことし3月つきに打ち上うちあげられたカイロスの初号しょごう機きでは、ロケットが発射はっしゃ台だいを離はなれた直後ちょくごに飛行ひこう範囲はんいを外はずれたと判断はんだんし、みずから機体きたいを破壊はかいする措置そちをとったために爆発ばくはつして、打ち上うちあげは失敗しっぱいしました。

企業きぎょうは飛行ひこうデータを分析ぶんせきするなど原因げんいん究明きゅうめいを行おこなった結果けっか、ロケットの1段だん目めの推進すいしん力りょくを実際じっさいより高たかく予測よそくしていたことが原因げんいんだったとして、予測よそくを修正しゅうせいした上うえで正常せいじょうな飛行ひこう範囲はんいの設定せっていの見直みなおしなどを行おこない、今回こんかいの2号機ごうきの打ち上うちあげを迎むかえました。

5つの小型こがた衛星えいせいを搭載とうさい

今回こんかいの「カイロス2号機ごうき」には、5つの小型こがた衛星えいせいが搭載とうさいされています。

このうち公表こうひょうされているのは4つの衛星えいせいで

▼台湾たいわんの宇宙うちゅう機関きかんが開発かいはつした教育きょういく用よう衛星えいせい

▼京都きょうとのベンチャー企業きぎょう「テラスペース」が開発かいはつした技術ぎじゅつ実証じっしょう衛星えいせい

▼東京とうきょうの広尾ひろお学園がくえんの生徒せいとが人材じんざい育成いくせいの一環いっかんで開発かいはつした光通信ひかりつうしん衛星えいせい

▼JAXA発はつベンチャー企業きぎょう「Space Cubics」が開発かいはつした技術ぎじゅつ実証じっしょう衛星えいせいが

搭載とうさいされています。

飛行ひこう計画けいかくは

「カイロス2号機ごうき」の機体きたいは、1段だん目めから3段だん目めまでを組み立くみたてて作つくられ、先端せんたんに人工じんこう衛星えいせいが搭載とうさいされています。

和歌山わかやま県けん串本くしもと町まちの発射はっしゃ場じょうから打ち上うちあげられ

▼およそ2分ふん28秒びょう後ごに、燃焼ねんしょうを終おえたロケットの1段だん目めを切り離きりはなします。

▼およそ2分ふん55秒びょう後ごには、「フェアリング」と呼よばれる人工じんこう衛星えいせいを覆おおうカバーを切り離きりはなします。

▼およそ4分ふん40秒びょう後ごには、燃焼ねんしょうを終おえたロケットの2段だん目めを切り離きりはなし

▼およそ7分ふん50秒びょう後ごには、3段だん目めも切り離きりはなします。

さらに、衛星えいせいを搭載とうさいした部分ぶぶんに取り付とりつけられている小型こがたの液体えきたい燃料ねんりょうエンジンを2回かい燃焼ねんしょうさせて目標もくひょうの軌道きどうとの誤差ごさを修正しゅうせいし、

▼打ち上うちあげからおよそ53分ふん35秒びょう後ごに、1つ目めの衛星えいせいを高度こうど500キロ付近ふきんで分離ぶんりします。

その後そのご、順次じゅんじ、そのほかの衛星えいせいを切り離きりはなし、

▼およそ54分ふん1秒びょう後ごに、京都きょうとのベンチャー企業きぎょうが開発かいはつした人工じんこう衛星えいせいを最後さいごに分離ぶんりする計画けいかくです。

専門せんもん家か「日本にっぽんとして幅広はばひろい打ち上うちあげ手段しゅだんを世界せかい市場しじょうに提供ていきょう」

日本にっぽんの宇宙うちゅう開発かいはつをめぐっては、先月せんげつ「カイロス」と同おなじ固体こたい燃料ねんりょう式しきの国くにの次期じき主力しゅりょくロケット「イプシロンS」が燃焼ねんしょう試験しけん中ちゅうに爆発ばくはつし、計画けいかくしていた今年度こんねんど中ちゅうの打ち上うちあげが不可能ふかのうになったという見通みとおしが示しめされています。

こうした中なか、「カイロス2号機ごうき」の打ち上うちあげの意義いぎについて、宇宙うちゅう工学こうがくが専門せんもんで東京とうきょう理科りか大学だいがくの小笠原おがさわら宏ひろし教授きょうじゅは「カイロスがイプシロンの代かわりになるかというと、打ち上うちあげ能力のうりょくが一致いっちしないため、直接ちょくせつ的てきにバックアップすることはないと思おもう。ただし、国くに全体ぜんたいの宇宙うちゅう活動かつどうとして衛星えいせいの打ち上うちあげの数かずを稼かせぐという意味いみでは、カイロスがサポートすることで世界せかい的てきなプレゼンスが向上こうじょうすることになり、日本にっぽんの宇宙うちゅう産業さんぎょうとしてはありがたい存在そんざいになることが期待きたいされる」と話はなしています。

その上うえで「世界せかいでは宇宙うちゅう開発かいはつの商業しょうぎょう化かが進すすんでいて、カイロスが打ち上うちあげビジネスに参入さんにゅうできれば、日本にっぽんとして幅広はばひろい打ち上うちあげ手段しゅだんを世界せかい市場しじょうに提供ていきょうできるようになる」と指摘してきしています。