カメムシことしも大量たいりょう発生はっせい?26都府県とふけんで「注意報ちゅういほう」どの県けんで多おおい?

どこからともなく飛とんできて、触さわってしまうと強烈きょうれつなにおいを出だす、あのミドリのムシ、「カメムシ」です。いま、各地かくちで発生はっせいし、全国ぜんこく26の都府県とふけんで「カメムシ注意ちゅうい報ほう」も出でています。

なぜ発生はっせい？いつまで続つづく？

（※本ほん文中ぶんちゅうに、注意報ちゅういほう発表はっぴょう中ちゅうの地域ちいきを地図ちずでまとめています）

ある日ひ、テニスコートで

今月こんげつ15日にちの夜よる。

宮崎みやざき市内しないのテニスコートで撮影さつえいされた映像えいぞうです。

照明しょうめいの周囲しゅういを飛び回とびまわっているのは、大量たいりょうの「カメムシ」。

撮影さつえいした宮崎みやざき県けんにある大学だいがく職員しょくいんの男性だんせいによると、去年きょねんの秋あきごろにも大量たいりょうのカメムシが飛とんでいて、一いち時期じきは見みかけなくなったということですが、ことしに入はいって5月つき上旬じょうじゅんから再ふたたび姿すがたを見みせるようになったそうです。

大学だいがく職員しょくいんの男性だんせい

「これだけの量りょうのカメムシを見みるのは初はじめてで、動画どうがを撮影さつえいしました。コートの周辺しゅうへんには匂においも漂ただよっていて、テニスボールにくっついたりもしています。『ことしは多おおいね』とみんなで言いっています」

ベランダにも、洗濯せんたく物ぶつの上うえにも…

各地かくちで「カメムシ」が発生はっせいしているという声こえは、SNS上じょうでも相次あいついでいます。

「ベランダに20～30匹ひきくらいカメムシがいて悲鳴ひめいあげそうになった」

家いえの中なかや職場しょくばに入り込はいりこんできて困こまっているという投稿とうこうも。

「カメムシが大量たいりょう発生はっせい 洗濯せんたく物ぶつについてくるしきのうはお風呂ふろ場じょうにも10匹ひきくらいいた」

「職場しょくばにカメムシが大量たいりょう発生はっせいしてすごいくさい」

カメムシってどんな虫むし？

専門せんもん家かによりますと、いわゆる「カメムシ」はカメムシ目めに属ぞくし、タガメやアメンボなどもその仲間なかまで、多おおくの種類しゅるいがあります。

このうちいま大量たいりょう発生はっせいしているのは、▽チャバネアオカメムシ、▽ツヤアオカメムシといった「果樹かじゅカメムシ類るい」です。

大おおきさは1センチ程度ていど、主おもに春はるから秋あきにかけて活動かつどうするということです。

ふだんは山林さんりんに生息せいそくし、スギやヒノキなどを餌えさにして繁殖はんしょくしていますが、山林さんりんでの餌えさが不足ふそくすると果樹かじゅ園えんに飛来ひらいし、桃ももや梨なし、びわなど果物くだものを吸すって被害ひがいをもたらすため、「病害虫びょうがいちゅう」とされています。

外敵がいてきから身みを守まもるため、刺激しげきを与あたえると悪臭あくしゅうを放はなつ性質せいしつがありつまんだり、つぶしたりすると体からだから液体えきたい状じょうのものを出だし、においが出でるということです。

寿命じゅみょうは長ながくて1年ねんですが、秋あきに大量たいりょうに発生はっせいすると多おおくが越冬えっとうし、次つぎの春はるに発生はっせいする傾向けいこうがあるということです。

桃ももは販売はんばいできない状態じょうたいに…

深刻しんこくなのは、果物くだものなど農作物のうさくもつへの被害ひがいです。

千葉ちば県けん柏かしわ市しにある農園のうえんでは今月こんげつ、栽培さいばいしている桃ももでカメムシの被害ひがいを受うけました。農園のうえんを運営うんえいする男性だんせいによりますと、例年れいねん、桃ももの実じつに網あみをかけてカメムシの被害ひがいを受うけないよう対策たいさくをしているということです。

しかしことしはカメムシの数かずが多おおく、栽培さいばいしている桃もものうちおよそ半分はんぶんが販売はんばいできない状態じょうたいになってしまったということです。

男性だんせいが今月こんげつ11日にちに撮影さつえいした写真しゃしんでは、まだ青あおい実じつに複数ふくすうのくぼみができている様子ようすが確認かくにんできます。

男性だんせい

「ことしは例年れいねんより早はやい4月つき下旬げじゅんごろからカメムシが出でてきました。傷いたんだ桃ももは木きから落おとすしかなく、販売はんばいできずに残念ざんねんです」

ことしの発生はっせい状況じょうきょうは？

広島ひろしま県けんにある県けん西部せいぶ農業のうぎょう技術ぎじゅつ指導しどう所しょでは、各地かくちの農園のうえんなど県内けんない7か所かしょの地点ちてんでカメムシの定点ていてん調査ちょうさを行おこなっています。

調査ちょうさでは、カメムシをおびきよせるにおいをつけた専用せんようの器具きぐを使つかってカメムシを捕獲ほかくします。

おびきよせられたカメムシが飛とんでくると、容器ようき中央ちゅうおうに立たてた壁かべに当にあたって下したに落おちる仕組しくみです。

捕獲ほかくしたカメムシの数かずは、増ふえているのか。

尾道おのみち市し瀬戸田せとだ町まちで5月つきの2週間しゅうかん分ぶんの調査ちょうさ結果けっかを集計しゅうけいしたグラフです。

平年へいねんと比較ひかくすると、1週しゅう目めはおよそ3倍ばい、2週しゅう目めではおよそ5倍ばいと、増ふえているのが分わかります。

広島ひろしま県内けんないでは平年へいねんより少すくない地域ちいきもある一方いっぽう、呉くれ市し蒲刈かまがり町まちでは例年れいねんの10倍ばい以上いじょうにのぼるなど、地域ちいき差さもみられるということです。

調査ちょうさにあたった担当たんとう者しゃは、こう話はなしています。

広島ひろしま県けん西部せいぶ農業のうぎょう技術ぎじゅつ指導しどう所しょ 川辺かわべ翔しょう瑚 技師ぎし

「一番いちばん大おおきな理由りゆうとしては、春先はるさきの気温きおんが高たかかったこと、カメムシの活動かつどうの動うごき出だしが早はやかったのではないかと見みています。農家のうかさんに対にたいしては園地えんちの見回みまわりを行おこなっていただいて、増加ぞうかが確認かくにんされれば、早はやめの薬剤やくざい防除ぼうじょを行おこなうことが有効ゆうこうです」

あなたの地域ちいきの発生はっせい状況じょうきょうは?「注意ちゅうい報ほうマップ」

あなたが暮くらす地域ちいきの発生はっせい状況じょうきょうはどうなっているのでしょうか。

果実かじつに被害ひがいをもたらす「カメムシ」が多おおく発生はっせいするおそれがあるとして、関東かんとうから九州きゅうしゅうにかけての全国ぜんこく26の都府県とふけんでは「注意報ちゅういほう」を発表はっぴょうし、農家のうかに対策たいさくの徹底てっていを呼よびかけています。

22日にち時点じてんで注意ちゅうい報ほうが発表はっぴょうされているのは、次つぎの26の都府県とふけんです。

（お住すまいの地域ちいきを探さがす際さい、スマホのかたは指ゆびでピンチアウト（拡大かくだい）してください）

▽愛媛えひめ▽神奈川かながわ▽鳥取とっとり▽山口やまぐち▽和歌山わかやま▽高知こうち▽徳島とくしま▽福岡ふくおか▽香川かがわ▽京都きょうと▽兵庫ひょうご▽熊本くまもと▽長崎ながさき▽大分おおいた▽愛知あいち▽岡山おかやま▽千葉ちば▽茨城いばらき▽埼玉さいたま▽栃木とちぎ▽大阪おおさか▽奈良なら▽石川いしかわ▽滋賀しが▽岐阜ぎふ▽東京とうきょう

農林水産省のうりんすいさんしょうによりますと、5月つき末まつまでの時点じてんで注意ちゅうい報ほうが発表はっぴょうされている都道とどう府県ふけんの数かずとしては、この10年間ねんかんで最もっとも多おおいということです。

また、農林水産省のうりんすいさんしょうは今月こんげつ15日にち、「関東かんとうのほか、東海とうかい、近畿きんき、中国ちゅうごく、四国しこく、九州きゅうしゅうの一部いちぶで果実かじつに被害ひがいをもたらすカメムシの発生はっせいが多おおくなることが予想よそうされる」と発表はっぴょうしています。

農林水産省のうりんすいさんしょうは「カメムシの飛来ひらいの状況じょうきょうは地域ちいきによって異ことなる」としたうえで、被害ひがいを受うけるおそれがある農作物のうさくもつを栽培さいばいしている農家のうかに対にたいしては「都道とどう府県ふけんの発表はっぴょうする情報じょうほうを参考さんこうにしつつ、果樹かじゅ園内えんないの見回みまわりをしっかりと行おこない、飛とんできている場合ばあいには農薬のうやくを使用しようするなど対策たいさくを実施じっししてほしい」と話はなしています。

殺虫さっちゅう剤ざい 売り切うりきれる店みせも

対策たいさくを進すすめようと、殺虫さっちゅう剤ざいを買い求かいもとめる人ひとも増ふえています。

茨城いばらき県けん水戸みと市しのホームセンターでは、カメムシ用ようの殺虫さっちゅう剤ざいが先月せんげつ、売り切うりきれたということです。

カメムシ用ようの殺虫さっちゅう剤ざいの売れ行うれゆきはこのホームセンターの系列けいれつ店てん全体ぜんたいで、去年きょねんの同おなじ時期じきの10倍ばい以上いじょうとなっていて、現在げんざいは在庫ざいこがなく、メーカーからの入荷にゅうかのめどもないということです。

客きゃくからの問い合といあわせに対応たいおうするため、店舗てんぽでは、カメムシにも効果こうかがある別べつの殺虫さっちゅう剤ざいの棚たなに「カメムシにも効きく」というポップを貼はり付つけて、客きゃくに紹介しょうかいすることにしました。

「山やま新しんグランステージ水戸みとホームセンター」菊池きくち大だい貴き副ふく店長てんちょう

「匂においや見た目みための不快ふかい感かんから駆除くじょしたいという問い合といあわせが多おおいです。例年れいねん、カメムシ特設とくせつコーナーを設もうけることはないのですが、今後こんご、設置せっちも検討けんとうしています」

なぜ大量たいりょう発生はっせい？今後こんごどうなる？

こうした中なか、やはり気きになるのは、カメムシの発生はっせい状況じょうきょうと今後こんごの見通みとおしです。

カメムシの生態せいたいにも詳くわしい農のう研けん機構きこう植物しょくぶつ防疫ぼうえき研究けんきゅう部門ぶもん 新井あらい朋とも徳とくグループ長ちょうに話はなしを聞ききました。

Ｑきゅ-．なぜ今いま、大量たいりょう発生はっせい？

Ａえい．ポイントは“スギやヒノキの実み”と“暖冬だんとう”です。去年きょねん秋あきはスギやヒノキが豊作ほうさくで、それを餌えさにするカメムシが大量たいりょう発生はっせいしました。そしてこの冬ふゆの“暖冬だんとう”も影響えいきょうしています。

個体こたいの多おおくが越冬えっとうし、今いまの大量たいりょう発生はっせいにつながったとみています。

越冬えっとう量りょうの調査ちょうさでも、過去かこ１いち０ぜろ年ねんで最もっとも多おおかった地域ちいきも複数ふくすうありました。

Ｑきゅ-．都市とし部ぶでも多おおくの目撃もくげき情報じょうほうなぜ？

Ａえい．越冬えっとうしたカメムシは蓄たくわえた養分ようぶんを使い切つかいきり「空腹くうふく状態じょうたい」になっています。このため餌えさを求もとめてあちこちと飛び回とびまわります。

暗くらくなってから移動いどうする場合ばあいが多おおく、夜よる、明あかりがあるところへ集あつまる傾向けいこうもあることから、結果けっか的てきに都市とし部ぶにも多おおくやってきているとみられます。

Q. 今後こんごは？

Ａえい．正確せいかくに予測よそくすることは難むずかしいですが、カメムシがこれから餌えさとするのが「桜さくら」や「桑くわの実み」です。

ことしは発生はっせいが多おおいので、これらを早はやく食たべ尽つくしてしまった場合ばあい、餌えさを求もとめてあちこち飛び回とびまわり、カメムシを多おおく見みかけることになる可能かのう性せいがあります。

夏なつになれば山やまでスギやヒノキが食たべられるようになるので、それまでの間まに、カメムシが桜さくらや桑くわの実みを食たべ尽つくすかどうか次第しだいと考かんがえています。

Ｑきゅ-. どうすれば？

Ａえい．まず農家のうかについては、発生はっせい源げんをたたくことが難むずかしいため、カメムシ類るいが来きてから、薬剤やくざいで防除ぼうじょすることが基本きほん的てきな対策たいさくとなります。

次つぎに都市とし部ぶで室内しつないに入り込はいりこんできたりした場合ばあいですが、経験けいけん上じょう、つまんだり、つぶしたりすると、高たかい確率かくりつで“におい”を放はなちます。においが気きになる場合ばあいは、つぶしたりせず、直接ちょくせつ、素手すでで触ふれるのを避さけてください。

カメムシが室内しつないにいたら？

カメムシが室内しつないに入はいっていた場合ばあい、どうすればいいのか。

害虫がいちゅうの専門せんもん家かは、素手すででは触さわらずペットボトルなどの道具どうぐを使つかって除去じょきょすることが効果こうか的てきだと指摘してきします。

南みなみ九州きゅうしゅう大学だいがく環境かんきょう園芸えんげい学部がくぶ　新谷しんたに喜き紀きの教授きょうじゅ

「カメムシがにおいを発はっするのは外敵がいてきから襲おそわれた時ときに食たべられないように守まもるためだと考かんがえられる。カメムシは天敵てんてきに襲おそわれたのか、人間にんげんに触さわられたのかを区別くべつせず、物理ぶつり的てきな刺激しげきを受うけるとにおいを出だすことになる」

カメムシは白しろっぽい色いろの壁かべや洗濯せんたく物ぶつの衣類いるいなどに集あつまりやすく、複数ふくすう匹ひきが集あつまるとさらに仲間なかまを呼よぶ習性しゅうせいがあるということです。

また、夜間やかんには蛍光けいこう灯とうの光ひかりがある所ところに飛とんできやすい一方いっぽう、LEDライトの光ひかりのもとにはほとんど集あつまらないので、照明しょうめい器具きぐを取り替とりかえることも効果こうか的てきだと指摘してきしています。

もし室内しつないに入はいってきた場合ばあいには、素手すでで触さわらずに専用せんようの殺虫さっちゅう剤ざいを使つかったり、半分はんぶんに輪切わぎりにしたペットボトルの中なかにそっと追い込おいこんで捕獲ほかくしたりすることを勧すすめています。

新谷しんたに教授きょうじゅ

「手てでつまむと、どうしても刺激しげきを受うけてにおいを発はっしてしまう。手てで直接ちょくせつ触ふれずに刺激しげきを与あたえないようにしながら除去じょきょすることが一番いちばんよいです」